
『億男』(2018)は、本屋大賞第10位入賞作であり、2018年に56万部を突破した同名長編小説の映画化作品。
ヒット小説の映画化ということもあり、引き込まれるストーリー構成であり、役者の演技力も抜群。
そんな『億男』(2018)の感想と考察を評価とネタバレを交えて紹介していきます。
目次
『億男』(2018)の作品情報とキャスト
作品情報
原題:億男
公開年:2018年
製作国:日本
上映時間:116分
ジャンル:ドラマ
監督とキャスト
監督:大友啓史
代表作:『3月のライオン』『るろうに剣心』
原作:川村元気
本作の主演は、『ROOKIES -卒業-』(09)や『るろうに剣心シリーズ』に出演してきた佐藤健。
他にも、高橋一生、沢尻エリカ、北村一輝、藤原竜也、黒木華、池田エライザなど豪華キャストが出演。
キャストが豪華なだけでなく、主題歌をBUMP OF CHICKENが手掛けるなど、話題性に事欠かない作品です!
『億男』(2018)のあらすじ

あきら、百瀬栄一、一男:©︎https://eigaland.com/topics/?p=82414&page=18
借金返済に追われる一男は日中は図書館司書として働きながら、夜勤で睡眠時間を削る生活を送っている。
そんな生活のために妻と娘との時間も過ごせないでいた。
彼の兄が抱えた3000万円の借金の返済に終われる日々に、愛想を尽かした妻と娘に家を出ていかれ、借金も減らない。
不幸続きの一男に宝くじ3億円当選という幸運が舞い込み、人生を取り戻せると確信する一男は、3億円の正しい使い方のアドバイスを貰うために旧友の九十九を訪ねる。
しかし、泥酔した翌日に目が覚めると、九十九は3億円とともに姿を消していた…。
『億男』(2018)から学べる3つのこと

夢実現セミナーを行う千住清人:©︎https://eigaland.com/topics/?p=82414&page=18
正しいお金の使い方を学ぶ
突如3億円が舞い込んだらあなたならどうするでしょうか。
誰もが妄想したことがあるような内容から大金に翻弄される男を描かれることで正しい大金の使い道を学ぶことができます!
お金よりも大切なものを学ぶ
大金を得ることで人生は幸せになるのでしょうか。
本作で提示されているのは、お金と人生における幸せについて。
億万長者の生活から両者について考えていきます。
お金とは何かを考える
お金とはそもそもどのようなものでしょうか。
本作で登場する億万長者は自分なりにお金を解釈しています。
彼らの仮説に共通するものを解明すると、お金とは何かという問いに対する答えが見えてきました!
【ネタバレあり】『億男』(2018)の感想

豪遊する一男と九十九:©︎https://eigaland.com/topics/?p=82414&page=18
『億男』(2018)で提示されるテーマは”お金とはなにか”というストレートなもの。
生活する上で必要不可欠な存在であるお金について徹底して描いた本作は、メッセージが一貫としていて分かり易かったです。
お金に翻弄される大人達について描く本作が、最後まで飽きさせない展開だったことも評価できました。
それでは本作の感想を書いていきます。
億万長者になるということ
『億男』(2018)は、3億円を持ち逃げされるところから展開していくことは、あらすじでも述べた通り。
物語の肝である3億円の喪失を冒頭で描き、それからも中弛みしない物語の展開は、観ている人を飽きさせません。
手に入れたはずの3億円が突然、一男の親友である九十九とともに消えるため、誰もが大金を奪われたと思ったはず。
そして、本作は、大金が消える前まで共に過ごしていた九十九の行方を追っていく物語として終始しています。
初めに大きな問題が提示されることで、先の展開を気になるという心理を巧みに利用していると思いました!
九十九の過去に迫る
九十九の人間関係や過去を紐解き、彼の行方に近づくにつれて”お金とは何か”という疑問の答えにも近づいてきます。
ここで九十九と一男の関係について改めておさらいです。
サークル活動がきっかけに九十九と一男は親友になる・一男と2人でモロッコに旅行する
この旅行が「お金とな何か」を真剣に考える転機となった・大学中退後「バイカム」を起業
事業で大成功を収め、巨万の富を得る
九十九は、「お金とは何か」という答え探しの過程で、ユーザー同士で自由に価格設定し、商品を売買するアプリ「バイカム」を展開します。
ユーザー同士で価格設定というアイデアは、モロッコでの物々交換の体験から着想を得たことが語られていました。
若くして大成功を収め、順風満帆かと思いきや、彼の素性を追っていくとまったく幸せになっていないということが明らかになってきます。
九十九の人生最大の転機
九十九の過去を追っていくことで、行き当たった彼の人生を左右する大きな転機。
それは「バイカム」が企業価値を認められ、200億円で売却可能という好機を得たこと。
今いる会社を失うとしても、200億円が手に入るのなら、乗らない手はないと考える幹部達ですが、この決定に九十九は猛反対します。
それでも幹部であり仲間である人たちを説得することができず、結局は会社を売却。
200億円を数人の幹部で山分けをしたという事実を知った一男は、大金を得た幹部を1人ずつ訪ねていきます。
【ネタバレあり】『億男』(2018)における人生とお金の関係を考察

モロッコ旅行中の九十九と一男:©︎https://eigaland.com/topics/?p=82414&page=18
大金を得た人たちの人生について
競馬にのめり込み、虚勢を張る人。怪しげなセミナーで搾取を続ける人。
金に無頓着な夫と結婚し、専業主婦となる人…。
それぞれの人物の「バイカム」を運営していたときの思い出から現在の生活に共通することは、彼らは皆、大金を得たことで、お金よりも大切なものを失ったということです。
幹部たちの私生活に密着する一男が見た彼らの生活は豪勢なものから質素なものまで様々なものがありました。
大金が手に入るということは不幸ではなく、望む暮らしも手に入っていくはずなのに、どこか生活に満足していないのは何故なのでしょうか。
本作では明示されていませんが、映し出されていた彼らの生活を推察することができました。
大金を得て失ったもの
大金を得た幹部たちが失ってしまったものを以下に書き出してみます。
・会社を大きくして社会に貢献するという夢の為に試行錯誤を重ねる毎日
・忙しくても肩を並べて努力できる仲間
・お金が無く、豊かな生活ができなくても側に居てくれる人
上記のような目に見えない大切なものは幾らお金を払っても手に入れることはできないものではないでしょうか。
もし>幸せを求めるならお金を得ることでは無くて、自分の人生を共に歩む仲間を見つけること。
心から信頼できる人を見つけることが幸せなのだというメッセージを感じました。
だからこそ、九十九が大学時代に一男と共に観光したモロッコの物々交換を中心としたフリーマーケットから「バイカム」を閃いたというエピソードに意味があるのです。
発展途上国は日本より貧しい国が多いですが、社会的な幸福度は高い。
この理由にも通じるメッセージが本作には内包されています。
正しいお金の使い方
お金の持つ魔力を知ることになる一男が、最後まで求め続けるものは家族との関係修復。
一男は行方をくらませた3億円の真相に近づくにつれて、お金に対する考え方を改めていきます。
お金のことばかり考えて、司書として仕事をしながら、夜はアルバイトで毎日寝不足。
妻と娘と同居中も経済的困窮の為に娘のバレエを辞めさせようとしたり、別居後の娘と会う時間も寝坊で遅刻したり…。
金欠が原因で1人の男としての責任も全うできていないことに気づきます。
お金のが持つ真の価値に、一男が気づくと九十九が現れ、一男に3億円を返却。
九十九は大金を得る恐ろしさとお金よりも大切なものを教えるために、一男から3億円を奪ったのでした。
九十九は一男の親友であり、彼にお金とは何かを教えるべく姿をくらましたというエンディングは2人の絆を描いていくことで、ある程度予測はできます。
お金という題材で、これだけのドラマを生み出し、明確なテーマを提示していることに本作の価値があるように思います。
『億男』(2018)のまとめ

まどかと大倉一男:©︎https://eigaland.com/topics/?p=82414&page=18
お金は生活を送っていくうえで必要不可欠なものであり、誰もが欲しいと願うもの。
しかし、お金が無いことを言い訳にして人生を楽しめなくなると心まで貧しくなっていくように感じます。
お金には人間の汚いところを露わにする力もありますが、人を幸せにする力もある。
各々が持つお金に対する価値観に対し、問題提起している本作は、まさにお金について学べるエンターテインメント作品になっていたと感じました!
原作に対する興味も湧いてきたため、読んでみたいと思います。
『億男』(2018)を鑑賞した方におすすめの作品を紹介
『億男』(2018)を鑑賞した方には、SNSサイトのFacebookを創設したマーク・ザッカーバーグらを描いたアメリカ映画『ソーシャル・ネットワーク』(2010)がおすすめです。
『億男』(2018)と類似した問題を扱っている点が多い作品です。
・Facebookを創設したことで得た巨万の富
・企業を運営していく上で発生する人間関係の問題
・新サービスに対して寄せられる賞賛や批判
マーク・ザッカーバーグの抱いた葛藤を実話をベースにして描いた成功について考えさせられる興味深い内容です!