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名シーンの連続!!映画『シャイニング』(1980)の解釈と考察について【あらすじ、感想、ネタバレあり】

後世の映画作品に多大な影響を与えた、映画のマスターピースともいえる名作『シャイニング』(1980)。

スタンリー・キューブリック監督が作り出す芸術作品のような映像美は、想像を超えた恐ろしさを醸し出し、その重厚な映像から徐々に恐怖が襲ってきます。

2019年のカンヌ映画祭で4Kレストアされた143分版が公開され、カットされていた30分以上ものシーンが復活、再び脚光を浴びている20世紀最大のモダン・ホラー。

『シャイニング』(1980)のあらすじと感想、作品の魅力をネタバレを交えながら紹介していきます。

『シャイニング』(1980)作品情報とキャスト


シャイニング (字幕版)

作品情報

原題:THE SHINING
製作年:1980年
製作国:イギリス アメリカ
上映時間:119分(国際版)/143分(通常公開版)/146分(プレミア上映版)
ジャンル:ホラー スリラー

監督とキャスト

監督:スタンリー・キューブリック
代表作:『2001年宇宙の旅』(1968) 『時計じかけのオレンジ』(1971)『バリー・リンドン』(1975)

出演者:ジャック・ニコルソン
代表作:『イージー・ライダー』(1969)『カッコーの巣の上で』(1975)『恋愛小説家』(1997)

出演者:シェリー・デュヴァル
代表作:『ナッシュビル』(1975)『ポパイ』(1980)

原作:スティーブン・キング
代表作:『グリーンマイル』(1999)『シークレット ウインドウ』(2004)

原作は『ミスト』(2007)『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017)などで知られる大御所スティーブン・キング。

監督は『2001年宇宙の旅』(1968)『時計じかけのオレンジ』(1971)といった名作を生み出した巨匠スタンリー・キューブリック。

そんな豪華な面々と手を組むのは、『恋愛小説家』(1997)などに出演してきた名優ジャック・ニコルソンとタッグを組んだ映画史に残る珠玉のホラー映画『シャイニング』(1980)

『シャイニング』(1980)のあらすじ

Jack Nicholson, Shelley Duvall, and Danny Lloyd in The Shining (1980)

ホテルに向かうトランス一家:©︎Warner Bros

元教師で小説家志望のジャック・トランスは、妻のウェンディ予知やテレパシーなどの超能力(シャイニング)をもつ息子ダニーと、冬の間、豪雪のため閉鎖されるオーバールックホテルの管理人一家として雇われる。

誰も訪ねてこない環境で小説の執筆ができると喜んでいたジャックだったが、かつてこのホテルでは、精神に異常をきたした管理人が、家族を惨殺した挙げ句に自殺するという事件が起きていた。

誰もいなくなり、深い雪に閉ざされたホテルの中で、最初は穏やかな生活を過ごしていた一家だが、超能力(シャイニング)を持つ息子ダニーは、ホテルで起きる異常な現象に恐怖を抱いていた。

一方で、小説が上手く書けずに不貞腐れていたジャックは、次第に邪悪な世界へと飲み込まれていく。

例年にない大雪で外界と完全に隔離されたホテルの中、一家はかつてない恐怖を体験することになるのであった……。

『シャイニング』(1980)の3つの恐怖!

Danny Lloyd in The Shining (1980)

ステディカムで撮影され三輪車の疾走シーン:©︎Warner Bros

恐怖①:ステディカムを活かしたカメラワーク

ステディカムとは、カメラの移動撮影の際に生じるブレや振動を抑えることができる、カメラの装置、スタビライザーのことです。

それまでブレない移動撮影のときは、長いレールを敷いてカメラを台車に乗せて移動させたり、大型クレーンにカメラを載せて撮影するなど、大掛かりな仕掛けで撮影していました。

ステディカムのおかげで、狭い場所や、早いスピードでの移動撮影ができるようになりました。

有名なステディカムのシーンは『ロッキー』(1976)のフィラデルフィアの町並みをランニングする場面、シルベスター・スタローンの力強い走りを横から追った撮影は名シーンの一つです。

最近、手ブレしない動画を撮影をするためiPhoneやカメラに「ジンバル」を取り付けているユーチューバーや旅行者を多く見ますが、これはステディカムの簡易版です。

このステディカムの特徴として、ブレを抑えるためにゆっくりと動く特性があり、ヌルっとした映像になることがあります。

スタンリー・キューブリック監督は開発されたばかりの「ステディカム」をこの映画に導入し、移動撮影の醍醐味とヌルっとした映像をうまく利用して、恐怖と不安感を倍増させるカメラの動きに使用しています。

なかでも息子ダニーが三輪車に乗ってホテル内を延々と走るシーンでは、長い距離をカメラはブレもなくヌルっとした動きで追従。

誰もいないホテルの狭い廊下を走る閉塞感と「なにかあるかも」という曲がり角を曲がるたびに感じる恐怖感が見事に描いているのです。

『シャイニング』(1980)以降は、ホラー映画のみならず、ほとんどの映画で「ステディカム」は使用されています。

恐怖②:画面いっぱいに広がる芸術的な血しぶき

The Shining (1980)

ホテルのエレベーターからでてくる大量の血:©︎Warner Bros

美しいエレベーターホールに、これは無いだろうというほどの血の量が吹き出してきます。

スローモーションで溢れでる血の赤、恐ろしくも有り、美しくもあります。

スタンリー・キューブリック監督が、独特な映像美で恐怖を描くとこのようなイメージになるのかと、一枚の絵画を見たような印象的なシーンです。

このように『シャイニング』(1980)には、血が飛び散った恐ろしいシーンなのに、絵画のような上品さ、美しさが漂う雰囲気が各所で見られて、それが単なるホラー映画とは一線を画す作品になっています

恐怖③:完全主義者スタンリー・キューブリックのやり直し

Stanley Kubrick and Jack Nicholson in The Shining (1980)

モニターでチェックするキューブリック監督とニコルソン©︎Warner Bros

映画以上に恐怖なのが、スタンリー・キューブリック監督のやり直し、テイクの数です

それまで、フィルムの現像を待たないと映像のチェックは出来ませんでしたが、『シャイニング』(1980)の撮影からビデオチェックができるようになり、完全主義者の異名を持つスタンリー・キューブリック監督は、何度となく撮影、演技のやり直しを求めました。

普通に40テイク、50テイクは当たり前で、有名なドアの隙間からジャックが顔を覗くシーンでは、190回以上のテイク数にのぼるほど、ジャック・ニコルソンは本当にキレていたからできた、あの怪演です

何回もやり直しを求めるため、ホテルの料理人役の芸歴50年を超すベテラン、スキャットマン・クローザーズは泣き出してしまうほどでした。

先に述べたエレベーターホールの血の海も、掃除するのも大変なのに3回も撮り直しています。

スタンリー・キューブリック監督の恐ろしいほどのこだわりが詰まった映画なのです

【ネタバレあり】『シャイニング』(1980)の解説

2019年カンヌ映画祭で公開された4Kシャイニングのビジュアル©︎Warner Bros

4Kで甦る『シャイニング』

映画は1980年12月、正月映画の目玉として公開されました。

寡作で有名なスタンリー・キューブリック監督作品で、前作の『バリー・リンドン』(1975)以来5年ぶりの発表。

それもホラー映画とあって期待度は高く、制作費 1900万ドル(約48億円)に対して興行収入は1980年末のアメリカで、約4402万ドル(約110億円)を稼ぎ出し、大ヒットとなりました。

ただし原作のスティーブン・キングが、あまりにも映画の内容が原作と違うので怒り出し、スタンリー・キューブリック監督を非難し、映画を認めないとまで発言したのは有名な話です、原作を守るためか、自分でTVドラマ「シャイニング」(1997)まで製作しています。

しかし『シャイニング』(1980)の素晴らしさは変わらず、いまなお、多くの映画ファンを魅了し続けています。

今年(2019年)5月のカンヌ映画祭でのカンヌクラシックでは、4Kにレストアされた『シャイング』が記念上映されました。

嬉しいことに、4Kシャイニングは、上映時間143分の通常公開版の長さで、今後日本での公開やIMAXでの公開が予定されています。

現在日本で購入できる『シャイニング』(1980)のBDやDVDは119分の国際版のみで、この映画を本当に理解するには、143分の通常公開版か146分のプレミア上映版を見ないとわからないとまで言われていました。

確かに日本で公開された119分版では重要なシーンが色々カットされています。

【ネタバレあり】『シャイニング』(1980)のカットシーン

Shelley Duvall in The Shining (1980)

妻ウエンディはバスルームに逃げ込む©︎Warner Bros

『シャイニング』(1980)が30分以上もカットされた理由は、興行的に2時間以内にすれば上映回数が増えて儲かるからということと、スピーディーに展開したほうがアメリカ・イギリス以外の国の人にはウケるだろうという思惑でした。

『バリー・リンドン』(1975)での興行的な失敗が、キューブリックに重くのしかかっていたようです。

カット①:ジャックの家庭内暴力

Jack Nicholson and Danny Lloyd in The Shining (1980)

息子ダニーにホテルの生活が楽しいか聞くジャック©︎Warner Bros

カットされた有名なシーンに、ホテルに行く前の自宅で、妻ウェンディが小児科の女医に息子ダニーの症状や、ジャックが酒を飲んでダニーに暴力をふるったいきさつを話すシーンがあります。

家庭内暴力であり、子供の虐待という、ジャックの邪悪な部分が描かれていましたが、119分国際版では小児科医は一切登場していません、全てカットされています

後半でバーテンダーに怪我をさせた経緯をジャックは話していますが、小児科医の話は、家族を虐殺するというジャックの行動の伏線になっていました

カット②:ジャックのデジャブ

Jack Nicholson and Joe Turkel in The Shining (1980)

バーテンダーとこ馴染みのジャック©︎Warner Bros

またカットされた重要シーンに、ベットでジャックが朝食をとっている時、妻のウェンディにオーバールックホテルについて感想を述べ「初めて面接で来たとき、昔来たことがあるような気がした

「誰でもそんなことがあるが俺のは極端だった」

どこに何があるのかも覚えてる気がした」と話します。

デジャヴのように聞こえるこのセリフですが、映画のラストに謎が解明されます。

30分ものカット中には、重要な部分も多く、この映画を難解にしているのは確かです。

カットされたセリフ部分から、この映画のラストを考えたいと思います

【ネタバレあり】『シャイニング』(1980)のラストの解釈と考察

Jack Nicholson in The Shining (1980)

禁酒を破り酒に手を出したジャック©︎Warner Bros

『シャイニング』(1980)のラストは、いろいろな解釈を生み出しました。

ジャックが凍え死んだあと、ホテルの歴史を紹介する白黒写真が飾られた壁にカメラが寄っていくと、一枚の古い舞踏会の記念写真が映し出されます。

そこには、なぜかジャックが真ん中でニッコリと写っています、その下の撮影した日付は1921年7月4日、この独立記念日の舞踏会写真で、映画は終わります

スタンリー・キューブリック監督はインタビューで、「最後の舞踏会の写真は、ジャックの生まれ変わりを示唆しています」と語っています。

ジャックは何度もホテルの管理人として、生まれ変わっていると監督は言っています。

だから、来たことものないホテルにも昔来たことがあるような気がするし、知るはずもないバーテンダーの名前を知っていたりします。

また家族を惨殺し、自殺した前の管理人からも「あなたこそ、このホテルの管理人です、ずっと昔から」といわれたり、ジャックが昔からこのホテルにいたことを示す部分が多くでてきます。

ジャックは、ホテルにとりつかれて、生まれ変わっては管理人を続け、時には家族を惨殺し、自殺していたようです、何世代も!

そしてまた、ジャックは生まれ変わり、ホテルの管理人として現れるのです。

『2001年宇宙の旅』(1968)のスターチャイルドが登場を待って、地球を眺めているように、こちらは邪悪なジャックがホテルの写真から、次に生まれ変わるタイミングをはかっているように感じます。

『シャイニング』(1980)の名シーン

整列する二人の少女:©︎Warner Bros

余談ではありますが、本作には数多くの名シーンが存在します。

映画ファンではなくても一度は見たことがあるであろう名シーンを3つ紹介します。

1つ目は、本作のジャケットになっているジャック・ニコルソンが、扉の隙間から顔を出しているシーン。

ジャック・ニコルソンの顔芸にすら思える表情が強烈なインパクトを残してくれます。

2つ目は、整列している二人の少女。

何もせずにただこちらを見つめる少女は、初めて見たとき背筋が凍るほどの恐怖を覚えました。

このシーンはトラウマ級の恐怖です。

3つ目は、血しぶきが流れ込んでくるシーン。

前述したシーンではありますが、これもあまりにも有名なシーンです。

スティーヴン・スピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』(2018)でも登場し、インパクトを残しました。

そして余談ではありますが、息子ダニーが三輪車に乗ってホテル内を走るシーンで映る廊下の印象的な模様。

この模様もデザイン性が高く評価され、各所で使われています。

『シャイニング』(1980)のまとめ

Jack Nicholson in The Shining (1980)

雪の中、迷路で息子ダニーを探すジャック©︎Warner Bros

絶えず問題作を世に送り出していたスタンリー・キューブリック監督

単なる娯楽ホラー映画と思っていた『シャイニング』(1980)も、掘り下げていくと奥が深く、スタンリー・キューブリック監督の仕掛けた様々な罠。

見た目は美しく、入り口は入りやすい庭園の迷路のごとく、ジャックのように抜け出せなくなります。

やはり後世に語り継がれるほどの問題作でした。

今年(2019年)5月にカンヌ映画祭で公開された4Kリストア版のシャイニング、美しく蘇った映像美と復活された30分以上のシーンは、『シャイニング』(1980)の評価を変えることになります。

本作の他に人気の高いホラー映画を紹介していますので、併せて見てみてください。

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