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【泣ける家族愛】『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)の評価、社会問題を考察【あらすじ、感想、ネタバレあり】

『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)は末期ガンを患い、余命2~3ヵ月を宣告された女性とその家族を描いた感動のヒューマンドラマ映画です。

日本アカデミー賞6部門を受賞した他にも数々の映画賞を受賞したまさに名作。

宮沢りえと杉咲花の演技が素晴らしく、2人とも数々の映画賞を受賞しました。

タイトル通りの熱い愛で涙する『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)について、あらすじと感想、作品の魅力をネタバレを交えて紹介していきます!

『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)の作品情報


湯を沸かすほどの熱い愛

作品情報

原題:湯を沸かすほどの熱い愛
公開年:2016年
製作国:日本
上映時間:125分
ジャンル:ヒューマンドラマ

監督とキャスト

監督:中野量太
代表作:『長いお別れ』(2019)『チチを撮りに』(2013)

出演者:宮沢りえ
代表作:『紙の月』(2014)『たそがれ清兵衛』(2002)

出演者:杉咲花
代表作:『十二人の死にたい子どもたち』(2019)『トイレのピエタ』(2015)

出演者:オダギリジョー
代表作:『血と骨』(2004)『ゆれる』(2007)

『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)のあらすじ

幸野家:ⓒKLOCKWORX Co.,ltd

夫が蒸発してしまい、幸の湯という銭湯の経営を停止していた双葉はパン屋で働きながら娘の安澄と2人で暮らしていた。

ある日、双葉は仕事中に倒れてしまう。

病院で検査をすると、末期ガンであることが判明し、余命2~3ヵ月を宣告された。

余命が残りわずかだと知った双葉は行動に出る。

イジメを受け、学校に行きたがらない娘の安澄を立ち直らせて学校に行かせるようにし、探偵を使って蒸発した夫を連れ戻し、銭湯を再開させた。

夫の愛人の子供である鮎子も引き取り、4人で済むことになった双葉であったが……。

『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)の感想

幸野双葉:ⓒKLOCKWORX Co.,ltd

熱い愛に感動

『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)は双葉の熱い愛に感動します。

この熱い愛は何かというと、双葉の見返りを求めないgive and give の愛。

特に印象的だったのが娘の安澄に対する愛です。

安澄は学校でイジメを受けており、学校に行こうとしませんでした。

しかし、双葉は「逃げちゃダメ!」と叱咤し、強制的に学校へ行かせようとします。

一見、非情な行動のようにも見えますが、本当に娘を愛しているからこその行動なのではないでしょうか。

娘が可哀想と学校に行かせず、そのまま部屋にこもらせることは簡単にできます。

しかし、それでは安澄はいつまで経っても変わりませんし、最悪の場合はずっと引きこもりに。

双葉の行動は娘の今だけでなく、将来のことも考えての行動だったと言えます。

結果的に安澄は強い心でイジメを克服。

双葉の娘に対する熱い愛が実ったのです。

本作は、この他にも双葉の熱い愛を感じ取れるシーンがたくさんあるので、ジーンと胸を熱くしてください!

熱い愛は周りを変えていく

双葉の熱い愛は周りも変えていきます。

前述しましたが、双葉はイジメを受けていた安澄を立ち直らせました。

また、最初は全くなつかなかった夫と愛人の子供である鮎子も双葉と過ごすうちに、だんだんとなついていきます。

その原因はやはり、見返りを求めない愛。

特に双葉の家族愛には感動です。

双葉の自分よりも相手のことを思いやる心は、とても見習うべき点がたくさんありました。

自分が可愛くて、他人よりも自分を優先させてしまう人もきっと多いのではないでしょうか。

しかし、双葉はそうではありませんでした。

自分より相手を大切にする。

その心は結果的に多くの人から愛され、与えられる人生になるし、多くの人から見守られる最期にもなるのです。

【ネタバレあり】『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)の疑問を解説

幸野双葉と向井拓海:ⓒKLOCKWORX Co.,ltd

『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)の受賞歴は?

冒頭でもふれましたが、『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)は日本アカデミー賞6部門を受賞した他にも数々の映画賞を受賞しました。

作品賞をはじめ、個人では監督の中野量太 、主演の宮沢りえと娘役の杉咲花が多くの映画賞を受賞しています。

本作の主な受賞歴をあげていきましょう。

作品
・日本アカデミー賞優秀作品賞
・報知映画賞作品賞
・日本映画批評家大賞作品賞
中野量太
・日本アカデミー賞優秀監督賞
・日本アカデミー賞優秀脚本賞
・報知映画賞新人賞
・高崎映画祭最優秀監督賞
・ヨコハマ映画祭監督賞
・日本映画批評家大賞監督賞
・新藤兼人賞金賞
宮沢りえ
・日本アカデミー賞最優秀主演女優賞
・報知映画賞主演女優賞
・日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞主演女優賞
・高崎映画祭最優秀主演女優賞
・日本映画批評家大賞主演女優賞
・東京スポーツ映画大賞主演女優賞
杉咲花
・日本アカデミー賞最優秀助演女優賞
・日本アカデミー賞新人俳優賞
・報知映画賞助演女優賞
・ブルーリボン賞助演女優賞
・高崎映画祭最優秀新進女優賞
・ヨコハマ映画祭助演女優賞
・日本映画批評家大賞助演女優賞
・東京スポーツ映画大賞新人賞

以上、『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)の受賞歴でした。

監督と役者が一体となってつくり上げた素晴らしい映画だったといえます。

『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)のロケ地は?

『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)のロケ地は栃木県足利市を中心に、東京、埼玉、静岡の各所で撮影されています。

本作のメインとなる銭湯は栃木県足利市と東京の2カ所がロケ地となりました。

東京都文京区にある月の湯という銭湯と栃木県足利市にある花の湯という銭湯です。

主に銭湯の内部は月の湯で、外部や釜場は花の湯で撮影。

残念ながら2015年に月の湯は廃業してしまいました。

安澄ちゃんのお母さんの酒巻と安澄ちゃんが離れ離れになった理由とは?

安澄の母である酒巻と安澄が離れ離れになったのはなぜでしょうか。

安澄の実母、酒巻君江は耳が不自由で手話でしか意思の疎通ができません。

耳が不自由だったために、1人では子供を育てることも困難であり、安澄を手放したのではないでしょうか。

どんな理由があれ、我が子を手放した酒巻が許せず、自分の境遇も重なり双葉は酒巻をビンタしたのだと思います。

なぜ批判された?『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)と社会問題

幸野安澄:ⓒKLOCKWORX Co.,ltd

作品としても日本アカデミー賞優秀作品賞をとるなど、映画レビュー・口コミでも評価の高い『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)ですが、中には批判の声も上がっています。

この映画を評価してる人って、虐めやネグレクトを肯定してるとしか思えない。それか昭和の教育思想で思考停止してる?

問題は双葉が学校に行きたがらない安澄をなんとか登校させようとしたことです。

感想でも書きましたが、本当に娘を愛しているからこその行動なのではないでしょうか。

双葉はもう自分が死んでいなくなることが分かっていたから、自分のいない将来のことも考え、生きているうちになんとか安澄を独り立ちさせたかったのだと思います。

それに安澄をそのままにしていたら、双葉のたくましさや熱い愛を表現することができませんし、勇気をふりしぼって母のようにたくましくなっていく安澄を描けません。

双葉は決してネグレクトではないでしょう。

“見守る”と“放置”は違います。

・朝ご飯を食べないで学校へ行った安澄を心配して牛乳を持たせた

・安澄を心配して表でずっと待っていた

・制服を取り戻した安澄を「頑張ったんだね」と言って熱く抱きしめた

この3点からだけでも、社会問題として取り上げられるネグレクトとは異なることが分かります。

他にも安澄や鮎子を思いやる双葉の行動はたくさんあります。

少し行き過ぎた行動もありますが、それが双葉の“らしさ”であり、“熱い愛”なのではないでしょうか。

【ネタバレあり】『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)の最後は? ラストシーンや結末を解説

安澄、鮎子、拓海:ⓒKLOCKWORX Co.,ltd

『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)の最後は、亡くなった双葉の遺体で炊いた湯に皆で浸かるというラストになっています。

予想外といってもいいラスト。

少々、突飛ではありますが、双葉の人柄や家族愛、オリジナリティを感じられるラストで良かったと思います。

そもそも本作は「末期ガンで余命あとわずか。さあ、どうする?」という感動ものやヒューマンドラマにはありがちな設定。

だからこそ、本作にしかないアイデアを出せなければ、その他の“難病で余命わずか系の映画”と一緒になってしまい、予想通りの展開になってしまいます。

ユーモアのあるオリジナルを出せた点ではとても評価のできるラストだったと思います。

『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)の評価

幸野双葉:ⓒKLOCKWORX Co.,ltd

『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)はどのような評価がなされているのでしょうか。

映画レビューサイトでのレビューをいくつかまとめると、

・「観賞してから何日もたつのに、思い出すだけで涙腺がゆるみそうになるシーンがいくつもある」
・「家族の深い話。泣けました!宮沢りえ、最高でした」
・「いつ死ぬかわからないからこそ、後悔しないように生きよう!と思わせてくれた作品でした」

など、絶賛のレビュー多数!

やはり「感動する」「泣ける」というレビューが多く、宮沢りえや杉咲花の演技を評価するレビューも多かったです。

日本のレビューサイトの点数は5点満点中4.0という高評価に。

Twitterでも好きな邦画として、よく名前があがる作品になっています。

『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)のまとめ

幸野一浩:ⓒKLOCKWORX Co.,ltd

熱い愛で感動を生んだ『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)。

特に双葉の深い家族愛にはとても感動しました。

宮沢りえと杉咲花の演技はもちろん、他の役者の演技も良かった!

口コミや映画賞の実績から見ても本作が素晴らしい作品であることは間違いないでしょう。

これからも邦画の名作として語り継がれていく作品であって欲しいです。

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