
『グエムル-漢江の怪物-』(2006)は、有害廃棄物から生まれた怪物と戦う家族を描いた韓国のモンスター・パニック映画です。
監督は『パラサイト 半地下の家族』(2019)で世界的に注目を集めることになるポン・ジュノ監督。
韓国では歴代観客動員数第6位を記録する大ヒットとなり、青龍賞、大鐘賞(共に韓国の映画賞)で最優秀作品賞を獲得するなど、様々な映画賞を受賞しました。
怪物に約50億ウォン(約6億円)かけたという『グエムル-漢江の怪物-』(2006)について、感想や考察、作品の魅力をネタバレを交えて紹介していきます!
目次
『グエムル-漢江の怪物-』(2006)の作品情報
グエムル-漢江の怪物- スタンダード・エディション [DVD]
作品情報
原題:괴물
公開年:2006年
製作国:韓国
上映時間:120分
ジャンル:パニック、ホラー
監督とキャスト
監督:ポン・ジュノ
代表作:『パラサイト 半地下の家族』(2019)『殺人の追憶』(2003)
出演者:ソン・ガンホ/吹替: 山路和弘(パク・カンドゥ)
代表作:『パラサイト 半地下の家族』(2019)『スノーピアサー』(2013)
出演者:ペ・ドゥナ/吹替:竹田まどか(パク・ナムジュ)
代表作:『リンダ リンダ リンダ』(2005)『空気人形』(2009)
出演者:コ・アソン/吹替:三村ゆうな(パク・ヒョンソ)
代表作:『スノーピアサー』(2013)『優しい嘘』(2014)
『グエムル-漢江の怪物-』(2006)のあらすじ

怪物から逃げる人々:ⓒShowbox Co., Ltd.
大量のホルムアルデヒドを漢江に流したことで怪物が誕生する。
人々は好奇心から河川敷で川に潜む怪物を見物していたが、やがて怪物は上陸。
怪物は人々を襲い始め、パニックに。
暴れまわり、人々を捕食していたが怪物であったが、カンドゥの娘、ヒョンソを捕らえると水中に消えてしまう。
カンドゥはヒョンソを救おうと水中に飛び込むが、助けることはできなかった。
怪物に殺されたと悲しみに暮れるカンドゥとその家族。
しかし、カンドゥの携帯電話にヒョンソから電話があり、彼女が生きていると知ったカンドゥと家族はヒョンソの救出に向かう。
『グエムル-漢江の怪物-』(2006)の感想と考察

カンドゥ、ヒボン、ナミル:ⓒShowbox Co., Ltd.
パニック×ファミリー映画
『グエムル-漢江の怪物-』(2006)は両生類のような怪物が暴れまわって人々を襲うというパニック映画になっています。
特に注目していただきたいのは冒頭のシーン。
怪獣が暴れて人々を襲うモンスター・パニック映画の醍醐味といっても良いシーンになっていました。
また、ラストシーンも怪獣との対決があるので、注目。
「倒すか?」「食われるか?」の緊張感あるシーンになっていて、楽しめます。
ただ、残念な点もあって、怪獣という割にはスケールが小さく、CGもちょっと雑であり、怪獣が暴れまわるシーンもそれほど多くはありません。
怪獣映画(怪獣を倒すこと)に焦点を当てて観てしまうと、つまらなく感じてしまうかもしれませんが、家族映画として観れば面白く観られます。
ちなみにポン・ジュノ監督はインタビューで以下のように語っています。
グエムルと一番戦えそうにない、戦うという行為が似合わない駄目な家族にしようと。それこそがこの映画のドラマの核心部分だと思いました
ちょっとダメな家族、パク一家が正体不明の怪獣に力を合わせて立ち向かう。
その点をぜひ楽しんでみてください。
ポン・ジュノ監督が描きたかったこととは?
『グエムル-漢江の怪物-』(2006)を通して、ポン・ジュノ監督が描きたかったことは何なのでしょうか。
その点についてポン・ジュノ監督は、インタビューで以下のように語っています。
私が今回描きたかったのは、グエムルという怪獣そのものではなく、グエムルという怪獣が登場したことがきっかけとなって起こる、人々の反応だったのです。だから、グエムルが特定の何かを象徴しているということではないんです
人々の反応、つまりポン・ジュノ監督は、人々の感情を描いたのではないでしょうか。
怪獣が登場したことがきっかけとなって起こる、悲しみや怒り、絶望、恐怖……。
そういった人間のリアルな感情を描いたのだと思います。
また、本作には反米的な風刺もあるのだとか。
大量のホルムアルデヒドを漢江に流したことや、本作で使われる「エージェント・イエロー」という兵器は、アメリカがベトナム戦争で使用した枯葉剤「エージェント・オレンジ」に掛けていることなどです。
エンターテイメントとして楽しませつつ、社会風刺も取り入れる。
ポン・ジュノ監督の才能がなせる業でしょう。
【ネタバレあり】『グエムル-漢江の怪物-』(2006)はパクリ? 両者の比較とひょう窃疑惑について解説

ヒョンソ:ⓒShowbox Co., Ltd.
『グエムル-漢江の怪物-』(2006)の『WXIII 機動警察パトレイバー』パクリ疑惑を解説
『グエムル-漢江の怪物-』(2006)には、日本のアニメーション映画『WXIII 機動警察パトレイバー』のパクリ疑惑があり、怪物やストーリーの類似が指摘されています。
具体的な点を挙げていくと、
などの類似点が。
日韓の映画関連サイトを中心に、「似てる」「似てない」の論争が勃発していたのですが、日韓の映画関係者はこれらのパクリ疑惑を否定しています。
『グエムル-漢江の怪物-』(2006)の『WXIII 機動警察パトレイバー』との比較
本作に出てくるグエムルと『WXIII 機動警察パトレイバー』の怪物のデザインは、両生類のような姿が確かに似ています。
また、炎で焼かれて怪物が死ぬラストシーンについても似ています。
しかし、パクリというには疑問が。
個人的な見解としては、似ている点はほんの一部分であり、パクリとは言い難いと思います。
『WXIII 機動警察パトレイバー』ファンのこじつけなのではないかと。
この程度をパクリというのならば、ほとんどの作品がパクリ映画になってしまうのではないでしょうか。
ただ、パクリなのか、オリジナルなのか、真相は映画製作者にしか分かりません。
【ネタバレあり】『グエムル-漢江の怪物-』(2006)の最後は? ラストシーンや結末を解説

ナムジュ:ⓒShowbox Co., Ltd.
ラストシーン、結末を解説
『グエムル-漢江の怪物-』(2006)の最後は、パク家族が連携して怪物を倒します。
その後、カンドゥがヒョンソといた少年を引き取り、一緒に住むというラスト。
パク家族が連携して怪物を倒すシーンはシビれました。
特にナムジュがアーチェリーの矢を使って、怪物を炎に包むシーンがカッコイイ!
情けないパク家族が勇敢に戦うラストシーンは必見です。
ラストでヒョンソはどうなった?
ラストでヒョンソは死んでしまいました。
生きているという説もあるようですが、死んだと考えるのが妥当なのではないでしょうか。
・カンドゥ、ナミル、ナムジュがヒョンソを抱えて泣いた(死んでしまったからではないか)
・最後でカンドゥがヒョンソと暮らしていなかった(ヒョンソがいない)
以上の点からヒョンソは死んでしまったと考えられます。
『グエムル-漢江の怪物-』(2006)の続編『グエムル2』の製作決定
『グエムル-漢江の怪物-』(2006)の3年前の出来事を描いた続編が製作されると言います。
なお、本作で監督を務めたポン・ジュノ監督は続投しないとのこと。
作品の構成としては、グエムルの3年前、ソウル市内を流れる清渓川を舞台にした、複数の怪物が登場する怪獣映画になると言います。
しかし、この報道があったのは、2008年。
10年以上経っても、公開されたという情報はありません。
何らかの事情で製作・公開が遅れているのでしょう。
【レビュー】『グエムル-漢江の怪物-』(2006)の評価・評判

怪物に連れ去られるヒョンソ:ⓒShowbox Co., Ltd.
【つまらない?】低評価のレビュー
『グエムル-漢江の怪物-』(2006)にはどのような低評価があるのでしょうか。
低評価のレビューを見てみると、
・ただ、面白いという感情にはならなかった。後味もあまり良くない
・チープさをどうしても感じてしまった
という低評価レビューがありました。
目立っていたのがB級というワード。
やはり怪獣に焦点を当ててしまうとつまらなく感じてしまうようです。
【面白い?】高評価のレビュー
『グエムル-漢江の怪物-』(2006)にはどのような高評価があるのでしょうか。
高評価のレビューを見てみると、
・作品自体はテンポも良くて最後まで飽きさせない、一気にラストまで観ることができました
・怪物よりも人間模様が面白く、一級のエンターテインメントに仕上がっている
という高評価がありました。
日本のレビューサイトの点数は5点満点中3.2という評価に。
低評価なレビューはそれほどありませんが、レビュー点数は低い結果になりました。
この点から分かることは、可もなく不可もなくという平均的な評価でしょうか。
つまらなくもないが、かといって傑作と言えるほど面白くはない。
ポン・ジュノ作品の中では高い評価ではありませんが、あまり難しいことを考えず、家族映画として観れば、十分楽しめる作品だと思います。
『グエムル-漢江の怪物-』(2006)のまとめ

ヒョンソとヒボン:ⓒShowbox Co., Ltd.
ポン・ジュノ監督が描いたモンスター・パニック映画『グエムル-漢江の怪物-』(2006)。
怪獣映画というよりも家族映画として楽しめる作品になっていました。
また、風刺を効かせている点はポン・ジュノ作品らしさが出ています。
『パラサイト 半地下の家族』(2019)でポン・ジュノ監督を知ったという方も多いと思うので、ぜひ本作も観てください!