
2019年1月18日に公開された映画『マスカレード・ホテル』は、人気ミステリー作家である東野圭吾と国民的スターである木村拓哉が初のタッグを組んだ作品。
バディ役を務める長澤まさみをはじめ、日本の有名キャストが出演する本作を多くの人が注目していたのではないでしょうか。
さらに本作は公開から約3週間で観客動員数が約200万人以上、興収も約25億円を突破し、映画レビューサイトFilmarksでも3.7と高評価を獲得しています。
それでは本作の感想をご紹介していきます。
目次
『マスカレード・ホテル』の作品情報とキャスト
作品情報
原題:マスカレード・ホテル
公開年:2019年
製作国:日本
上映時間:133分
ジャンル:ミステリー
監督とキャスト
監督:鈴木雅之
代表作:『HERO』(2015)『プリンセス トヨトミ』(2011)
出演:木村拓哉(新田 浩介)
代表作:『HERO』(2015)『武士の一分(いちぶん)』(2006)
出演:長澤まさみ(山岸 尚美)
代表作:『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)『海街diary』(2015)
原作:東野圭吾
代表作:『人魚の眠る家』(2018)『秘密』(1999)
『マスカレード・ホテル』のあらすじ
(C)2019映画「マスカレード・ホテル」製作委員会 (C)東野圭吾/集英社
都内で起きた3件の連続殺人事件。
警視庁捜査一課のエース、新田浩介は事件現場に残された証拠から次の犯行場所がホテル・コルテシア東京であることを突き止める。
警察はホテルでの大々的な潜入捜査を開始し、新田もホテルのフロントクラークに扮することになるが、彼の教育係は自身の性格とは真逆の有能なフロントクラーク、山岸尚美だった。
最初は衝突を繰り返す新田と尚美だったが、潜入捜査の過程で次第に互いを認め合い、信頼関係を築いていく。
そして捜査が進むにつれ徐々に事件の全容が暴かれ、尚美の身にも危険が迫っていた。果たして犯人の正体とは……。
『マスカレード・ホテル』の3つの見どころ
(C)2019映画「マスカレード・ホテル」製作委員会 (C)東野圭吾/集英社
見どころ①:キムタクと長澤まさみの凸凹コンビ
無愛想だけど頭がキレる捜査一課のエース新田と優秀だけど人をお人好しのホテルクラーク山岸をそれぞれが好演。
木村拓哉と長澤まさみの絶妙な掛け合いに注目です。
見どころ②:スピーディーな場面展開
豪華キャストが次々と登場。
短編的なエピソードがテンポよく展開されるので、非常に観やすく仕上がっています。
見どころ③:散りばめられた伏線
物語の端々に真犯人逮捕に向けての伏線が散りばめられています。
先の読めない脚本に加えて、使用される音楽や舞台セットにも物語の緊張感を高めるこだわりを感じました。
ネタバレあり『マスカレード・ホテル』の感想
(C)2019映画「マスカレード・ホテル」製作委員会 (C)東野圭吾/集英社
原作小説も読まず、映画のパンフレットも見ず、予備知識を入れないまっさらな状態で鑑賞。
率直な評価としては全体的にテンポが良く、ストーリーも先の読めない展開で、見応えがありました。
さらに、木村拓哉と長澤まさみの演技が好印象。
二人を物語の中心に据え、さまざまなミッションを解決していく構図も非常に分かりやすかったです。
老若男女問わず幅広い層が楽しめる作品に仕上がっていました。
人は皆、仮面を被って生きている。
本作のテーマとして恐ろしくも、魅力的に描かれていた部分が、人は誰しも”仮面”を被って生活しているということ。
高級ホテルを舞台に人を疑うことを生業にしている刑事と、人を信じ奉仕することを生業とするホテルマンを対立させる形で人間の本性を暴き、犯人に迫ります。
そして、その”仮面”が剥がされた時に垣間見える人間の「虚栄心」「嫉妬」「妬み」。
それらの感情がやがて憎しみへと変貌を遂げ、些細な出来事は大きな事件へと発展するのです。
作品を見終わったあと「つくづく人間の感情とは怖いものだな……。」と感じました。
『マスカレード・ホテル』の良かった点
賛否両論がある『マスカレード・ホテル』について、まずはポジティブな面を5つの項目に分けて詳しい感想を述べていきます。
カッコイイ木村拓哉が復活
本作の感想を書いていくうえで避けて通れないものが、主演である木村拓哉について。
最初に彼の演技を通して感じたことはカッコイイ木村拓哉が帰ってきたということ。
傍若無人で不愛想、だけど頭はキレて仕事に人一倍のプライドを持っている刑事役がハマっていました。
そして相手役の長澤まさみも役柄にピッタリで2人のコンビネーションもまた良かったです。
主人公である2人のキャラクターは、キャストとしての名前に負けず、すんなり受け入れられるものでした。
これこそ本作の成功に大きく影響したといえるでしょう。
やはり木村拓哉はヒーローが良く似合う。
「何を演じてもキムタク」などと揶揄されることもありますが、裏を返せばそれは唯一無二の個性。
もはや最大限の賛辞だと受け止めてもいいのではいいのではないでしょうか。
正反対な2人の”プロ意識”に共感
本作はミステリー・サスペンス・バディもの作品という要素の他に、”仕事をする”とは何かということを問いかけるメッセージ性も内包しています。
新田の徹底的に相手を疑う刑事としてのプロ意識と、山岸のとことん相手を信じぬくホテルマンとしてのプロ意識。
一見、考え方が相反する2人ですが、刑事なら善良な市民、ホテルマンなら大切なお客様を守りたいという”信念”が一致しているからこそ互いに共鳴し合っていきます。
最初は、反発し合うけれども、徐々に互いの職業の奥深さを理解し、尊重する。
プロ意識をもって働くことの大切さを教えてくれる映画でした。
テンポよく展開するストーリー
物語の構成はチャプター1、チャプター2というようなショートストーリー風に展開していくことが印象的でした。
犯人と疑われる怪しい来客がそれぞれ登場し、1話完結でテンポよくどんどん進むので非常に鑑賞しやすい印象です。
また、客の来店時と事件解決時にはそれぞれ決まったBGMを流す演出が映画のテンポの良さをさらに強調させています。
こだわり抜かれた舞台演出
物語の端々に散りばめられた伏線や拘られた舞台演出も特徴です。
例えば本作にはホテルの部屋にある文鎮をワンカットで映す演出が度々登場しますが、これはクライマックスで新田が犯人の所在を突き止める際のヒントに。
またロビーの階段に飾られているバラも、事件収束時は天秤の形、クライマックスには仮面の形に姿を変えるなど細かな部分にも抜かりありません。
最初から最後までミスリードを誘う伏線が張り巡らされた良作でした。
松たか子の演技に脱帽
豪華絢爛、これでもかというくらい次々と有名キャストが登場しますが、結局最後は犯人役の松たか子が全部持っていった印象を受けます。
「まさかあの胡散臭いお婆ちゃんが松たか子だったなんて……。」と驚いた人は私だけではないはず。
犯人が明かされるまで一切予想できず。
事前にパンフレットを見た人の中には、「松たか子が出る時点で犯人だと分かった」という声もありましたが、事前情報ゼロの方は完全に騙される可能性が大いにあります。
そして標的の長澤まさみに恨みをぶつける芝居は緊張感があり、ただただ恐怖。
ラストに『HERO』で長らくコンビを組んだキムタクに捕まるシーンは、なんだか不思議な感情にもさせられました。
『マスカレード・ホテル』の残念だった点
ここまではポジティブな面を中心に述べてきましたが、本作の残念だったと感じるも挙げておきます。
『マスカレード・ホテル』の残念な点は主に以下の3つ。
・ツッコミ所満載の設定
・豪華キャストが勿体無く感じる
・終盤に見られる謎の演出
①刑事が大所帯でホテルに潜入する不自然さ
まず感じた違和感は「潜入捜査ってこんなに大人数でするものなの?」ということ。
潜入をホテル側に提案するシーンでざっと20人以上の警官がいましたが、さすがにこの人数はあり得ないでしょう。
ホテルクラークにも自分の仕事がありますし、潜入が可能なのは多くても接客業経験者の警官を2人程度だと思います。
この点に関しては突っ込むのも野暮な気がするのですが、一流高級ホテルでありながら、素人を客前に出すという悪手に踏み切っている状況には思わず笑ってしまいました。
②豪華キャストの”手持ち無沙汰感”
とにかくキャストの無駄遣い感がすごいと感じます。
恐らく出演者の半分を削っても話としては充分成立するでしょう。
「勝地涼も前田敦子も何もこんな役で出演しなくてもいいのに」と若干気の毒にさえ感じてしまいました。
特に極めつけが冒頭に登場した濱田岳。
実力がある俳優だけに今後どう話に絡んでくるのだろうと期待していましたが、結局最後まで出てきませんでした。
ストーリー自体は面白かったのですが、ここまで豪華なキャストを無駄遣いすると「話題作りのための配役ではないか」と騒がれても文句は言えないように感じました。
③余計な恋愛演出
最も気になったのは、終盤の新田と山岸の恋愛に発展するかも的な演出。
ホテルのフロントが仮面舞踏会に変わりドレス姿の長澤まさみが登場するシーンも、最後に2人がハニカミながら食事をするシーンも全く必要性を感じず。
話の流れからすれば、あくまで新田は山岸をホテルマンとして、プライドを持って働く1人の女性として認めたのであって、恋愛対象としてしまうのは、いかなるものかと。
最後の最後にトーンダウンしたことは否めませんでした。
『マスカレード・ホテル』の感想まとめ
感想をまとめると、無理やりな設定と配役に多少の違和感こそあるものの、木村拓哉と長澤まさみのコンビやテンポの良いストーリー展開は好印象。
最後まで犯人が予想できない手に汗握る展開を楽しむことができます。
本作は主演2人の関係性も含めて作品自体にまだまだ伸びしろがあるようにも感じました。
そして最後に、エンドロールで流れる明石家さんま(友情出演)の文字にびっくり仰天。
私は気づけなかったのですが、これから視聴する人や改めて視聴する際には探してみるのも楽しいかもしれません。
思いもよらぬ展開にハラハラドキドキするサスペンス映画をおすすめランキングとして紹介しているので、合わせてチェックしてみてください。
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