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七人の侍_感想・考察

『七人の侍』(1954)は、世界的に高く評価されている名作時代劇

監督は『羅生門』(1950)や『生きる』(1952)などの名作でも名高い日本映画の巨匠・黒澤明

『スター・ウォーズ』シリーズのジョージ・ルーカス監督や、『未知との遭遇』(1977)のスティーヴン・スピルバーグにも、多大な影響を与えた歴史的傑作です。

先日発表された英国映画協会(BFI)による1925年以降の優れた日本映画95本にも選ばれるなど、今もなお愛され続けている本作

今だからこそ観ておきたい『七人の侍』(1954)について、感想と考察、評価を交えて紹介していきます。

【『七人の侍』(1954)の評価】

項目 評価 点数
知名度 ★★★★☆
80点
配役/キャスト ★★★★☆ 80点
ストーリー ★★★★★ 90点
物語の抑揚 ★★★★☆ 80点
ドラマ性 ★★★★★ 95点
ワクワク度 ★★★★★ 90点

目次

『七人の侍』(1954)の作品情報


七人の侍

製作年 1954年
英題 Seven Samurai
製作国 日本
上映時間 207分
ジャンル 時代劇
監督 黒澤 明
脚本 黒澤 明、橋本 忍、小国 英雄
主要キャスト 三船敏郎

志村喬

津島恵子

藤原釜足

『七人の侍』(1954)の概要

遠くを眺める七人の侍たち©東宝

戦国時代終盤のとある農村

野武士たちの襲撃に怯える農民たちは彼らの生活を守るために、食料を供給することを条件として村に侍を雇うことを決意。

凄腕の浪人・権兵衛を協力者に迎え入れたことを皮切りに、結果として7人の武士たちを集めることに成功した

権兵衛の提案から村の地形を活かして共に戦うことになった村人たちは、身分の異なる侍たちと時に衝突しながら、野武士たちとの戦いに挑むことに……。

『七人の侍』(1954)の感想と考察

民衆に囲まれる菊千代©東宝

魅力的なキャラクターによるアクション活劇

本作の見どころは、何と言っても魅力的なキャラクターといえるでしょう。

まるで「週刊少年ジャンプ」のごとく個性豊かなキャラクターたちが次々と集められていく展開は、まさしく人気マンガ『ワンピース』の原点。

60年以上前に作られた日本映画でありながらも未だに色あせない面白さを誇っているのは、長尺を感じさせないほど登場人物たちが観客の興味を引き付けるからなのです。

時代背景を汲んだ骨太な物語

分かりやすいアクション活劇としての面白さのみならず、身分格差を描いた骨太な物語も本作を語るうえで欠かせないポイントといえるでしょう。

戦国時代という日本特有の歴史背景を軸に「武士と農民での貧富の差」を描いた物語は、他国では描けない独自の視点を生み出しています。

一方で、容易に理解することの出来ない人々が力を合わせて同じ敵と戦う展開は、世界中の人々を深く共感させ、興奮させる要素といえるのです。

『七人の侍』(1954)の脚本としての面白さ

『七人の侍』(1954)の脚本は観客を飽きさせない構造になっています。

物語前半では個性豊かな登場人物を紹介することで時間の大半を割いている一方で、後半はいかに敵と戦うのかという戦略の部分と迫力のある合戦を中心に描いていきます。

このように前半と後半でかなり方向転換がなされた物語展開は、207分という長尺を感じさせない工夫が凝らされているのではないでしょうか。

また、脚本の執筆段階から、かなりの労力がかけられていた部分にも着目すべきかもしれません。

多くの史実を参考にしながらリアルな物語作りを目指したことや、黒澤監督が作品の根底に名作文学『戦争と平和』を踏まえていると公言したことなど、その深みこそが秀逸な物語を生み出したといえるのです。

『七人の侍』(1954)の登場人物と主要キャストを解説

志村喬/しむら たかし(島田勘兵衛)

出典:www.google.fr

農村の子供を盗人から救ったことで、農民に「野武士から村を守ること」を依頼された僧侶のような浪人

常に冷静沈着な戦略家ゆえに最初こそ村人の頼みを断っていたものの、百姓の熱い思いに突き動かされ、村の地形を生かした集団戦法を思いつく。

最後まで生き残った彼は「勝ったのは、あの百姓たちだ。わしたちではない。」という名言を残す。

三船敏郎/みふね としろう(菊千代)

出典:www.google.fr

勘兵衛の活躍を目撃し、彼を追い回したのち、ともに戦うことになった出自不明の男

豪快で粗野な性格ではあるが、悲しい過去を持っており、劇中では最も野武士を倒した最強の男でもある。

終盤、銃弾に倒れたが決死の覚悟で相手を刺し殺し、討ち死にする。

木村功/きむら いさお (岡本勝四郎)

出典:www.google.fr

勘兵衛の姿を見て、彼と行動を共にすることになった浪人

裕福な家庭に育っていたが、家を飛び出して旅をしている

新米の武士であり、村人の娘である志乃とは恋に落ちてしまう。

終盤の決戦で久蔵の仇討ちを決意するが、菊千代に制されたことで、結果として一命を取りとめた

稲葉義男/いなば よしお(片山五郎兵衛

出典:www.google.fr

勘兵衛が仲間を集めるために行った腕試しで見事に仕掛けを見破り、協力することになった浪人。

落ち着いた性格ゆえに人をなだめることが上手く、メンバーのムービーメーカーでもある。

終盤の合戦では日暮れを待たず、野武士による襲撃によって、あえなく命を落としてしまう

加東大介/かとう だいすけ(七郎次)

出典:theincrediblesuit.blogspot.jp

かつて、勘兵衛の部下だったこともある武士。

そのため、彼と再会して即座に戦いに協力することを快諾した。

終盤の戦いでは何とか生き延びる

千秋実/ちあき みのる(林田平八)

出典:www.google.fr

お茶屋で薪割りをしているところを五郎兵衛にスカウトされた浪人

どんな状況でも冗談を絶やさない明るい性格で、メンバーを盛り上げる。

終盤の戦いでは農民の利吉を気遣ったことで、野武士に狙撃され、最初の犠牲者となる。

宮口精二/みやぐち せいじ(久蔵)

出典:www.google.fr

勘兵衛のスカウトを1度は断ったものの、気が変わって加わった凄腕の剣客

口数が少なく、冷酷なイメージを思わせる一方、その言動からは優しい性格であることが垣間見える。

終盤の戦いでは小屋に隠れていた相手側の首領から凶弾を受け、絶命してしまう

『七人の侍』(1954)の疑問を解説

勘兵衛の後ろ姿©東宝

七人の侍が集まったのはなぜ?

七人の侍が集まったのは、野武士に襲われる農村を救うため

大した予算もない農民は、食料を分け与えることを条件に勘兵衛を説得します。

その結果、腕利きの勘兵衛に引き寄せられる形で七人の侍が集まることになったのです。

なぜこの七人なのかを解説

この七人が集まったことに深い理由はなく、偶然であるのが有力です。

しかし、それにしては、あまりにもキャラクターの個性が見事に分かれており、マンガ的ともいえる役割分担はご都合主義と言われてしまうかもしれません。

菊千代が家系図を盗んだのはなぜなのか解説

菊千代が家系図を盗んだのは、他の武士たちに自分が武士であることを信じさせようとしていたからです。

しかし、家系図に書かれた菊千代は13才であり、嘘はそうそうに見破られてしまいました

ちなみに、菊千代という名前もそこに書かれていた偽名であるため、彼の本名は不明

戦火によって親を殺された農民だったという彼の正体からも分かる通り、彼に本名はなく「名無しの権兵衛」といえる存在なのです。

武士が百姓と恋愛できなかったのはなぜかを解説

武士が百姓と恋愛できなかったのは士農工商の制度が理由といえるでしょう。

本作の舞台となっている時代は、太閤検地と刀狩りの間となる1586年

武士と百姓が明確に分離され、原則的に武家の人間と町民との婚姻は禁止されていた時期とも言われています。

ちなみに、勝四郎は浪人として武家から離れていため、彼が望めば、愛する村人の志乃と結ばれた可能性も考えられます。

しかし、終盤、勝四郎とすれ違った志乃が、彼を忘れるように田んぼへと走り去った描写を考えると、愛ゆえにお互いの立場を尊重したからこそ、結ばれることはなかったと推測されます。

刀を地面に刺して戦うのはなぜなのかを解説

刀を地面に刺して戦うのは切れ味を落とすことなく、戦いの精度を上げるためです。

劇中で「刀一本じゃ、五人も斬ればいいほうだ」と菊千代が発言していたように、刀の力を最大限に生かすためには状態の良いものを使うことが要求されます。

そのため、切れ味の良い新しい刀を地面にさしておくことで、それぞれを取り替えながら戦うという戦法が実現したのです。

ちなみに、刀の切れ味が落ちる原因としては戦いによって付着する血糊が、よく言及されますが、これは有名な間違い

近年の研究によると、実際には甲冑をつけた相手と戦った際に起きる刃こぼれが理由と言われています。

『七人の侍』(1954)のロケ地、舞台や時代背景を紹介

暴れ狂う騎馬©東宝

『七人の侍』(1954)のロケ地を解説

『七人の侍』(1954)の撮影地は大きく分けて、3か所。

東宝撮影所と、付近の田園(現:世田谷通り大蔵団地前)に作られた巨大な村のセット、そして、伊豆から箱根にかけての各地の山村だったそう。

また、山村でのロケーション撮影ではセットと同様に村の一部を建設したほか、撮影に邪魔だった電柱を撤去したというエピソードも有名です。

『七人の侍』(1954)の舞台・時代背景を解説

『七人の侍』(1954)の舞台は、1586年のとある農村

まさしく戦国時代の真っ只中といえる設定で、史実では豊臣秀吉が天下を統一し、徳川家康が臣下となったタイミングです。

『七人の侍』(1954)の撮影方法・撮影期間を解説

撮影スタッフ©東宝

『七人の侍』(1954)の撮影方法

本作の撮影には、様々な逸話があります。

複数のカメラで同時収録を行ったマルチカム方式の撮影や、雨を際立たせるために採用された墨汁を使ったクライマックスシーン、積雪を溶かしたことで泥濘になったロケ地での撮影などなど。

とりわけ、すさまじいエピソードは撮影中にオープンセットが火事で焼失してしまったこと。

この件で、数人の関係者が火ぶくれなどの火傷を負ったほか、撮影に使っていた大量の馬も綱を切り、逃げてしまったそうです。

『七人の侍』(1954)の撮影期間

『七人の侍』(1954)の撮影期間は約1年

1953年5月末に撮影が行われた本作は同年の秋公開に向けて撮影が続けられていたものの、期間が伸び続け、いつしか年末に……。

これに我慢できなくなった東宝本社は強制的に撮影をストップさせ、撮影が終了した部分のみで完成させることを制作陣に要求します。

しかし、この本編は終盤が見事に撮影されておらず、重役が集まった試写会では「続きを観たい!」という声が続出。

結果的に追加予算が決定したことで、一年がかりの撮影が決行されました。

海外や後世へも影響を与えた『七人の侍』(1954)を元にしたリメイク・オマージュ作品を解説

『荒野の七人』(1960)

『七人の侍』(1954)の設定を、西部開拓時代のメキシコに変更した名作西部劇

後に第4作までが作られる人気シリーズとなり、さらなるリメイク作品も作られた。

原作自体が、そもそもジョン・フォードの西部劇に影響を受けて作られた作品であるため、ある種、逆輸入的な要素を持った一作ともいえる。

『マグニフィセント・セブン』(2016)

『荒野の七人』(1960)をさらにリメイクした近年のハリウッド版

『エンド・オブ・ホワイトハウス』(2013)や『イコライザー』シリーズなどのガンアクション映画を得意とするアントワーン・フークア監督がメガホンをとっている。

基本的なストーリーは原作に忠実でありながらも、ところどころに本作のオリジナルである変更点もみられる。

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)

黒澤作品に強い影響を受けて生まれた『スター・ウォーズ』シリーズ。

その中でも、最も『七人の侍』(1954)の影響がみられるのが本作。

こちらの動画でも公式に明言されているように『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)では、仲間を集めていく展開や豪雨のシーンなど類似点が多数

名もなきならず者たちが強大な悪と戦っていく物語は『七人の侍』(1954)における武士と農民たちのスピリットを見事に受け継いだ設定といえるのかも……。

『七人の侍』(1954)の最後は? ラストシーンや結末を解説

墓前に立つ男たち©東宝

『七人の侍』(1954)の結末・ラストシーン

地形を活かした見事な戦略で農民と協力し、野武士たちに立ち向かった七人の侍

しかし、激しい戦いの末、彼らは、一人また一人と命を失っていく…。

長きに渡る戦いを経て生き残った勘兵衛七郎次勝四郎の三人は今回の勝利という結果が「武士」によってではなく、「農民」たちの結束あってのものだということを実感し、物語は幕を閉じる。

『七人の侍』(1954)のその後は?

『七人の侍』(1954)で生き残った三人の侍は、その後、どうなったのでしょうか。

これまでも浪人として旅を続けてきた勘兵衛七郎次は、今後もその生きざまが変わることはないように思えましたが、やはり、気になるのは勝四郎の将来

彼は終盤の戦いを経て、なんとか生き残ることができましたが、その後、愛する農民の娘・志乃が農民としての生活を選んだことを理解します。

この事実から考えると、彼女への思いを簡単に断ち切ることが出来ないであろう彼は「武士の男」として新たな道を歩み始めるのではないでしょうか。

【レビュー】『七人の侍』(1954)の評価・評判

先を見つめる男たち©東宝

【つまらない?】低評価のレビュー

本作を批判する意見には、以下のようなものがあります。

『七人の侍』(1954)の低評価レビュー
Filmarks:★☆☆☆☆ 1.0
「約3時間の上映時間に加え、おまけに日本語が聞き取れない。ただ、いろんなことの勉強になったので、いつか必ず再鑑賞しよう。」
映画.com:★☆☆☆☆ 1.0
台詞が聞き取り辛いのは古いので仕方ないですが、3時間半は長すぎるし和んでいるシーンも多く、誰も攻め込んでこないしそこら中で民衆が死んでいるわけではないので差し迫った感じがなく、あまり緊張感がないです。
Rotten Tomatoes(海外の評価):★★☆☆☆ 2.0
「最高峰のアクションシーンといえる最終決戦までとばした。本作の穴は、人間である悪役のリアリティが欠けているところだ。」

これらの意見を読むと、近年の映画を観慣れている人にとっては長時間であることが疲れる要因になっていたり、人物描写の描き方に物足りなさを感じているようにも思われます。

【面白い?】高評価のレビュー

一方、本作を賞賛する意見には以下のようなものがありました。

『七人の侍』(1954)の高評価レビュー
Filmarks:★★★★★ 5.0
「日本の遺産、日本の誇るべきもの、そして越えられない日本作品なのではないでしょうか。」
映画.com:★★★★★ 5.0
あれが200分の映画だとは思えない!中弛みもなく、あっという間のエンターテイメント。
Rotten Tomatoes(海外の評価):★★★★★ 5.0
「比類なき傑作!」

これらの意見をまとめると、登場人物や展開が楽しめるか否かで本作の感想は180度変わるといえるのかもしれません。

海外の反応は…?

『七人の侍』(1954)の海外での評価は以下の通り。
『七人の侍』(1954)の評価・受賞歴
・ヴェネツィア国際映画祭(1954) 銀獅子賞
・英国映画協会『Sight&Sound』批評家が選ぶ史上最高の映画ベストテン(1982) 第3位
・トロント国際映画祭 エッセンシャル100(2010) 第6位
・『エンパイア』史上最高の外国語映画100本(2010) 第1位
・BBC史上最高の外国語映画ベスト100(2018) 第1位

また、この他にも海外のレビューサイトで見受けられる評論家の意見からは、

『七人の侍』(1954)を観た評論家の意見
「『七人の侍』は、世界一偉大なフィルムメーカーが渾身の力で作り上げた忘れがたき傑作。」
「これまで作られた”戦士”と”戦い”を描いた映画の中では、一番の出来。」
「(監督の)黒澤は、観客である私たちに、リアルな身体感覚と共に何度も何度も深いスリルを味わわせてくれる。」

といった絶賛の意見があふれています。

『七人の侍』(1954)の総合評価:数多くの名作に影響を与えた娯楽映画の真髄

勘兵衛と菊千代©東宝

ここまでの内容からも分かる通り、様々な作品に影響を与えた本作は、それらのエッセンスが凝縮された娯楽映画の真髄といえる一作です。

長尺映画という特性ゆえに観るまでのハードルはかなり高いと思われますが、自宅で簡単に作品を鑑賞することが出来る現代だからこそ観てほしい名作。

一部と二部に分かれているので二日間に分けて観るのもよし、在宅時間が増えている今だからこそ挑戦するのもよし。

ぜひとも興味を持った方には、少しでも早く観てほしい日本映画の傑作です。

『七人の侍』(1954)はエンドロール後に本編はある?

構える菊千代©東宝

本作は1954年に作られた日本映画

そのため現代のように本編後にエンドロールが流れることはなく、オープニングにクレジットが流れる形式になっています。

この作品を見た人におすすめ

『バグズ・ライフ』(1998)


現在でも根強い人気を誇るピクサー・アニメーション・スタジオが製作した、初期の長編アニメ作品。

一見、『七人の侍』(1954)とは程遠い印象を受ける本作ですが、物語の本筋を考えると、かなり展開が類似しています。

悪いバッタたちから島を守るために都会へ出たアリがサーカス一座の面々をみつけて、バッタ一味と対峙していくという物語はまさしく昆虫版『七人の侍』といえるのではないでしょうか。

『アベンジャーズ』(2012)


近年のヒーロー映画ブームの立て役者となった本作にも、『七人の侍』(1954)の影響は大きく見受けられます。

個性豊かなヒーローたちが集められていく序盤の展開、終盤に待ち受ける敵集団との大迫力のアクションシーンという構造は、まさしく『七人の侍』同様といえるのでは……。

『マンダロリアン』(2019)

何と言っても外せないのは、日本では動画ストリーミングサービス「ディズニーデラックス」で配信中の『スター・ウォーズ』スピンオフドラマ『マンダロリアン』(2019)でしょう。

全8エピソードで構成されている本作の第4話『楽園』は、完全なる『七人の侍』オマージュエピソード

危険な侵略者から村を守るよう、主人公が村人に依頼される物語は『スター・ウォーズ』ファンならずとも、『七人の侍』(1954)を観た方には必見といえる内容です。

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