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映画『ガタカ』(1997)の魅力を名言と合わせて解説【あらすじ、感想、ネタバレあり】

1997年に公開されたこの映画は、SF映画好きな人々のあいだでは、今でもなおオールタイムランキングの上位の常連作品となっています。

世間的にも1998年のゴールデングローブ賞の最優秀映画音楽賞、1997年アカデミー賞のアートディレクションにノミネートされ、2011年にはNASAにより「現実的なSF映画」1位に選ばれるなど高い評価を得ている『ガタカ』(1997)。

そんな本作の魅力を名言や感想とともにネタバレを交えてを紹介していきます。

『ガタカ』(1997)作品情報とキャスト


ガタカ (字幕版)

作品情報

原題:Gattaca
製作年:1997年
年製作国:アメリカ
上映時間:106分
ジャンル: SF、ミステリー、ヒューマンドラマ

監督とキャスト

監督:アンドリュー・ニコル
代表作:『トゥルーマン・ショー』(1998)『TIME/タイム』(2011)

出演者:イーサン・ホーク/吹替:宮本充(ヴィンセント・アントン・フリーマン)
代表作:『トレーニング デイ』(2001) 『ビフォア・サンセット』(2004)

出演者:ユマ・サーマン/吹替:田中敦子(アイリーン・カッシーニ)
代表作:『キル・ビル Vol.1』(2003)『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』(2010)

出演者:ジュード・ロウ/吹替:井上倫宏(ジェローム・ユージーン・モロー)
代表作:『リプリー』(1999)『コールド マウンテン』(2003)

『ガタカ』(1997)のあらすじ

正体を偽り、ガタカ社の社員として勤務するヴィンセント©︎:Sony Pictures Entertainment Inc.

遺伝子操作により、「適正者」として生まれた者だけが優遇される近未来の社会。

不適正者である主人公、ヴィンセントは、弟のアントンを含めた適正者たちとの能力の差について苦しみながら成長する。

そんな彼は、宇宙飛行士になるという夢を抱いていた。ヴィンセントは自分の出自を欺き、宇宙開発企業ガタカ社に入社する。

ヴィンセントは半身不随の適正者、ジェロームの協力を得て彼自身になりすまし、夢である宇宙への旅立ちを計画するのだが……。

『ガタカ』(1997)の3つの見どころ

ジェロームに惹かれてゆくアイリーン©︎:Sony Pictures Entertainment Inc.

見どころ①: 美しい映像と音楽

SF映画ではありますが、派手なアクションがない分、静かに物語は語られていきます。

しかし、近未来的な映像美と、静謐な美しさを持つ音楽が、物語に退屈さをまったく感じさせません。

見どころ②: 美しい登場人物

遺伝子操作された人間たちは、外見も完璧。

ジュード・ロウ、ユマ・サーマンといった完璧な美男美女が、物語を引き立てます。

見どころ③: 美しい台詞たち

無駄を徹底的に省いた、美しい台詞の数々。

何気ないひとことに思いもしなかった意味が隠されていたりするため、鑑賞中は気が抜けません。

以上の見どころを踏まえて本作を視聴してみることをおすすめします。

【ネタバレあり】『ガタカ』(1997)の感想

ジェロームとなる前のヴィンセント©︎:Sony Pictures Entertainment Inc.

『ガタカ』(1997)が持つ多彩な魅力を、ネタバレを交えつつ語っていきたいと思います。

葛藤を抱えた登場人物

本作に登場する人物はそれぞれ何らかの葛藤を抱えています。

努力の結果、優秀な能力を獲得したにも関わらず、不適正と判定された遺伝子により夢を叶えることができないヴィンセント。

適正者の中でも優れた遺伝子を持ちながらも、身体的な欠陥により、歩くことすらできず車いす生活を余儀なくされているジェローム。

この2人を軸として、静かに、淡々と物語は語られていきます。

近未来の世界を描き出す、青を基調としたスタイリッシュな映像美。

名匠マイケル・ナイマンの手による、静謐な美しさを持つ音楽の数々。

これらの要素が絶妙に混ざり合い、冗長的に思え、退屈になってしまいかねないSFサスペンスを、恐ろしく完成度の高い作品として仕上げています。

魅力溢れるキャストの面々

ヴィンセントの不正を見逃すレイマー医師©︎:Sony Pictures Entertainment Inc.

本作に登場するとキャストは非常に豪華な顔ぶれ。

管理社会でもがき苦しむ主人公ヴィンセントを、静かな迫力で演じるイーサン・ホーク。

影を背負う美青年を演じたら右に出る者なしのジェローム役のジュード・ロウ。

そしてヴィンセントの恋人アイリーン役に、美しさと気の強さを兼ねそろえたユマ・サーマン。

彼らの演技は全体的に感情を抑えたものではありますが、それだけに後半の盛り上がりに引き込まれます。

ちなみにイーサン・ホークとユマ・サーマンは、この映画の共演がきっかけで映画公開の翌年に結婚しています(のちに離婚)。

そのあたりの事情も知っていると、ふたりのラブストーリーとしても、本作を一層楽しめるかも知れません。

『ガタカ』(1997)に登場する名言

かつてのヴィンセントを知る掃除夫シーザー©︎:Sony Pictures Entertainment Inc.

登場人物たちは様々な印象的な台詞を言いますが、なかでも本作を象徴的に表す名言が、ヴィンセントが物語の終盤に弟のアントンに言い放つ台詞。

『僕に何ができて何ができないか、決めつけるな! 』

これはヴィンセントが、自分の運命を決めつけた管理社会そのものに言っているように思えます。

実際、劇中で彼が人生を通して夢を叶えるために行動してきたことのすべては、自分自身の可能性への挑戦でした。

また、恋人であるアイリーンに自分の正体を知られたヴィンセントは、遺伝子の判定による自分の寿命はもう過ぎていることを告げます。

「不可能よ」と信じられない様子のアイリーンに、ヴィンセントは言います。

「できるんだ。可能なんだ」と。

皮肉にも、適正者とされるアイリーンたちが自分たちの限界に縛られ、遺伝子の定めた運命に甘んじて生きていることに対して、不適正者とされたヴィンセント。

彼は人間には無限の可能性があるのだということを、自らの行動によって証明してゆくのです。

こうした数々の名台詞を含め、何気ない場面の台詞のひとことひとことが心に響き、始めから終わりまで目が離せません。

登場人物は基本的に善人であり、それがこの映画の大きな魅力でもあります。

ヴィンセントの夢を阻むのは、実際のところは遺伝子情報を絶対する管理社会そのものだけです。

彼の夢を知り、文字通りすべてを差し出して協力するジェロームや、ヴィンセントの不正を知りながらも、彼に息子の姿を重ねてそれを見逃すレイマー医師。

真実を打ち明けられ、一度はヴィンセントを拒絶しながらも最終的には彼を受け入れるアイリーン。

そしてガタカ社で起こる殺人事件の調査を担当するヴィンセントの弟アントンは、事件の影に兄の存在を察知し、どこか兄をかばうような捜査を続けます。

ジェロームになりすます前のヴィンセントの、かつてのボスである掃除夫シーザーでさえ、ヴィンセントの夢を、「掃除が終わってから夢を見ろ」と言い、否定はしません。

殺人現場に立ち入り、証拠をゴミとして隠滅しようとしていることからも、ヴィンセントをかばって行動している節があります。

ヴィンセントの血の滲むような努力を知っている人々が、結果的に彼を宇宙へと押し上げてゆくのです。

冷たい管理社会と暖かい人間たち。

この対比が、この映画の面白さのポイントのひとつです。

『ガタカ』(1997)の評価と残念だった点

ふたりのジェローム©︎:Sony Pictures Entertainment Inc.

『ガタカ』(1997)は高い評価を受ける作品ではありますが、いくつか気になる点がありました。

具体的には以下の3点です。

①:ヴィンセントの行動

不適正者であるヴィンセントは、努力によって、ガタカ社でも有数のエリートとして周囲に認められています。

遺伝子情報こそ偽物ではありますが、宇宙飛行士の厳しい試験をパスした彼の知識や技術は本物なのです。

ヴィンセントは、自分の遺伝子情報をガタカ社に残さぬよう、自宅で気の遠くなるような作業である〝下準備〟を毎日、怠りません。

その一方で、ガタカ社のエリート社員としての地位を保つための努力もしているわけで、ヴィンセントの超人的な行動力が、全編を通して描かれます。

見方によっては、彼は夢のためならばなんでもする犯罪者でもあるわけで、『ガタカ』をつまらない、共感できないと評価する人がいるのも頷ける要素ではあります。

しかし、同時に本来ならば従うべき体制に対して疑問を感じて、謀反を起こした彼の行動は賞賛されるべきでもあるという構造になっているわけです。

②:ラストシーン、ジェロームの決断

これが個人的には一番残念な点でした。

ジェロームは物語のラストに、宇宙へ旅立つヴィンセントのために、一生分の遺伝子情報のサンプルを残し、自らは焼却炉に入って死を選びます。

その直前にふたりが交わす会話の中で、ジェロームが放つ台詞。

「体を貸す代わりに、夢をもらった」

ヴィンセントとジェロームの間には、遺伝子情報を貸す人間と借りた人間という関係を超え、かけがえのない友情が生まれていました。

彼の死が、この映画の結末をより感動的なものにしていることは間違いないのですが、やはりジェロームには、ヴィンセントの生涯の良き相棒として、生きていて欲しかったと思ってしまいます。

③:時間が短すぎる

『ガタカ』の上映時間は106分と、これだけ壮大な脚本を描くにしては上映時間が短めです。

それ故に、繰り返しの鑑賞にも適しているということも言えるのですが、内容的にはもっと長く時間を使い、じっくりと描いてほしかった部分が多いことも事実です。

DVDやブルーレイでは、事情によりカットされた未公開映像を観ることができますが、これがどれも本編には入れて欲しかった出来のものばかりなのです。

特にヴィンセントと、掃除夫シーザーとのやりとり(「ハードウォール」、「シーザーとの別れ」)は、劇場公開版ではわかりづらかった彼らの関係性を補完する名シーンです。

機会があればぜひDVDを購入して観てみることをおすすめします。

『ガタカ』(1997)の主題とは?

宇宙へ旅立とうとするヴィンセント©︎:Sony Pictures Entertainment Inc.

『ガタカ』(1997)の主題はとてもシンプルです。

それでいながら、深読みをしようと思えば、いくらでもできてしまうほどに様々な議論の余地が生まれる作品でもあるので、鑑賞者の数だけ「ガタカ」論が存在します。

自分の能力に限界を感じたとき、この作品は、それが単なる甘えでしかないことを教えてくれます。

人間には無限の可能性がある。

作品全体に流れる徹底した人間賛歌が、この映画の最大の魅力といえるでしょう。

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