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2019年10月04日に劇場公開されたDCコミックス原作のアメコミ映画最新作の『ジョーカー』(2019)。

・R指定作品として、全世界での興行成績で1位を記録
・日本の週末興行ランキングでも、4週連続で1位を獲得
・世界興行収入約8億5,000万ドル(920億万円)を突破
・第76回ヴェネツィア国際映画祭で最優秀作品賞にあたる金獅子賞を受賞

以上のような歴史に残るヒットを記録した本作は、
日本で公開されてからもSNSなどさまざまなメディアにおいてを多くの賛否を呼びました。

アメコミ映画の中でも類を見ない快挙を記録し、社会に影響を与えるまでの大ヒットを記録した『ジョーカー』(2019)の感想と評価をあらすじとネタバレを交えながら紹介していきます。

『ジョーカー』(2019)の作品情報とキャスト


ジョーカー(吹替版)

作品情報

原題:JOKER
製作年:2019年
製作国:アメリカ
上映時間:122分
ジャンル:ドラマ、クライム、スリラー

監督とキャスト

監督:ドット・フィリップス
代表作:『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』(2009)『ウォー・ドッグス』(2017)

出演者:ホアキン・フェニックス(アーサー・フレック/ジョーカー)
代表作:『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(2006)『her/世界でひとつの彼女』(2013)

出演者:ロバート・デ・ニーロ(マレー・フランクリン)
代表作:『ゴッドファーザー PART II』(1974)『レイジング・ブル』(1980)

出演者:ザジー・ビーツ(ソフィー・デュモンド)
代表作:『アトランタ』(2016)『デッドプール2』(2018)

『ジョーカー』(2019)のあらすじ

jokerあらすじ

バスに乗るアーサー:(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C)DC Comics

不況に陥るゴッサムシティでコメディアンを目指すアーサーは大道芸人として働いていた。

治安の悪い街、家に帰れば母の介護、自身も障害を抱えながら生活する彼は社会的に弱い立場にありながらも、純粋で心優しい人間だった。

いったい何が彼を"狂気のヴィラン"ジョーカーへと変えてしまったのか。

原作にない完全オリジナルストーリーで彼の誕生の秘密が今、暴かれる……。

ジョーカー・バットマンの関係とは?

ジョーカーとバットマンの関係とは

ブルース・ウェインとトーマス・ウェイン:(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C)DC Comics

そもそもこの映画のタイトルでもあるジョーカーとは何者なのでしょうか?

ジョーカーは元々アメリカンコミックス『バットマン』シリーズに登場するヴィラン(悪役・敵)です。

原作では『バットマン』で展開される犯罪の首謀者として描かれ、そのユーモアを交えた手口よりサイコパスなキャラとして人気のあるキャラクターです。

実写映画『バットマン』におけるジョーカーはピエロメイクに派手なスーツ姿など、その容姿こそ今回のジョーカーに近いですが、その過去までは描かれたものはありませんでした。

どの作品でもジョーカーは正義の見方であるバットマンに対する”最大の敵”として描かれ、まさに両者は正義と悪を抽象化したキャラクターであり敵同士の関係なのです。

【ネタバレあり】『ジョーカー』(2019)の感想・考察

メイクをするジョーカー

メイクをするジョーカー:(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C)DC Comics

アメコミ映画の悪役の過去、ということでしたが、実際に鑑賞すると内容はかなり社会的なものでした。

アーサーは常に社会によって淘汰され、拒まれ続けていました。慕っていた母親すら、自分の本当の母親ではない。

度重なる絶望が彼の中に潜んでいたジョーカーを暴いたのです。

これからバットマンシリーズを鑑賞するにあたって、彼に対する思いが180度変わる作品です。

気になった部分について、いくつか感想と考察を書いてみました!

生まれたときから押された「烙印」

アーサーは母親から”彼女が過去に仕えていたウェイン邸のトーマスとは恋仲にあり、自分はその間に出来た子であること”知ります。

真実を確かめに向かったものの、明らかになったのはそれが全て母の精神病が産んだ妄想であったこと。

そこで待ち受けていた真実は、アーサーはそもそも母親とは血が繋がっていない養子であること、アーサーが苦しめられている自身の障害は、母親のかつての恋人の暴力が要因であることでした。

子は親を選べないとはよく言ったもので、アーサーの人生は生まれたときから報われないものだったのです。

それをもし、もっと早くアーサーが知ることが出来たら、この不幸の連鎖はジョーカーを生み出さなかったのではないでしょうか。

アーサーはなぜ冷蔵庫に入ったのか?

劇中にアーサーが自宅の冷蔵庫の中身を掻き出し、自ら中に入るシーンがあります。

冷蔵庫は通常外からしか開けられない作りになっているため、入ってしまうと中から出られない構造。

「もしかして自殺!?」と息を飲むも、次のシーンは冷蔵庫とは全く関係のないもので、前後の繋がりはありません。

「これは一体何を示唆するシーンなのか」とネットでは様々な考察が飛び交いました。

考察①:自身の境遇に絶望し、自殺した

このシーンはアーサーが自身の本当の境遇を知った直後のシーン。

報われなかったこれまでの人生に加え、元々信じていたものすら幻想だと知ったアーサーの絶望たるや、想像を絶するものだったでしょう。

失うものが何もない、そもそも失えるものがない、まさしく空っぽの自分。

冷蔵庫に入れば出れないことを知りながら中に入り、その後は全てアーサーの妄想だったのではないか、という考察です。

考察②:虐待に対する皮肉

アーサーの笑いの発作は、彼の母親の恋人が幼少期にアーサーに振るった虐待が原因。

その虐待のうちに「ヒーターに括りつけられた」というものがあります。

自身の境遇についての理解が追いつかず、その部分が彼の頭の中で強調され、「ヒーターで熱された身体なら冷やせば発作が治るのではないか」という考えに辿り着き、あのような行動を取ったのでは?という考察も。

考察③:誰もいない世界に行きたかった

自身の境遇を知り絶望し、帰った家では恐らく警察から駅での射殺事件についての取り調べの電話が鳴り響いています。

誰も手を差し伸べてくれない、追い詰められたアーサーはとにかく自分だけになれる場所が欲しかったのでは?という意見も、確かに考えられるでしょう。

ちなみにこの答えですが、なんとアーサー演じるホアキン・フェニックスのアドリブ

このシーンの最後、若干映像がぶれる部分があるのですが、カメラマンも突然の行動に動揺したのかもしれません。

アーサーというキャラクターだけでなくキャスト自身が観ている人を欺く構造になっているわけです。

全ては妄想だった? ラストシーンを考察!

ステージに挙がるアーサー

ステージに挙がるアーサー:(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C)DC Comics

憧れのコメディアンであるマレーを番組で射殺し逮捕されたジョーカーは、刑務所へと向かう車の中で混乱へと陥った街を見て自分が社会へと与えた影響を目の当たりにし高揚感を覚えます。

住民に襲われたパトカーから這い出すと、周りにはジョーカーを指示するピエロのお面を被った多数の人々。

ジョーカーは不満のはびこるゴッサムシティの新たなダークヒーローとなった……。

と思えば場面は急に牢獄へと変わります。

彼は混乱の中、そんなにすんなりと逮捕されたのでしょうか。

髪はジョーカーを示唆する緑から黒へと変わっていました。

これでは彼は”ジョーカー”ではなく”仕事のためにピエロのメイクをしたアーサー”です。

そもそもソフィーとの一件は彼の妄想であり、彼の母の語った人生もまた、妄想でした。

この映画の全てはアーサーの妄想だったかものしれません。

『ジョーカー』(2019)の評価

ジョーカー ロバート・デ・ニーロとホアキン・フェニックス

マレー・フランクリンとジョーカー:(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C)DC Comics

ジョーカーは大手サイト映画.comでは5点満点中4.0、国内最大の映画レビューサービスFilmarksでは5点中4.1点と、かなり高い評価。

また第76回ヴェネツィア国際映画祭にて最高金賞の金獅子賞を受賞、その評価の高さも注目を集めました。

審査員から寄せられたコメントには、

「アメリカに限らず全世界で起きている現代社会の反映が素晴らしかった」

「主演や脚本のみならず、脇役の演技や音楽など多くの要素の素晴らしさがこのクオリティに繋がった」

「芸術的」

などの声が挙がり、作品が与えた衝撃の大きさや質の高さを証明しています。

『ジョーカー』(2019)のまとめ

観衆に囲まれるジョーカー

観衆に囲まれるジョーカー:(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C)DC Comics

「どんな時も笑顔で人々を楽しませなさい」

という母親の言葉がそれまでのアーサーの人生を形成していました。

職、信頼、恋、信念……。人生の喜びを形成する要素を一つ一つ奪われ、失うものがなにもない彼のことを”最強のヴィラン”と表現するのは、あまりにも的確であり、哀しいことだと思いました。

人が絶望の果てまで突き落とされるとどうなるのか、そこまでの過程を見事な表現で描いた『ジョーカー』(2019)は今年一の傑作といっても過言ではないでしょう。

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