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千年女優_感想・考察

『千年女優』(2002)は、引退した大女優、藤原千代子の1人の男を想い続けた半生を描くアニメーション映画です。

監督は今敏。

本作は文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞、ファンタジア国際映画祭・最優秀アニメーション作品賞&芸術的革新賞など、数々の映画賞を受賞しました。

現実と幻想の世界が入り混じった独特な世界観の映画『千年女優』(2002)について、感想・考察、海外の反応や評価を解説していきます!

【『千年女優』(2002)の評価】

項目 評価 点数
知名度 ★★★★★ 80点
配役/キャスト ★★★★☆ 75点
ストーリー ★★★★★ 90点
物語の抑揚 ★★★★★ 90点
音楽 ★★★★★ 90点
独特な世界観 ★★★★★ 100点

『千年女優』(2002)の作品情報


千年女優 [DVD]

製作年 2002年
原題 千年女優
製作国 日本
上映時間 87分
ジャンル アニメ
監督 今敏
脚本 今敏/村井さだゆき
主要キャスト 荘司美代子/小山茉美/ 折笠富美子(藤原千代子)

飯塚昭三/佐藤政道(立花源也)

小野坂昌也(井田 恭二)

山寺宏一(鍵の君)

『千年女優』(2002)の概要

藤原千代子:ⓒKLOCKWORX Co.,ltd

映像制作会社の社長である立花は、カメラマンの井田とともに、かつての大女優・藤原千代子のドキュメンタリーを製作しようとしていた。

千代子にインタビューするため、人里離れた千代子の邸宅を訪れる立花と井田。

邸宅には、30年前に引退し、ひっそりと隠居生活を送っていた千代子がいた。

立花は、インタビューする前、箱に入っている1本の鍵を見せる。

記憶の扉が開いたかのように、千代子はその鍵の秘密と激動の半生を語りだす。

『千年女優』(2002)の感想と考察

藤原千代子:ⓒKLOCKWORX Co.,ltd

『千年女優』(2002)の感想

『千年女優』(2002)は、これぞ今敏監督というような独特な世界観になっていました。

全世界の注目を集めた『PERFECT BLUE パーフェクト ブルー』(1998)のスタッフが再結集したということもあり、脚本では村井さだゆきが再び担当しています。

かと言って『PERFECT BLUE パーフェクト ブルー』(1998)のようなホラー感やサイコパスな感じはなく、内容としては『千年女優』(2002)のほうが分かりやすいのではないかと思います(とは言いつつ、奥深い内容)。

『PERFECT BLUE パーフェクト ブルー』(1998)でも特徴的だった現実と幻想の世界が入り混じった世界を描きつつ、アニメの真髄を見せくれたかのような素晴らしい内容でした。

ストーリーの根幹は、恋をした男を追いかけていく話。

話としては、シンプルですが、時間と空間を飛び越え、いくつかの世界が融合していく感覚は今敏監督ならでは。

ぜひ本作でも独特な世界を味わってほしいです。

『千年女優』(2002)の考察

なぜ『千年女優』(2002)は世界的にも評価されたアニメーション映画になったのでしょうか。

それは、現実と幻想を織り交ぜた独特な世界観を描いたからだと思います。

『PERFECT BLUE パーフェクト ブルー』(1998)でも、現実と虚構を描き、海外からも高い評価を得ましたが、本作はさらに「時間」「空間」という概念も加わりました。

仮に『PERFECT BLUE パーフェクト ブルー』(1998)を2次元と表現するとしたら、『千年女優』(2002)は4次元という感じでしょうか。

タイトルにある『千年』がそれを表しています。

現実と幻想を織り交ぜ、さらには時間と空間も超えていく。

それをアニメーションにしかできない描き方で魅せた点、唯一無二の世界観が評価されたのだと思います。

【なぜ?】『千年女優』(2002)の疑問を解説

藤原千代子:ⓒKLOCKWORX Co.,ltd

『千年女優』(2002)のモデルとなった人物を解説

千代子には、日本映画黄金時代を代表する女優、原節子というモデルがいました。

彼女は1920年生まれの女優で、1963年、名匠・小津安二郎の作品などに出演した後、突如引退し姿を消してしまいます。

それから2015年に亡くなるまで隠遁生活を送っていました。

配偶者もいなかったようなので、まさに千代子のイメージとぴったり重なります。

他にも、子役時代から活躍し、様々な役を演じた女優高峰秀子など往年の名女優のイメージも重ねられています。

名女優たちのイメージが合わさることで、千代子という人物に「女優」としての魂を吹き込んだのかもしれません。

『千年女優』(2002)とパプリカ・パーフェクトブルーは関係があるのかを解説

『千年女優』(2002)とパプリカ・パーフェクトブルーは、作品に直接関係はありませんが、現実と虚構(幻想、夢)という2つの世界を描いた点は共通する部分であると言えます。

ちなみに、今敏監督はデビュー作『PERFECT BLUE パーフェクト ブルー』(1998)と本作をコインの裏表に位置する映画だと説明しています。

『PERFECT BLUE パーフェクト ブルー』(1998)は、アイドルの未麻が女優に転身する中で、熱狂的なストーカーに追われて精神的に追い詰められていくホラー作品でした。

しかし、本作では女優である千代子が「鍵の君」を追いかけていくというポジティブな内容。

つまり、前作『PERFECT BLUE パーフェクト ブルー』(1998)では恐怖を生んだ関係(相手を慕う気持ち)を、本作ではポジティブなものに変えているのです。

『PERFECT BLUE パーフェクト ブルー』(1998)の詳しい考察や解説が知りたい方はこちら。

 

『千年女優』(2002)のタイトルの意味とは?

藤原千代子:ⓒKLOCKWORX Co.,ltd

『千年女優』(2002)のタイトルの意味は、一つではないと思います。

千代子は時代劇から宇宙飛行士まで演じました。

その時間はまさに「千年」。

時空を超えていく描写から見ても、間違いなく「千年」には時間・空間的な意味合いもありますが、「想いの強さ」の意味も含まれていると思います。

そして、「女優」の意味は本作のラストで言う千代子のセリフに隠されています。

そのセリフとは、

だってあたし、あの人を追いかけてるあたしが好きなんだもの

つまり、千代子は「あの人を追いかけてる千代子」を演じていたのではないでしょうか。

彼女が「千年」かけても追いかけたかったもの、それは「女優」であることの自己愛であり、まずは自分を愛するべきだというメッセージがあったと言えます。

また、「女優」には違った視点もあるのではないかと思います。

人は誰でも「自分」というキャラクターを演じている女優であり、俳優です。

「あなた、誰なの?」

これは、『PERFECT BLUE パーフェクト ブルー』(1998)で繰り返された問いでした。

千代子が様々な役を演じたように、対峙する人やシチュエーションによって私たちにも様々な顔(キャラクター)がある。

そう考えると、本作でも『PERFECT BLUE パーフェクト ブルー』(1998)のテーマが受け継がれているのかもしれません。

「千年」以上も前から私たち人間は、「女優」(俳優)だった。

それは演じていたのが、千代子だけではなかったことから推察できます。

もちろん、そんな深い意味はなく、ただ単に「千年」の歴史を超えていく(様々な時代を演じた)、「女優」(千代子の職業という意味で)という、映画の表面を捉えただけの意味とも考えられます。

色々な考察ができる面白いタイトルになっているのではないでしょうか。

ちなみに今敏監督は、ラストのセリフに、重要な意味と明確な意図を持って入れたそうです。

『千年女優』(2002)の小ネタ・トリビア・裏話

藤原千代子:ⓒKLOCKWORX Co.,ltd

『千年女優』(2002)はどのようにして生まれたのかを解説

『千年女優』(2002)の原形は、今敏監督のたったの2行のアイディアだったそうです。

「かつて大女優と謳われた老女が自分の一代記を語っているはずが、記憶は錯綜し、昔演じた様々な役柄が混じりはじめ、波瀾万丈の物語となっていく。」

たった2行のこのメモ書きが、『千年女優』(2002)として完成するまでには、難しい内容だったこともあり、2年と数ヶ月を要しました。

監督をはじめ、スタッフが難題を妥協しないで製作した結果が、唯一無二のアニメーションを生んだのです。

千年女優は今敏のイメージとは違った作品だったのか?

『千年女優』(2002)には、今敏監督のアイデアだけではなく、脚本、作画監督や美術監督、演出や音響監督、音楽、あるいは実際にシーンやカットを担当するスタッフや声優など、作品に関わる多くの人のアイディアと労力が合わさった作品だそうです。

「アイディアと労力の足し算以上の魅力に溢れていると思います」

http://konstone.s-kon.net/modules/ma/index.php?content_id=6

と今敏監督は、KON'TONEで語っています。

『千年女優』(2002)の最後は? ラストシーンや結末を解説

藤原千代子:ⓒKLOCKWORX Co.,ltd

『千年女優』(2002)の結末・ラストシーン

千代子は気を失って倒れてしまい、救急車で運ばれます。

立花と井田は、千代子の邸宅を後に。

病室に寝かされた千代子は、立花と話すと静かに目をつむりました。

すると場面が変わり、千代子は若い頃の姿に。

千代子が乗ったロケットは立花と井田に見送られ、宇宙へと行くというラストになりました。

『千年女優』(2002)のその後は?

立花が千代子のインタビューをもとに番組を製作すると推察できます。

千代子が死んだとしたら、葬儀もひっそりと行われるのではないかと思います。

きっと立花は号泣していることでしょう。

『千年女優』(2002)のラストの解釈と考察

だってあたし、あの人を追いかけてるあたしが好きなんだもの

というラストのセリフについてはすでに書いたので、ここでは書きません。

宇宙船に乗って宇宙へ行くラストシーンについて考察していきます。

このシーンは「千代子の死」を意味しているのではないでしょうか。

最後、老婆の千代子は事切れたように目をつむりました。

宇宙へ出発するシーンは「この世を離れる」という暗示があるのではないかと思います。

【レビュー】『千年女優』(2002)の評価・評判

千代子と立花:ⓒKLOCKWORX Co.,ltd

【つまらない?】低評価のレビュー

『千年女優』(2002)にはどのような低評価レビューがあったのでしょうか。

映画レビューサイトをまとめてみると、

『千年女優』(2002)の低評価レビュー
Filmarks:★★☆☆☆ 2.0
「見たけどなんでかなぁ、今敏もピンとこない監督さんの1人」
映画.com:★★☆☆☆ 2.0
「映画始まって一時間くらいつまんなくてしんどかったので私には合わなかった」
Rotten Tomatoes(海外の評価):★★★☆☆ 3.0
「途中からどちらの話なのか区別が付かなくなってくる」

という低評価レビューがありました。

作品の内容というよりも、「作品に合わない」という低評価でしたが、ほとんど低評価が見られません。

【面白い?】高評価のレビュー

『千年女優』(2002)にはどのような高評価レビューがあったのでしょうか。

映画レビューサイトをまとめてみると、

『千年女優』(2002)の高評価レビュー
Filmarks:★★★★☆ 4.5
「今敏監督という天才のセンスに惹かれるし、その演出には脱帽してしまう」
映画.com:★★★★★ 5.0
「今敏監督のアニメの良さを使った、アニメにしか出来ない表現は凄いです」
Rotten Tomatoes(海外の評価):★★★★★ 5.0
「インタビューとフィクションである映画の場面が上手い具合に混ざり合っていて不思議な世界観だった」

という高評価レビューがありました。

「不思議な世界観」を高く評価するレビューが多いです。

また、今敏監督の才能を高く評価するレビューや「今敏監督の最高傑作」と評価するレビューも多くありました。

世界的に高く評価されましたし、本作は「今敏監督の最高傑作」と言っても良いのではないでしょうか。

それくらい素晴らしいアニメーション映画でした。

日本の映画レビューサイト映画.comの点数は5点満点中4.0という高評価に。

ほとんどのレビューが高評価という希少な結果になりました。

海外の反応は?

『千年女優』(2002)は海外でも高い評価を受けました。

ファンタジア国際映画祭・最優秀アニメーション作品賞&芸術的革新賞、シッチェス・カタロニア国際映画祭・最優秀アジア映画作品賞を受賞。

アメリカの映画サイトThe Playlistが選ぶ、21世紀に入って現在(2016年)までに公開されたアニメ映画のベスト50では、23位にランクインしています。

『千年女優』(2002)の総合評価:今敏監督の最高傑作!

藤原千代子:ⓒKLOCKWORX Co.,ltd

今敏監督の最高傑作と名高い『千年女優』(2002)。

現実と幻想が融合した独特な世界観が観られる1作になっています。

また、奥の深い内容になっているので、何度も観ることで新たな発見や解釈があるのではないかと思います。

例えばラストの一言には、どのような意味があるのか。

「千年女優」の意味って何なのか。

この記事でも書きましたが、自分なりに解釈しながら観てみるとさらに面白くなるかと思います。

同じく今敏監督である『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の考察や解説が知りたい方はこちら。

今敏監督の作品『パプリカ』(2006)の考察や解説が知りたい方はこちら。

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