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her世界でひとつの彼女_感想・考察

AIと恋をする男を描いた『her/(ハー)世界でひとつの彼女』(2013)。

奇妙な設定から、レビューサイトでは「気持ち悪い」と表現する人もしました。

しかし、本作品はアカデミー脚本賞受賞しているなど、数々の賞を受賞しています。

さまざまな賞を受賞しながら、一方で悪評を受けている理由はなぜなのでしょうか。

本記事では『her/世界でひとつの彼女』(2013)の感想と考察、舞台・ロケ地、ラストや評価を解説していきます。

【『her/世界でひとつの彼女』(2013)の評価】

項目 評価 点数
知名度 ★★★☆☆ 50点
配役/キャスト ★★★★☆ 85点
ストーリー ★★★★☆ 70点
物語の抑揚 ★★☆☆☆ 40点
ロマンティック ★★★★★ 95点
世界観の美しさ ★★★★★ 100点

目次

『her/世界でひとつの彼女』(2013)の作品情報


her/世界でひとつの彼女(吹替版)

製作年 2013年
原題 her
製作国 アメリカ
上映時間 120分
ジャンル ラブロマンス
監督 スパイク・ジョーンズ
脚本 スパイク・ジョーンズ
主要キャスト ホアキン・フェニックス(セオドア・トゥオンブリー)/日本語吹替:松本保典

スカーレット・ヨハンソン(サマンサ)/日本語吹替:林原めぐみ

エイミー・アダムス(エイミー)/日本語吹替:園崎未恵

ルーニー・マーラ(キャサリン)/日本語吹替:能登麻美子

『her/世界でひとつの彼女』(2013)の概要

街を見るセオドア© 2013 - Untitled Rick Howard Company LLC

離婚して孤独を感じていたセオドアは、日々塞ぎ込んだ生活をしていた。

そんなときにOS1という、人工知能の広告に目を惹かれ購入する。

人工知能はサマンサと名乗り、仕事のことからプライベートなことからセオドアをサポートしてくれた。

塞ぎ込んでいたセオドアだったが、サマンサと会話をすることで徐々に心境に変化が起こりサマンサに恋心を抱くようになる。

サマンサとの恋は成就するが、AIであるサマンサとの恋に壁があり悩むのであった。

her/世界でひとつの彼女』(2013)の感想と考察

サマンサとビーチでデートするセオドア© 2013 - Untitled Rick Howard Company LLC

her/世界でひとつの彼女』(2013)の感想

これから『her/世界でひとつの彼女』(2013)の感想を書いていきます。

セックスがゴールなのか

サマンサは知能が上がりセオドアに好意を抱くにつれて、肉体がないことに対して非常に失望します。

しかし、話が進むにつれサマンサが肉体を持ちたい理由は、セックスをするためのものだと感じました。

サマンサは度々セックスをしたいと言い、ついに擬似的な肉体関係を持とうとします。

これはサマンサとセオドアの二人に共感した女性が、無償でサマンサ役をしてセックスをするというものです。

セオドアもこの行為には少し引いていました。

おそらくサマンサの恋愛はセックスが大きな重点を置いているのです。

私含め鑑賞者もここに不快感や気持ち悪さを覚えた人は多いでしょう。

たしかにセックスは相手を知る中で必要な行為ですが、高性能AIが行き着いた結果は体というなんとも虚しい話。

恋愛や愛のゴールについて考えさせられる、非常に興味深い内容でした。

全てはサマンサの手の中

サマンサというOS1が売られている売り文句を振り返ると、以下のようなことが言われています

「あなたは誰?何になれる?どこへ行く?そこに何がある?どんな可能性がある?」

この言葉に惹かれセオドアはサマンサを購入しました。

結果サマンサとは恋愛をして最終的には別れがきましたが、実はこの言葉に対してはセオドアはラストまでにいくつか解決をしています。

セオドアは離婚した日から、虚無感や孤独感、日々の退屈さを感じていました。

しかしサマンサと出会い、サマンサが出版社に手紙を送ったことでセオドアの手紙は出版化されました。

これはまさにサマンサがセオドアに寄り添ったことで見つけた「何になれる?どんな可能性がある?」の部分です。

そして離婚で自分の人間性がわからなくなっていたセオドアは、サマンサと出会い歩みを進めることで、最終的にはキャサリンに自分のことや思いを書いた手紙を出せました。

これは「あなたは誰?』の部分ではないでしょうか。

つまりサマンサとは喧嘩をしたり、浮気をしたり、最終的にはセオドアの元を離れましたが、本当は全てサマンサの手中の出来事なのかもしれません。

もしそうだとしたら、この巧みに組み立てられた脚本には感激です。

以上『her/世界でひとつの彼女』(2013)の感想でした。

her/世界でひとつの彼女』(2013)の考察

her/世界でひとつの彼女』(2013)はAIとの恋愛というなかなか共感しにくい題材ですが、アカデミー賞を受賞するなど多くの評価を得ています。

これは作中に鑑賞者に対して共感できる言葉が多く使い、セオドアに感情移入させるようにしたからでしょう。

今回は作中登場する印象的な言葉を解説し、本作品の魅力を考察します。

「それ本当の友達?」

サマンサがセオドアに対して、パソコンを整理している時に言ったセリフです。

電話帳にたくさん件数があったセオドアですが、サマンサに言われてハッとします。

必要かわからない、切っていいか悩む関係性で、データがパンパンになるいかにも人間らしさが出るセオドアのシーンです。

「僕は一生で味わう感情を味わってしまい、新しい感情はわかないと」

大人になるにつれワクワクや感動は減っていき、心が踊るようなことは滅多にありません。

それは経験してしまったから、未知のものに出会わないからです。

大人になると時間が経つのが早くなるのも同じ感情でしょう。

感情がこれ以上わかないことい絶望感を感じているシーンでした。

私自信非常に共感した言葉です。

「彼女との喧嘩を思い出しては、彼女に反論して記憶を焼き直している自分がいる」

嫌なことがあったときに何度もそのシーンを思い出して、どうすれば良かったか考えたり頭の中で反論することは誰しも経験があるでしょう。

セオドアは離婚した時のことや彼女のことを消化しようと、作中で何度もキャサリンのことを思い出します。

誰しも自然にやってしまうことですが、消そうと思っても過ちを思い出してしまう人間的な部分を、非常に的確に表現されている印象的なシーンです。

AIとの恋を描いた近未来が舞台ですが、共感できる言葉を使用することで、鑑賞者をグッと作品に近づけています。

このことから鑑賞者はセオドアの感情に浸り、作品に目が離せなくなるのです。

her/世界でひとつの彼女』(2013)の見どころ

セオドアとキャサリン© 2013 - Untitled Rick Howard Company LLC

her/世界でひとつの彼女』(2013)の見どころを3つ解説します。

恋愛ってなに?AIとの恋愛から学ぶ恋愛観

本作品から学ぶ恋愛とは相手を受け入れることでしょう。

サマンサは常にセオドアの事を考え、全ての事実を受け止め消化してくれます。

サマンサは自分がいなくなるとセオドアが孤独になると心配していましたが、それは言い換えれば受け止めて消化してくれる人がいない事が心配だったのでしょう。

サマンサにとっては孤独じゃないことが恋愛に通じているのです。

サマンサにとっては、セオドアの全ての情報をみてセオドアどうして欲しいかわかるので、合理的に判断し受け止めることができるのでしょう。

人間同士でも同じ解釈ができますが、他人の全てを受け入れるのは難しいことです。

だからこそ自分を受け入れてくれる人に出会い、恋愛ができるのは美しい事なのでしょう。

AIとのセックスシーンも…。

作中でサマンサとセオドアがセックスをするシーンがあります。

セオドアが言葉でキスから挿入するまでを全て表現し、2人はそれを想像します。

想像だけで絶頂まで行くのです。

本作品ではセオドアがセックスの説明をしている途中、映像が真っ暗になりサマンサと同じ感覚を共有する演出があります。

今まで見たことない官能的な表現に、息を呑むこと間違いないです

将来AIとの恋愛は可能になる?

AIとの恋愛は可能でしょう。

今でも3次元以外の物に恋をする行為はあります。

例えばアニメや漫画のキャラクターを本気で恋している事はよく聞く話です。

極端にいえばアイドルもこちらに入るでしょう。

今までは人間側からの一方的な好意でしたが、AIが発達すれば受動的な好意も可能になります。

AIが自主的にどこまで行動を起こしてくれるかにもよりますが、AIの技術次第で恋愛はできるのです。

【なぜ?】『her/世界でひとつの彼女』(2013)の疑問を解説

ゲームをするセオドア© 2013 - Untitled Rick Howard Company LLC

her/世界でひとつの彼女』(2013)はサマンサはなぜ浮気をした?

サマンサが浮気をした理由は、進化するに連れて色々なインプットが欲しくなったからでしょう。

サマンサはAIとして、知識を習得することで成長し人間の感情やセオドアのことを知ることができました。

セオドアを接することでサマンサは急速に成長していきます。

途中セオドアが複雑な感情を抱いたことで、サマンサはセオドアのことがわからなくなりました。

おそらくこの頃からたくさんの感情を理解し進化するために、動いていたのでしょう。

それはAIとしてサマンサが求められたことだからです。

作中にサマンサはセオドアに向けて「浮気はしているが、それは仕方のないことでセオドアを一番に考えている」と言っていいました。

これが本当のことなのでしょう。

her/世界でひとつの彼女』(2013)のロケ地・舞台はどこ?

her/世界でひとつの彼女』(2013)の舞台は近未来のLAとして描かれていますが、実際のロケ地はLAと上海です。

街並みにはウォルトディズニーコンサートホールなども映っていました。

サマンサとセオドアがデートした場所はマンハッタンビーチです。

作中ではサンタカタリナ島に旅行に行く話も登場してきました。

her/世界でひとつの彼女』(2013)は気持ち悪い?

her/世界でひとつの彼女』(2013)のレビューサイトを見ると、いくつかの人に気持ち悪いと表現されていました。

この気持ち悪さはAIとの恋というあり得ない話にもかかわらず、共感できる部分があるからでしょう。

セオドアは電話でセックスをしたり、AIと恋をしたり普通に考えるとあり得ない変わったことを行う存在です。

しかし本作品の脚本により、鑑賞者はより主人公に感情移入ができるように作られています。

また、AIの技術も進歩しているため、近未来といっても想像ができてしまう範囲での近未来なのです。

このことから本当にありそうと感じ、あり得ないことを本当にありそうと感じている自分に少し気持ち悪さを感じてしまうのでしょう。

her/世界でひとつの彼女』(2013)の楽曲・サントラを解説

エイミーと話すセオドア© 2013 - Untitled Rick Howard Company LLC

her/世界でひとつの彼女』(2013)の作中流れるサントラは、世界観やセオドアの感情を表すのに非常に重要な役割を果たしています。

また、ゆったりとした心地いい曲ばかりで、聴くだけでも美しい情景が浮かんでくる方は多いことでしょう。

今回は本作品で使われていたサントラについて解説します。

Off You

セオドアが仕事帰りに物悲しい曲をOSにリクエストして流れた曲です。

仕事帰りにニュースを聞き、家の暗い部屋でゲームをしているセオドアの孤独感を表した曲でした。

The Moon Song

作中セオドアとサマンサが二人で作った曲で、エンドクレジットにも流れています。

アカデミー賞で、作曲賞と歌曲賞をノミネートしている曲です。

作中では2個しか出てこない歌付きの曲で、これはサマンサが歌っています。

Dimensions

作中では2回ほど流れていて、セオドアが物思いにふけっているシーンで流れる曲です。

ホワホワと印象的なキーボードのメロディと美しい街並みが同時に映され、ゆったりとした本作品の世界観を見事に作り出していました。

her/世界でひとつの彼女』(2013)の最後は?ラストシーンや結末を解説

セオドアとサマンサの出会い© 2013 - Untitled Rick Howard Company LLC

her/世界でひとつの彼女』(2013)の結末・ラストシーン

her/世界でひとつの彼女』(2013)のラストシーンについて解説します。

サマンサがセオドアの元を離れ、セオドアはエイミーの部屋に行きました。

エイミーのOSも去ってしまったようです。

セオドアはキャサリンに、自分の言葉を綴った手紙をおくります。

セオドアとエイミーはマンションの屋上に行き、二人で朝の街の風景を眺めるのでした。

her/世界でひとつの彼女』(2013)のその後は? セオドアとエイミーの関係はどうなった

ラストシーンはセオドアとエイミーは2人で朝日を観ながら寄り添います。

このことから2人の関係は2パターンの想像ができるでしょう。

1つは2人が恋愛の関係。

1つは恋愛には発展せず今までの友人の関係。

私は後者の友人の関係が正しいと考えています。

セオドアとエイミーは大学時代付き合っていましたが、作中は一切恋愛関係に発展する描写がありませんでした。

エイミーが別れてからセオドアはエイミーの家に行ったり、セオドアがサマンサの話をするなどエイミーと恋愛関係になりそうな伏線はいくらでも作れますが、そうはしなかったのです。

このことから本作品ではエイミーは完全に、セオドアと恋愛関係にしたくないのはわかります。

ではエイミーの役割はなんだったのでしょうか。

それはセオドアの理解者、友人という役割です。

エミリーはセオドアと同じく離婚し、OSへの理解もありました。

本作品の中でサマンサは孤独という言葉を使いましたが、最後セオドアの隣にエミリーを置くことで、孤独にしていません。

つまり、ラストシーンはセオドアを孤独にしてバッドエンドにすることも可能でしたが、セオドアが前向きに進むハッピーエンドであることを想起させたかったのではないでしょうか。

その役割でエイミーは存在すると考えます。

【レビュー】『her/世界でひとつの彼女』(2013)の評価・評判

広告を見るセオドア© 2013 - Untitled Rick Howard Company LLC

【つまらない?】低評価のレビュー

『her/世界でひとつの彼女』(2013)の低評価レビュー
Filmarks:★★☆☆☆ 2.5
「全くもって理解できず気持ちが悪かった」
映画.com:★☆☆☆☆ 1.0
「会話がつまらなかった」
Rotten Tomatoes(海外の評価):★★☆☆☆ 2.5
「退屈で面白くないと感じた」

近未来を描いている本作品ですが、AIの進歩は2020年現在ではかなり身近なものになっています。

だからこそAIに恋をするのが全く理解ができず、気持ち悪いという評価をしている人が多かったです。

また、本作品はかなり会話に私的な表現が使われているので、会話一つひとつの意味をしっかり考えなくてはいけません。

そこに退屈さを感じつまらないと評価している人もいます。

ただ、私的な表現は本作品では肝といっても過言ではありません。

ハートフル社で勤めていて、感受性や表現が豊かなセオドアがAIに恋する肯定感を持たせる設定でもあります。

AIに恋するという感情をより、鑑賞者にわかり易くした結果でしょう。

【面白い?】高評価のレビュー

『her/世界でひとつの彼女』(2013)の高評価レビュー
Filmarks:★★★★★ 5.0
「一つひとつの言葉が綺麗で、近未来なのも街も綺麗だった」
映画.com:★★★★★ 5.0
「全体的に柔らかい感じが良かった」
Rotten Tomatoes(海外の評価):★★★★☆ 4.5
「とても美しい映画だった」

 

パステルカラーの衣装や近未来の世界観に、柔らかさや美しさを感じる人が多くいました。

また、セオドアやサマンサの使う会話のロマンティックな表現に、感動している人もいます。

全体的に一つの美術作品として出来上がっている本作品に、高評価をしている人が多いようです。

他にもサマンサの吹き替えをしている、林原めぐみの声が良かったというマニアックな人もいました。

her/世界でひとつの彼女』(2013)の総合評価:美しくロマンティックだが奇妙な恋の物語

セオドア© 2013 - Untitled Rick Howard Company LLC

AIとの恋をする男を描いた『her/世界でひとつの彼女』(2013)。

会話のみで恋模様を描く作品は、言葉の表現が美しくうっとりしてしまう作品です。

人によっては実体のないAIと恋をする姿を、気持ち悪いと感じる人もいるかもしれません。

しかし本作品は映像のライトニング編集や、パステルカラーの世界観、流れる楽曲により非常に美しく作られています。

気になった方は、ぜひご覧になってみてください。

her/世界でひとつの彼女』(2013)はエンドロール後に本編はある?

仕事中のセオドア© 2013 - Untitled Rick Howard Company LLC

本作品はエンドロール後に本編は流れません。

しかし、エンドロールでは作中にサマンサとセオドアが作った曲が流れます。

とても優しく綺麗な曲なので、最後まで余韻に浸れる良いエンドロールです。

サマンサの魅力的な声を演じているスカーレット・ヨハンソンの出演作品が気になる方はこちら。

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