
クリストファー・ノーラン監督によるダークナイト・トリロジーの最終章として製作された『ダークナイト ライジング』(2012)。
オープニング3日間での興行収入では、前作の『ダークナイト』(2008)を上回り、当時の2D映画最高のオープニング記録を樹立しました。
ロビンやキャットウーマンなどの新たな登場人物を迎え、トリロジーの最後を締めくくるに相応しい作品となった『ダークナイト ライジング』(2012)の魅力と感想を、ネタバレありで語っていきます。
『ダークナイト ライジング』(2012)の作品情報とキャスト
作品情報
原題:The Dark Knight Rises
製作年:2012年
年製作国:アメリカ・イギリス
上映時間:165分
ジャンル: アクション
監督とキャスト
監督:クリストファー・ノーラン
代表作:『バットマン ビギンズ』(2005) 『インセプション』(2010)
出演者:クリスチャン・ベール/吹替:壇 臣幸(ブルース・ウェイン/バットマン)
代表作:『太陽の帝国』(1987)『リベリオン』(2002)
出演者:アン・ハサウェイ/吹替:園崎未恵(セリーナ・カイル/キャットウーマン)
代表作:『プリティ・プリンセス』(2001) 『プラダを着た悪魔』(2006)
『ダークナイト ライジング』(2012 )のあらすじ

隠遁生活を送るブルース・ウェインと執事アルフレッド© 2012 - WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC
バットマンが殺人犯の汚名を被り、ゴッサム・シティから姿を消して8年。
地方検事ハーヴィー・デントの死によって定められたデント法により、ゴッサム・シティの組織犯罪は根絶されようとしていた。
しかしベインと名乗る謎のテロリストの登場により、街の状況は一変し、再び大混乱が巻き起こる。
市警本部長ジム・ゴードンや警官ジョン・ブレイクの協力を得て、ブルース・ウェインは再びバットマンとして立ち上がる決意をするが……。
【ネタバレあり】『ダークナイト ライジング』(2012)を感想と考察

最強の敵ベイン© 2012 - WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC
それでは本作の感想と考察を書いていきます。
『ダークナイト ライジング』(2012)における因縁の宿敵ベイン
本作のメインヴィランであるベインは、明確な目的と優れた知性、そして圧倒的な力を有する強敵です。
原作でのベインは、初登場こそ1993年と遅いものの、バットマンの背骨をへし折ったことで、「コウモリを破壊した男」として有名になりました。
しばらくの引退生活を余儀なくされたバットマンにとって、ベインは因縁の宿敵とも言える人物であり、ダークナイト・トリロジーの終幕を飾るに相応しいヴィランであると言えるでしょう。
バットマンの敗北と復活を描く
圧倒的な力を持つベインとの戦いで、背骨に大ダメージを負い(原作ではへし折られています)、まさかの敗北を喫したバットマン。
「奈落」と呼ばれる地下の監獄にて、治療師の荒療治(患部にパンチ!)で背骨を回復させたバットマンは、再び地上に這い上がろうとします。
このシークエンスはトリロジー第1作目である『バットマン ビギンズ』(2005)におけるブルース・ウェインの父トーマスの、
「人はなぜ堕ちる?這い上がるためだ」
というトリロジー全体のテーマを表す言葉に対応しており、1作目からのファンは巧妙なプロットに唸らせられました。
バットマンの意志はロビンへと継承される
原作や過去の実写映画、アニメ作品などでバットマンのサイドキック(相棒)として名高いロビンは、『ダークナイト ライジング』(2012)では警察官ジョン・ブレイクとして登場します。
ジョン・ブレイクの本名がロビンであることは物語の最後(つまりトリロジー全体の最後)に明かされ、往年のファンにとっては嬉しいサプライズとなりました。
『バットマン ビギンズ』(2005)を第1作として、バットマン伝説の始まりから終焉までを描いたダークナイト・トリロジー。
『ダークナイト ライジング』(2012)は、バットマンの意志を継ぐ新たなヒーロー、ロビンの「ビギンズ」でもあるのです。
【ネタバレあり】『ダークナイト ライジング』(2012)の登場人物を原作との違いを交えて解説

警察官ジョン・ブレイク© 2012 - WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC
登場人物①:バットマン
本名ブルース・ウェイン。
少年時代、目の前で両親を強盗に殺されたことで、生涯を犯罪との戦いに費やすことを決意しました。
スーパーマンを始めとする多くのアメコミヒーローと異なり、バットマンは特殊な能力を持っていない、普通の人間です。
バットマンの武器は、人間として極限まで鍛えられた身体能力でも、世界トップレベルの財力でもありません。
原作で「世界最高の探偵」の異名を持つことからわかるように、バットマンの最大の武器は卓越した捜査能力や洞察能力といった知性であり、スーパーマンでさえ、バットマンに勝利することは簡単ではない、とされています。
登場人物②:ジョーカー
ジョーカーは本作に登場しませんが、本作の状況設定を語る上で外せない人物なので、紹介しておきます。
バットマンと対の存在とも言えるジョーカーは、前作『ダークナイト』(2008)に登場し、バットマンを苦しめました。
ゴッサム・シティの希望の星であった地方検事ハーヴィー・デントに接触し、その高潔な人格を邪悪なトゥーフェイスへと変貌させたことが、本作でバットマンが隠遁生活を送っている原因となっています。
前作のラストでは生存していましたが、8年が経過した『ダークナイト ライジング』(2012)では存在に触れられることはありませんでした。
ジョーカーを演じたヒース・レジャーが故人となっているためとも考えられますが、端役としてではキャラクターが強すぎるので、一切登場させなかったノーラン監督の判断は英断だったと言えるでしょう。
登場人物③:ロビン
本作では警察官ジョン・ブレイクとして登場。
一介の警官でありながら、優れた観察眼により、バットマンの正体がブルース・ウェインであることを見抜きます。
システムにとらわれざるを得ない警察官という立場に限界を感じ、バッジを捨てたロビン・ジョン・ブレイクがバットマンの跡を継ぐであろうことを示唆して、ダークナイト・トリロジーは幕を降ろしました。
原作ではロビンは複数の人物が務めており、交代の理由も様々です。
特に、2代目のロビンであるジェイソン・トッドは、ジョーカーにより鉄パイプで滅多打ちにされたうえに爆殺されるという、悲劇的な最期を遂げています。
この出来事は、バットマンにとって長くトラウマとして残りました。
登場人物④:スケアクロウ
本名ジョナサン・クレイン。
ダークナイト・トリロジーでは全作に登場しています。
本作では、無政府状態となったゴッサム・シティにおいて、犯罪者に対し「投獄か、追放か」を選ばせるデント法の意趣返しとして、捕らえた警察官に対し「死か、追放か」の決断を迫りました。
原作では意外にも初登場は1941年と、バットマンの主要なヴィランの中では最古参のひとり。
また、高い評価を得ているバットマンのゲーム「アーカム・シリーズ」の最終章、『バットマン アーカム・ナイト』(2015)では、メインストーリーのボスを務めています。
登場人物⑤:ベイン
本作では、強大な力を持った謎のテロリストとして描かれ、ゴッサム・シティのかりそめの平和を破壊し、無政府状態を作りだしました。
若き日のブルース・ウェインが、戦闘技術を身につけるために師事した「影の同盟」の兄弟子とも言える存在で、戦闘能力において、バットマンを圧倒的に上回ります。
原作ではヴェノムという筋力を増強させる薬品の中毒となっており、強大なパワーを有するほか、いくつもの言語を操り、推理のみでバットマンの正体を見破るなど、高い知能を持つ強敵です。
また、事情によっては時にはバットマンと共闘することもあり、ジョーカーのような完全な悪ではないところも魅力的なキャラクターだと言えるでしょう。
バットマンの実写映画で登場するのは本作が2度目であり、『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』(1997)でポイズン・アイビーに従う囚人として登場しています。
しかし単純なパワータイプの脇役として描かれ、知性のかけらも感じさせないその姿は、ファンから手厳しい評価を受けました。
【ネタバレあり】『ダークナイト ライジング』(2012)のラストを考察
バットマンは死んだのか
ゴッサム・シティを核の爆発から守るため、バットマンは空を駆けるマシン、バットを使い、爆弾を街から沖まで運び、バットもろとも爆発させます。
バットマン=ブルース・ウェインの犠牲によってゴッサム・シティは救われ、彼の正体を知る一部の人物によりブルースの葬儀が行われますが、実はバットの自動操縦機能がブルース・ウェインによって、半年前に完成されていたことが明かされました。
物語のラストで執事のアルフレッドが、フィレンツェでセリーナとともに過ごすブルースを見ていますが、アルフレッドが願望からくる白昼夢を見ているとする意見もあり、劇中ではブルースの死亡、生存については明言されていません。
脱出方法の答えはおもちゃの中に
バットの自動操縦機能が、ブルースの手により完成されていたことは劇中で明らかになりましたが、脱出方法については触れられることはありませんでした。
ファンの間ではバットマン死亡説、生存説がともに論じられましたが、脱出方法については、意外なところにヒントが隠されていたのです。
本作公開後にアメリカで発売されたバットのおもちゃには、操縦者が脱出できる装置がついていました。
バットマンはバット脱出後に、自動操縦を使って爆弾を沖に運んだ説が有力となり、生存説が真実味を帯びることとなったのです。
映画とは直接に関係のないところで、バットマンの脱出方法についてひとつの解答を示したのは、心憎い演出と言えます。
【ネタバレあり】『ダークナイト ライジング』(2012)の評価は?

キャットウーマンことセリーナ・カイル© 2012 - WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC
『ダークナイト ライジング』(2012)の評価を高評価の意見と低評価の意見に分け、それぞれの理由と合わせて紹介していきます。
高評価の意見を紹介
ダークナイト・トリロジーの最終章を飾るだけあり、これまでの作品を踏まえたストーリー展開は、高く評価されています。
ブルース・ウェインが、ロビンという新世代のヒーローにゴッサム・シティの未来を託し、セリーナ・カイルとともに自分の人生を取り戻すというエンディングは、深い余韻を残しました。
低評価の意見を紹介
前作『ダークナイト』(2008)のヴィランであったジョーカーがあまりにも強烈な印象を持っていたため、本作のベインの敵としてのあり方に不満を感じるという意見が多いようです。
特に終盤、弱点であるマスクが外れてからは弱体化が顕著で、あっさりとキャットウーマンの攻撃により死を迎えてしまいます。
また、昼でなければならないはずのシーンが急に夜になっているなど、演出面での粗さも目立ちました。
『ダークナイト ライジング』(2012)のまとめ

人生の余暇を楽しむブルーストセリーナ© 2012 - WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC
前作『ダークナイト』(2008)が、ひとつの映画として群を抜いた完成度を誇っていたため、続編である『ダークナイト ライジング』(2012)では賛否両論が巻き起こりました。
しかし本作の完成度が高かったからこそ、ダークナイト・トリロジー全体が非常に高い評価を受けていることは、間違いないでしょう。
クリストファー・ノーラン監督のバットマンは完結しましたが、DCコミックスのヒーローやヴィランが一堂に会するDCエクステンデッド・ユニバースは継続中であり、予定されているバットマンの単独映画も含めて、今後の展開から目が離せません。
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