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イノセンス_感想・考察

『イノセンス』(2004)は、1995年に公開された『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)の続編となるSFアニメーション映画です。

監督は押井守。

本作は日本SF大賞、東京アニメアワード2005劇場映画優秀作品賞など様々な映画賞を受賞しました。

少佐(草薙素子)が失踪してから3年後の、西暦2032年を舞台にした『イノセンス』(2004)について、感想・考察、哲学的テーマや中国風の舞台を解説していきます!

【『イノセンス』(2004)の評価】

項目 評価 点数
知名度 ★★★★☆ 70点
配役/キャスト ★★★★☆ 75点
ストーリー ★★★★☆ 70点
物語の抑揚 ★★★★☆ 70点
傑作度 ★★★★☆ 80点
難解度 ★★★★★ 100点

『イノセンス』(2004)の作品情報


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製作年 2004年
原題 イノセンス
製作国 日本
上映時間 100分
ジャンル アニメ
監督 押井守
脚本 押井守
主要キャスト 大塚明夫(バトー)

山寺宏一(トグサ)

田中敦子(草薙素子)

大木民夫(荒巻大輔)

『イノセンス』(2004)の概要

バトー:ⓒ東宝

少佐(草薙素子)が失踪して3年後の西暦2032年。

ロクス・ソルス社が販売する少女型のロボットが原因不明の暴走を起こし、所有者を惨殺するという事件が続発する。

この事件は公安9課が担当することになり、捜査を開始するバトーとトグサ。

そんな中、ロクス・ソルス社の出荷検査部長が惨殺される事件が発生。

一連の犯行が暴力団「紅塵会」だと推理したバトーとトグサは、紅塵会の事務所に踏み込むが……。

『イノセンス』(2004)の感想と考察

バトーとトグサ:ⓒ東宝

『イノセンス』(2004)の感想

『イノセンス』(2004)は前作の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)に続き、難解な作品になっていました。

本作は前作に比べてより哲学的なセリフが多く、より哲学が深くなり、そしてストーリーが複雑になっているため、前作よりも難しく感じることでしょう。

頭を回転させないと、「今、何が起こっているのか」とストーリーに追いついていけないなんてことも。

しかし、それ故に奥が深く、様々な映画賞を受賞し、海外でも評価された作品であることは間違いありません。

映像に関してはCGが取り入れられており、美しく仕上がっています。

特に後半の中国テイストの街並みなどは圧巻かつ幻想的。

また、本作のメインキャラクターはバトーで、前作の主人公だった少佐(草薙素子)はほぼ出てきません。

バトーも渋くて良いキャラクターではありますが、少佐(草薙素子)が復帰して前作のような華麗なアクションを見せて欲しかったという思いがあります。

押井守監督の前作『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)の感想・考察はこちら。

『イノセンス』(2004)のテーマ・主題を考察

『イノセンス』(2004)のテーマは「人間には身体がない」。

つまり、「人間は根本的に身体を持っていない」という身体論を考察します。

前作の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)のテーマよりも、深く難解になっていることが分かります。

押井守監督は「自意識があるってことは、必ず自分の身体を外部化しちゃう」と語っていますが、それはどういう意味なのでしょうか。

自意識があるというのは、自分を客観的に見ることができるわけで、それは他人の視点で見ることができるわけです。

つまり、それは自分の身体を外部化しているという意味で、精神と身体が一致していないということだと考えられます。

逆に自意識のない動物は精神と身体が一致していると言えるのではないでしょうか。

例えるなら、「演じる」という行為。

俳優・女優が別の誰かを演じるというのは、精神と身体が一致していたらできないことだと思います。

逆に動物は自意識がないから演じることができません。

とても難しいテーマです。

解釈が難しい?『イノセンス』(2004)の哲学的テーマを解説

バトーとハダリ:ⓒ東宝

『イノセンス』(2004)では、過去の偉人や著名な学者の名言・格言、例えば旧約聖書や法句経などが引用された哲学的なセリフが多く存在し、それがさらに作品を難解なものにさせています。

ここでは引用された哲学的テーマを解説していきます。

引用元:ロマン・ロラン『ジャン・クリストフ』

人は概ね自分で思うほどには幸福でも不幸でもない。

肝心なのは望んだり生きたりすることに飽きないことだ。

ロマン・ロランはフランスの作家で、『ジャン・クリストフ』は彼のノーベル文学賞作品。

人生の名言ではないでしょうか。

自分が幸か不幸かに目を向けず、望んだり生きたりすることに目を向けていかなければならないのではないかと思います。

引用元:ジュリアン・オフレ・ド・ラ・メトリー『人間機械論』

人体は自らゼンマイを巻く機械であり、永久運動の生きた見本である。

ジュリアン・オフレ・ド・ラ・メトリーはフランスの哲学者・医者で、『人間機械論』は彼の著書。

人体は自ら心臓を動かし、思考し、複雑な構成で生きています。

他の動物にはない人体の神秘を表現したのではないでしょうか。

引用元:リチャード・ドーキンス『延長された表現型』

個体が創りあげた物もまた、その個体同様に遺伝子の表現系だ。

リチャード・ドーキンスは、イギリスの進化生物学者・動物行動学者で、『延長された表現型』は彼の著書。

例えば、小説や映画も、個体を構成する遺伝子と同じように代々受け継がれてきた表現であるという意味ではないかと思います。

引用元:ラ・ロシュフコー『考察あるいは教訓的格言・箴言』

死を理解する者は稀だ。

多くは覚悟でなく愚鈍と慣れでこれに耐える。

ラ・ロシュフコーはフランスのモラリスト文学者で、『考察あるいは教訓的格言・箴言』は彼の著書。

「死」とは一体何か。

「死」を見ていく中でなんとなく分かってくるけれど、本当に理解している人はいないのではないでしょうか。

『イノセンス』(2004)の音楽・使用楽曲や主題歌を解説

バトー:ⓒ東宝

『イノセンス』(2004)の主題歌は、ジャズシンガーの伊藤君子が歌う『Follow Me』 。

『Follow Me』はロドリーゴ作曲のアランフエス協奏曲第2楽章に歌詞を付けたものです。

この曲を主題歌に提案したのは、制作協力したスタジオジブリのプロデューサー鈴木敏夫だったのだそう。

伊藤君子は、挿入歌として『River of Crystals』という曲も本作で歌っています。

また、使用楽曲として前作『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)の主題歌だった『謡』が使用されていました。

クライマックスでの『謡』は映像の圧巻さも相まって、とても印象的。

ぜひ聴いてみてください。

『イノセンス』(2004)は中国テイスト強い?理由を解説

街:ⓒ東宝

『イノセンス』(2004)の中国テイストが強いのは、前作の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)からだったので、その世界観を引き継いだと考えられます。

しかし、中国テイストが強い理由はいくつかの説があるようなので、紹介していきます。

『イノセンス』(2004)の中国テイストが強い理由

・公安9課のある新浜市は、現在の神戸沖にあるという設定なので中華街がある

・本作の舞台が、極東地区になっている

・情報過多の風景を描くためだった

・押井守監督は、気に入った都市、街を、何度も描く傾向にある(監督の好みの街並みだった)

・攻殻機動隊シリーズのアイデアのもとになったと言われてる『ニューロマンサー』という小説の影響

『イノセンス』(2004)に影響はあった?『イノセンス』(2004)と似ている作品を解説

バトーとハダリ:ⓒ東宝

『マトリックス』シリーズ


『マトリックス』シリーズの第1作『マトリックス』(1999)は、ウォシャウスキー監督、キアヌ・リーブス主演で1999年に公開されたSF映画。

仮想現実を描き、哲学や信仰というテーマも含まれています。

VFXを駆使した映像はまさに革命的。

アカデミー賞では視覚効果賞、編集賞、音響賞、音響編集賞を受賞しました。

『AKIRA』(1988)


『AKIRA』(1988)は、大友克洋の漫画『AKIRA』を自ら映画化したアニメーション映画。

2019年のネオ東京を舞台に、超能力者と暴走族の少年、軍隊の戦いを描き、国内に限らず海外にも大きな影響を与えた伝説的な作品です。

ハリウッド・リポーター選出の「大人向けアニメ映画ベスト10」4位にランクイン、英Total Film誌の「史上最高のアニメ映画50本」で5位にランクインするなど高い評価を得ました。

2020年東京オリンピックの中止や新型コロナウィルスを予言していた?というのは有名な話。

『イノセンス』(2004)の最後は? ラストシーンや結末を解説

バトーと犬:ⓒ東宝

『イノセンス』(2004)の結末・ラストシーン

『イノセンス』(2004)の結末では、ハダリにダウンロードさせた少佐が、脱出するバトーに「あなたがネットにアクセスするとき、私は必ずあなたのそばにいる」と言い残し、ハダリのデータを消去。

その後、バトーはトグサの家に犬のガブリエルを迎えに行きます。

そこで家から出てきたトグサの娘にトグサは人形をプレゼント。

バトーはその人形を見つめるというラストになりました。

『イノセンス』(2004)の最後の解釈と考察

『イノセンス』(2004)の最後は、アップにされた人形とそれを見つめるバトーの顔が意味深でした。

この最後は「人間には身体がない」という本作のテーマを印象付けたのではないでしょうか。

つまり、身体を持たない人間は人形を求めるということ。

本作は人形が重要な役割を担ってきました。

それをラストでも見せて、改めてテーマを示唆したのではないかと思います。

【レビュー】『イノセンス』(2004)の評価・評判

ハダリ:ⓒ東宝

【つまらない?】低評価のレビュー

『イノセンス』(2004)の低評価はどのようになっているのでしょうか。

映画のレビューサイトをまとめてみると、

『イノセンス』(2004)の低評価レビュー
Filmarks:★★☆☆☆ 2.0
「引用もいかにも押井監督でかなりマニア向け」
映画.com:★★★☆☆ 3.0
「セリフが哲学的にすぎ格言も多いため、しばしば置いていかれてしまう。あまりに蘊蓄が多すぎて消化不良」
Rotten Tomatoes(海外の評価):★☆☆☆☆ 1.0
「理解できない。ただ、映像は奇麗」

という低評価レビューがありました。

「セリフが哲学的過ぎる」「理解できない、難しい」というレビューが多いです。

確かに本作はセリフもストーリーも難解。

難解な内容を受け入れられないと、低評価になってしまうでしょう。

【面白い?】高評価のレビュー

『イノセンス』(2004)の高評価はどのようになっているのでしょうか。

映画のレビューサイトをまとめてみると、

『イノセンス』(2004)の高評価レビュー
Filmarks:★★★★☆ 3.8
「映像がとにかく綺麗だった。やっぱりサントラも印象的で最高。映像、音楽、間。全てが芸術的な作品だと感じた」
映画.com:★★★★☆ 4.0
「セル画とCGを巧みに組み合わせて映像美を追求したアニメに感動します」
Rotten Tomatoes(海外の評価):★★★★★ 5.0
「イノセンスのアニメとしての凄さはその映像に最も顕著に現れている」

という高評価レビューがありました。

本作は映像に関して高評価のレビューが多いです。

また、低評価の多かった難しい哲学的なセリフが良かったというレビューも。

日本の映画レビューサイト映画.comの点数は5点満点中3.6という評価に。

前作『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)よりも、点数として下がってしまいました。

サブキャラだったバトーが主人公になった点や、より難解な作品になった結果ではないでしょうか。

『イノセンス』(2004)の受賞歴から見る評価

『イノセンス』(2004)は多くの映画賞を受賞しました。

本作の受賞歴を見ていきましょう。

『イノセンス』(2004)の受賞歴

・日本SF大賞

・デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー/AMD Award グランプリ/総務大臣賞

・デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー/AMD Award Best Music Composer賞

・文化庁メディア芸術祭アニメーション部門 審査委員会推薦作品

・東京アニメアワード2005 劇場映画優秀作品賞

・東京アニメアワード2005 原作賞

・東京アニメアワード2005 脚本賞

・東京アニメアワード2005 キャラクターデザイン賞

・日本映画テレビ技術協会 映像技術賞

・デジタルコンテンツグランプリ ヒットコンテンツ部門優秀賞

・シッチェス・カタロニア国際映画祭 オリエント・エキスプレス賞

また、日本のアニメーション作品がカンヌ国際映画祭のコンペ部門に選出されたのは本作が初。

受賞歴から見ても、本作が海外からも評価されていることが分かります。

『イノセンス』(2004)の総合評価:より難解になった押井守の哲学作品

バトーとトグサ:ⓒ東宝

映像美と哲学的なテーマで魅了した『イノセンス』(2004)。

『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)の続編ではありますが、本作だけを観ても楽しめることができます。

難解ではありますが、海外でも評価された押井ワールドを堪能してみて下さい。

その高い作品性に圧倒されることでしょう。

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