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愛がなんだ_感想・解説・考察

『愛がなんだ』(2018)は、2019年に公開された恋愛映画です。

当初は上映館72館からのスタートでしたが、評判が口コミで広がると全国152館で上映するまでになりました。

連日満席で立ち見が続くなど異例の人気となった本作の観客は10代~30代の女性やカップルが多くみられ、女性からの共感コメントも多数寄せられています。

成田凌演じるマモルの”追いケチャップ”やお風呂での”キューピーごっこ”などのラブラブシーンも話題となり、小規模映画でありながらロングランヒットとなりました。

それでは『愛がなんだ』(2018)について、あらすじと感想、評価をネタバレを含めて紹介していきます!

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『愛がなんだ』(2018)の作品情報とキャスト


愛がなんだ

作品情報

原題:愛がなんだ
製作年:2018年
製作国:日本
上映時間:123分
ジャンル:恋愛

監督とキャスト

監督:今泉力哉
代表作:『サッドティー』(2013)『退屈な日々にさようならを』(2017)

出演者:岸井ゆきの
代表作:『おじいちゃん、死んじゃったって。』(2017)『ここは退屈迎えに来て』(2018)

出演者:成田凌
代表作:『スマホを落としただけなのに』(2018)『翔んで埼玉』(2019)

出演者:深川麻衣
代表作:『パンとバスと2度目のハツコイ』(2018)『空母いぶき』(2019)

出演者:若葉竜也
代表作:『赤い糸』(2008)『曇天に笑う』(2018)

出演者:江口のりこ
代表作:『アントキノイノチ』(2011)『彼らが本気で編むときは、』(2017)

『愛がなんだ』(2018)のあらすじ

ソファでのテルコとマモル:(C)2019「愛がなんだ」製作委員会

山田テルコは半年前に偶然出会った田中マモルに恋に落ちる。

仕事中でも真夜中でもマモルから連絡があれば、他のことは放り出し会いに行くほど生活のすべてがマモルを中心に動いていた。

都合のいい女としか見られていなくても、マモルのそばにいられるならそれでいいのだ。

そんなある日、2人は肉体関係を持ったことがきっかけで急接近する。

この関係性の変化にテルコは、恋人に昇格できると舞い上がり、より一層マモルのお世話を焼く。

そんなテルコを鬱陶しく思い始めたマモルの態度は、だんだん冷たくなっていき、ついには連絡が途絶えてしまう。

落ち込んでいたテルコだが、気持ちを切り替えていこうとした矢先、突然またマモルから連絡が来る。

久々の再会に喜ぶテルコだったが、会いに行くとマモルの隣にはすみれという年上の女性がいた。

『愛がなんだ』(2018)の感想と考察

テルコ:(C)2019「愛がなんだ」製作委員会

『愛がなんだ』(2018)の感想

共感

『愛がなんだ』(2018)ははっきりいえば、ダメな大人のダメな恋愛を描いた作品です。

相手が自分を見ていなくてもいつか振り向いてもらえると信じ、ひたすら相手に尽くし続ける。

決してお互いの気持ちが交わることはない、客観的に見ればやめた方がいいと思うような不毛な恋愛です。

主人公のテルコはどんなに雑に扱われても、マモルが大好き。

そんなマモル中心な生活を送るテルコに初めは、見ていて呆れてしまいます。

しかし、見続けていると、脇目もふらずただマモルのことだけに一直線なテルコにいつの間にか感情移入し共感さえしてしまうのです。

一見ストーカーになりそうなほどですが、そこまで重く見えないのはテルコの明るくて深く物事を考えていない人間性が故なのでしょう。

葉子も

「あんたに同情すると損する」

というセリフを言っていましたが、本当にその通りだと思いました。

演技力が素晴らしい

本作に出てくる登場人物は、絶対こうはなりたくないと思うような男女ばかり。

しかし、どこか嫌いになりきれない魅力的な人物に仕上がっているのは、役者たちの演技力のたまものです。

主人公を演じた岸井ゆきのはもちろんのこと、中でもすごい存在感だったのがナカハラを演じた若葉竜也。

今まで話題作には、それほど出ていませんが、幼少期から舞台に出ているためキャリアも高く実力派俳優として個性的な監督たちから強い信頼を得ています。

ナカハラという役は出てくる登場人物の中で一番共感しやすい人物ですが、それは役者の演技力があってこその話。

しかし、若葉竜也はナカハラという役を完全に自分の物にし本当に存在しているかのような絶妙なリアルさを見事に表現していました。

特に物語の終盤でテルコに向かってナカハラが、

「幸せになりたいっすね」

というシーンはナカハラの切実な思いがひしひしと伝わってきて、胸が苦しくなります。

このセリフにナカハラの人間性が詰まっていると感じました。

『愛がなんだ』(2018)の考察

テルコはマモルに必要とされることで自分の存在価値を確認しており、マモルは自分に自信がないゆえに人を愛することがいまいちわかっていないのだと感じました。

恋のかたちは人それぞれであり、正解はありません。

お互いの思いが交差することはなくても、自分がよければそれでいい。

たとえそれが執着でも。

現代の若者には、本作のような曖昧な関係を続けている人も多いと思います。

なぜなら共感できる人が多い、それが本作がヒットした理由でもあるからです。

そういった人たちに向かって否定するのではなく、それも一つの恋愛のかたちであり自分の気持ちに正直にいることが、一番大切なのだと本作を通じて語りかけているのではないでしょうか。

【ネタバレあり】『愛がなんだ』(2018) 原作についての解説と映画版との比較

葉子:(C)2019「愛がなんだ」製作委員会

原作は?

『愛がなんだ』(2018)の原作は人気作家・角田光代が2003年に発表した同名恋愛小説です。

角田光代は珠玉の恋愛小説を数多く発表しており、『対岸の彼女』では第132回直木賞を受賞しました。

そしてこの小説の実写化に挑んだのは今泉力哉監督。

今泉監督は”恋愛映画の旗手”と呼ばれ、オリジナル脚本での作品が多いです。

しかし今回は原作がある作品ということで、脚本には本格的に携わらず、脚本家とタッグを組んで原作に基づきながら脚本づくりをおこなったそう。

小説と映画の違い

小説はテルコの心理描写が繊細に描かれていますが、登場人物それぞれの人間性がよりリアルに、そして丁寧に描かれているのは映画版の方でしょう。

映画版は小説と違う設定や新たに付け足した場面も多数ありますが、それにより現代の若者のリアルな恋愛と複雑な人間模様が見事に演出されていました。

ここで、小説と異なるが映画のストーリーに深みを出した点をいくつか紹介します。

海へ旅行に行くところ

原作ではテルコ、マモル、すみれの3人で行きますが、映画ではテルコ、マモル、すみれ、そしてナカハラの4人に設定が変更。

ナカハラとすみれが会うことによってナカハラが、葉子との関係について考え、離れるきっかけになるよう描かれています。

テルコが葉子に思いをぶつけるところ

原作にはなく、映画で追加になったシーン。

ナカハラから葉子とは離れるという思いを聞いたテルコは、好きという気持ちを都合のいいように使いナカハラを傷つけた葉子を批判します。

マモルのクズさばかりが目立っていますが、葉子もマモルとしていることは同じ。

しかしその行いを面と向かって指摘し、正す人は原作にはいないのです。

テルコが葉子に対して間違っていると指摘することで、原作より葉子が人として成長できたのではと感じました。

マモルがテルコに別れを告げるところ

原作では体調の悪いテルコを呼び出し一方的に、「もう会わない」と宣言するなど最後までマモルの自分中心さは変わりません。

しかし、映画では体調の悪いテルコを看病し煮込みうどんを作ってから「もう会わない」と宣言します。

マモルはすみれと会ったことによって人を好きになり愛おしく思う気持ちを知りました。

そして葉子から「あなたのしていることはおかしい」と指摘され、初めて自分がテルコに対していかに不誠実な行いをしているか考えることができたのです。

映画のマモルは、自分中心なだけじゃなく愛がなんなのか分からず探しもがいているためテルコとの関係が曖昧になってしまっているのだと思いました。

【ネタバレあり】『愛がなんだ』(2018)のラストシーンと結末を解説

歯を磨くテルコとマモル:(C)2019「愛がなんだ」製作委員会

『愛がなんだ』(2018)のラスト

マモルからもう会わないと宣言されたテルコは、

「もうとっくに冷めてる。いつまでもあなたのこと好きでいると思ってるの」

と本音とは真逆の発言をしますが、それを聞いたマモルはその言葉をそのまま受け取り納得してしまいます。

そしてテルコが男の人を紹介するよう頼むとマモルは安堵し、

「よかった、山田さんが俺を好きじゃなくて」

と笑うのです。

その後テルコ、マモル、すみれ、マモルの友人の4人で合コンを開く。

テルコはマモルの友人に興味のある素振りを見せると帰り道、2人でマモルとは別の方向に向かって歩き出します。

テルコはそうまでして、マモルとの繋がりをもっておきたかったのですが、それは好きという感情からくるものではなく”マモルへの執着”からくるものなのです。

しかし、そのことはテルコ自身もわかっていて、鏡の中の自分に向かって

「恋? なにそれ」

と言って笑います。

最後テルコが

「なぜだろう、私はいまだに田中マモルではない」

と言うシーンがありますが、この言葉はテルコがマモルに対して恋愛感情を超越した異常な感情を持っていることを表しているのだと思いました。

『愛がなんだ』(2018)の評価

ナカハラ、葉子、テルコ:(C)2019「愛がなんだ」製作委員会

主題

『愛がなんだ』(2018)の主題は題名にもある通り”愛”でしょう。

エンディング後のラストシーンでは

「33歳になったら象の飼育員になる」

というマモルの発言からテルコは象の飼育員になっています。

33歳のマモルの未来にはテルコはいないけどテルコはここにいることで満足なのです。

マモルが言っていた夢をテルコが叶えることで、マモルへの執着という愛の在りかを見つけられたように感じました。

評価

本作の映画レビューサイトでの評価は3.8。

共感できる人とまったく共感できない人の2つにはっきり分かれる難しい作品の割には高い評価だと思います。

レビューサイトの意見をいくつかまとめると

・自分の恋愛を見ているようでグサグサ刺さった

・テルコの思いにもはや狂気を感じた

・なんだかよくわからなかったが、演技力が素晴らしい

などです。

やはりそれぞれの恋愛の価値観や経験の差から意見は様々でした。

また、主人公を演じた岸井ゆきのは本作で第43回日本アカデミー賞新人賞を受賞。

テルコという重くなりそうな難しい役をうまく感情移入しやすいどこか愛らしいキャラクターに変化させたのは彼女の演技力があったからこそなので受賞も納得できます。

『愛がなんだ』(2018)のまとめ

お風呂でのテルコとマモル:(C)2019「愛がなんだ」製作委員会

口コミにより大きな話題をよんだ『愛がなんだ』(2018)。

人間模様と恋愛をリアルに描いた本作は万人に受け入れられる映画ではないかもしれません。

しかし、愛について考えるきっかけを与えてくれるようなメッセージが映画の中にたくさん込められています。

現代の若者の話ではありますが、どの年代の方が見ても少なからず心に響く作品となっているのではないでしょうか。

ぜひ幅広い層の方に見ていただきたい作品です。

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