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衝撃の結末! 映画『人魚の眠る家』(2018)の感想と考察【あらすじ、感想、ネタバレあり】

今回は2018年10月29日に公開された『人魚の眠る家』(2018)

原作は人気作家東野圭吾による同名小説で、東野先生のデビュー30周年記念作品としてもファン注目の本作。

東野圭吾は、『さまよう刃』『容疑者Xの献身』『マスカレード・ホテル』など実写化作品を多く手掛けており、観たことがある方も多いのではないでしょうか。

篠原涼子や西島秀俊をはじめとする豪華キャストが出演するという点でも注目の本作について、紹介していきます。

『人魚の眠る家』(2018)の作品情報とキャスト


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作品情報

原題:人魚の眠る家
公開年:2018年
製作国:日本
上映時間:120分
ジャンル:ドラマ

本作は東野作品の中でも最も「テーマが重く、衝撃的な内容」であることがファンの間でも話題となっていたため、実写化でどう表現するのかという点でも注目でした。

しかし、初登場映画ランキングでは3位で、土・日の動員数でも約11万、興行収入は約1億5000万程度という結果に。

ヒット作が幾多にある東野映画としては”大ヒット”とは言えないかもしれませんが、映画レビューサイトでは3.8点を獲得している作品で、評価は高いといえます。

監督とキャスト

監督:堤幸彦

出演:篠原涼子 (播磨薫子)
代表作:『劇場版 アンフェア シリーズ』『SUNNY 強い気持ち・強い愛』

出演:西島秀俊(播磨和昌)
代表作:『劇場版 MOZU』『クリーピー 偽りの隣人』

出演:坂口健太郎(星野祐也)
代表作:『君と100回目の恋』『今夜、ロマンス劇場で』

原作:東野圭吾

夫婦役を演じる篠原涼子、西島秀俊に加え、坂口健太郎、田中泯、松坂慶子など名前を知らない人は居ない程の人気と実力を兼ね備えた役者が名を連ねます。

個人的に意外だったことが堤幸彦が監督を務めていたこと。

堤監督の作品と言えば、『トリック』や『 SPEC 』『20世紀少年』など、比較的エンタメ色の強い映画を撮る方という印象でした。

緻密な作品構成複雑な人間模様を巧みに表現している東野圭吾作品の実写映画化となる本作で、豪華キャスト陣と堤幸彦監督がどのように作品を彩るのか注目です!

『人魚の眠る家』(2018)のあらすじ

播磨薫子と瑞穂:播磨和昌と播磨薫子:(C)2018「人魚の眠る家」 製作委員会

2人の子を持つ播磨夫妻は夫の不貞で現在別居の状態に。しかしそんなある日、愛娘の瑞穂が不慮の事故により意識不明になってしまう。

回復の可能性は極めて低いため医者からは「脳死」を宣告され、臓器提供の提案も受けるが、夫婦は話し合いを重ねた末に延命治療を選択。

やがて夫である和昌は、自身が社長を務める会社の最新技術を駆使した類を見ない延命治療を決断するが、その決断が親子の悲劇を招くことになる……。

「脳死は本当の死か?」重すぎるテーマに真っ向から切り込んだ衝撃作。

『人魚の眠る家』(2018)の3つの衝撃

播磨薫子:(C)2018「人魚の眠る家」 製作委員会

”実写化不可能”と囁かれた重いテーマ

本作は原作者の東野圭吾自身が「重い」と口にするほどの難しいテーマが扱われており、とても考えさせられます。

篠原涼子が演じる狂気

本作で最も印象に残る部分は、篠原涼子が観せる狂気の芝居。

「アンフェア 」など”強くてカッコイイ”女性を演じることが多かった篠原涼子ですが、本作ではこれまでと全く違うシリアスな一面を見せてくれます。

切なすぎるラスト・結末

本作を鑑賞している間、観客は常に難しい選択を疑似体験することになります。

そして結末は切なく、深く考えさせられる内容です。

【ネタバレあり】『人魚の眠る家』(2018)の感想と考察

我が子を抱きしめる播磨薫子:(C)2018「人魚の眠る家」 製作委員会

映画を観終わった率直な感想としては、複雑なストーリーに引けを取らない役者の迫真の演技に引き込まれ、満足することができました。

題材が題材であるため、終始重いトーンではありますが、「死とはなにか」「愛とはなにか」という人間にとって普遍的かつ難解なテーマに真摯に向き合った良作だといえます。

それでは詳しく感想を書いていきます。

結末の伏線となるプロローグ

本作の冒頭は、1人の少年が民家に誤って野球の球を投げ入れてしまい、庭で車椅子に座ったまま静かに眠る少女(瑞穂)を見つける場面から始まります。

この部分だけで冒頭は終了するのですが、この冒頭シーンが何やら意味深。

野球の球を民家に投げ入れるという定番の展開を取り入れながらも、美しく少女を映し出していることが特徴的です。

結果的に映画のラストで再度この少年が登場し、物語の核心へ繋がるわけですが、これから起こる切ない結末を示唆するプロローグに引き込まれました。

夫婦がすがり付いた希望

離婚寸前の夫婦に訪れた悲劇が、娘(瑞穂)の不慮のプール事故。

これによって娘は「脳死状態」の可能性が高いという厳しい現実が突き付けられるのです。

脳は機能していない、でもまだ心臓は動いているという状況に置かれた娘に対し、自分が親の立場ならと想像するだけでも胸が苦しくなってしまいます。

娘が再度、意識を取り戻すのではないかという期待を抱かざるをえない親心と絶望的な現実が交錯していく展開。

娘の臓器提供をするか否かの判断を迫られたシーンは観ているだけで、胸が締め付けられました。

親としての苦悩と同時に、事故が起きてから僅かな時間で家族に辛い選択を提示する医師の苦悩を描いたシーンでもありました。

結果的に一度は同意するものの、瑞穂の指が一瞬反応した瞬間を偶然見た薫子(篠原涼子)は、周りの説得をよそに延命することを決断します。

例え可能性は低くても「娘は生きている」という希望を抱きたい妻と、それを尊重することで自身の精神バランスを保ちたい夫、和昌(西島秀俊)。

ある意味でエゴとも捉えられかねない二人の決断ですが、夫婦が目に見えない”何か”に必死にすがり付いているように見えた場面でした。

どんなに可能性が低くても信じなくては叶わないといことを描き出したシーンでもあったように思います。

技術者のエゴ

瑞穂は人間の呼吸を補助する「横隔膜ペースメーカー」を移植して容体が安定。

さらに、和昌の会社の部下で技術者の星野(坂口健太郎)が研究する「体に外部から電気信号を流すことで硬直した四肢を操作する」技術を使って体調を急速に回復させていきます。

このサイボーグのようになった瑞穂を描き出されことを境に、物語は悲劇から一転してホラー色を強めることに。

何かに取り憑かれたかの様に娘の看護にのめり込む薫子と「手助け」という名目を盾に研究者としての自尊心を満たしていく星野。

そして2人の異様な様子をみた和昌は、初めて自分達に潜む恐ろしいエゴに気付き始めます。

星野が提唱する技術によって、薫子の欲望ともいえる危う過ぎる「娘は生きている」という希望の灯をともし、その後の暴走へ発展させたことを考慮すると、星野は本作の主題の鍵となる人物だといえるでしょう。

体に電気信号を流すことで瑞穂の体を自在に操り、二人が笑い合うシーンには、同じ人間とは思えない心の冷たさと、そこはかとない恐怖を感じました。

母の暴走と究極の問い

瑞穂を車椅子で連日外へ連れ出したり、弟の入学式に参加させようとした薫子に世間は冷ややかな視線を送り、さらに家族からも次第に孤立します。

「回復した娘を周囲に見せたい」「娘が生きていることを証明したい」と考える薫子の気持ちは理解したい感情であり、同情もしますが、娘は「脳死状態」にあるため、その娘を連れ出す母親に対して恐怖や疑問を抱くのも無理がありません

ある日の瑞穂を巡った薫子と和昌の口論で本作は佳境に。

怒りに満ちた薫子は眠り続ける娘に刃を立て、自ら警察に通報し、駆け付けた警官と戸惑う家族を前に究極の問いを投げかけます。

「脳死状態の娘を殺す私は殺人犯になりますか?」

涙ながらに問いかける篠原涼子の演技は圧巻の一言でした。

これまで感情の起伏を抑えて演技をしていた西島秀俊や他のキャスト陣も堰を切ったように感情をぶつけ合います。

正直このシーンの印象は強烈で、ここだけでもお金を払って観た価値があると感じました。

そして、「生きている」基準は、誰がどうやって何をもって決めるのか?

という究極の質問に対して、本作を鑑賞した後でも明確な解を見いだすことができません。

切ない別れ

薫子が冷静さを取り戻して事態は沈静化。

次第に瑞穂の体に電気信号を流す治療も控えるようになります。

そしてある日の夜、自宅で看護中の薫子は瑞穂が目を覚まして自分に「ありがとう」と囁く夢を見ます。

夢から覚めてすぐに瑞穂の容態は急変。

医師からは延命治療をするかどうかを尋ねられますが薫子が選んだ選択は”娘の死”と”臓器提供”でした。

夢のシーンは、薫子自身の潜在意識の投影で「娘の死を受け入れた」瞬間であると理解はできますが、案外あっさりと娘の心臓を止める決断を下したことには拍子抜けでした。

これまで散々、娘が生きていることに執着してきた薫子を観ていたため、オーディエンス全員がこう思ったのではないでしょうか。

さらに前述の強烈な問いのシーンも呆気にとられる要因の1つでした。

ただ、映画の落としどころを考えるとやはりこういう形に収まるのかなと思います。

介護をする側も精神的に追い詰められていくことは事実であり、何処かで解放されたいと願うことも事実ではあります。

さらに物語の脈絡を不自然にさせないためにも薫子が娘の死を受け入れるという流れが必要だと思いましたし、映画としても間延びしていなかった印象です。

そして最後に冒頭のシーンで登場した少年が再登場。

少年の心臓が瑞穂から移植されたものであることが描かれて切ないエンディングを迎えます

『人魚の眠る家』(2018)のまとめ

播磨和昌:(C)2018「人魚の眠る家」 製作委員会

「脳死」というシリアスで重いテーマを、重厚な人間描写と母の愛の観点から描いた『人魚の眠る家』(2018)。

本作において、

・人間を人間たらしめるものとは何か。

・愛とは何か。

・生きるとは何か。

上記の3点について深く考えさせられました。

難しい題材なだけに安易に答えは出ず、観終わった後に感じる若干の切なさが好き嫌いを分けるかもしれません。

観た人の心に、物語の主題に対する解を思案する時間を作らせる物語の構成、役者の演技を考慮するとかなりの良作だと思います。

東野圭吾ファンや哲学的な作品が好きな方にもぜひ観て頂きたい作品です!

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