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タリーと私の秘密の時間_感想・考察

『タリーと私の秘密の時間』(2018)は、ワンオペ育児に対して一石を投じる物語です。

アカデミー女優のシャーリーズ・セロンが18Kgも体重を増やして挑みました。

伏線がラストに向けて回収されていく本作は、ミステリアスなヒューマンドラマという新しいジャンルの作品です。

主演のシャーリーズ・セロンの演技力と、役作りに対する執念は素晴らしく、脇を固めるマッケンジー・デイヴィスは魅力あふれるタリーをみずみずしく好演しました。

本記事では『タリーと私の秘密の時間』(2018)の役作りや伏線を解説していきます!

【『タリーと私の秘密の時間』(2018)評価】

項目 評価 点数
知名度 ★★★☆☆ 75点
配役/キャスト ★★★★☆ 80点
ストーリー ★★★★☆ 80点
物語の抑揚 ★★★★☆ 80点
ドラマ性 ★★★★☆ 80点
意外性 ★★★★★ 100点

目次

『タリーと私の秘密の時間』(2018)作品情報


タリーと私の秘密の時間(吹替版)

製作年 2018年
原題 Tully
製作国 アメリカ
上映時間 95分
ジャンル ドラマ
監督 ジェイソン・ライトマン
脚本 ディアブロ・コディ
主要キャスト シャーリーズ・セロン(マーロ)/日本語吹替:本田貴子

マッケンジー・デイヴィス(タリー)/日本語吹替:行成とあ

マーク・デュプラス(ドレイグ)/ 日本語吹替:森宮隆

ロン・リヴィングストン(ドリュー)/日本語吹替:落合弘治

『タリーと私の秘密の時間』(2018)の概要

© 2018 TULLY PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

仕事も育児も手を抜かない完ぺき主義なマーロに、予定外の3人目の子どもができた。

家事や子どもの世話はマーロの担当で、疲労は日に日に溜まり、ついには心が折れてしまった。

そんなマーロは、兄からプレゼントされた「夜だけのベビーシッター」を雇うことになり、タリーという女性がベビーシッターとして現れる。

経験がなさそうな若い女性にベビーシッターなんてできるのか、と不安だったマーロだが、彼女の仕事は完璧。

よく眠れるようになり育児疲れから解放され、マーロの悩みも聞いてくれるタリーと絆を強めていく。

『タリーと私の秘密の時間』(2018)の感想と考察

© 2018 TULLY PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

『タリーと私の秘密の時間』(2018)の感想

『タリーと私の秘密の時間』(2018)の感想を書いていきます。

本作を予告で観た時、女性の友情のストーリーだと思い込んでいました。

ところが蓋を開けてみたら全く違って、ホラーかサスペンスというジャンルに分類されるのではないかと思いました。

本作の面白いところは、タリーとの交流でマーロが自分を取り戻すというストーリーから、タリーの本当の姿が分かったときに、何がマーロに起こったのかが分かるというところです。

ネタバレになってしまいますが、この展開はデヴィッド・フィンチャー監督の『ファイト・クラブ』(1999)と同じです。

極限まで追い込まれたマーロに起きる変化はあまりに悲しくてやりきれず、その頃夫は一体何を見ていたのかと、憤りを感じます。

育児に疲れた女性が観るには、本作はあまりにハードで正視していられません。

しかし、育児を女性にだけ任せる男性が観れば、自らの行動を見直すことができるはずです。

以上『タリーと秘密の時間』(2018)の感想でした。

『タリーと私の秘密の時間』(2018)の考察

『タリーと私の秘密の時間』(2018)の考察をしていきます。

本作は、主演のシャーリーズ・セロンが謎めいたベビーシッターと絆を強めていく物語だと思った人は、ラストに待ち受けている展開に驚くでしょう。

なぜなら本作は2面性があるストーリーだからです。

表向きは、若いながら知識と自信を持っているベビーシッターのタリーに子どもを預け、自分をケアする時間ができたことで、元の明るい自分を取り戻していくという話。

裏では、結局タリーはマーロが生み出した想像上の人物なので、マーロ自身が極度の睡眠状態に陥ってまで育児と家事をこなしていたという話。

ラストに裏の面が明らかになるのですが、マーロが睡眠不足で事故を起こすまで夫は全く気が付きません。

観客も夫と同じタイミングで知るので、夫が感じたショックを同じように感じることができるという演出です。

この演出をすることで、育児に無関心な人に対する強烈な批判をしているように思いました。

本作を観て、「イクメン」などという流行り言葉がなくなって、夫婦で家事と育児をすることが当たり前にならなければいけないと気づかされました。

『タリーと私の秘密の時間』(2018)の原題・タイトルの意味とは?

© 2018 TULLY PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

『タリーと私の秘密の時間』(2018)の原題とタイトルの意味について解説していきます。

本作の原題は「Tully」です。

ネタバレになってしまいますので、以下の文章は未見の方はご注意ください。

実はマーロの旧姓は「タリー」で、ベビーシッターは他ならぬマーロが作り出した過去の自分なのです。

人に頼ることができない完ぺき主義なマーロは、想像上の人物を作り出してしまうほど追い詰められてしまったのです。

唯一頼ることができる人物だと思ったタリーは、結局は過去の自分でした。

『タリーと私の秘密の時間』(2018)の楽曲や挿入歌は?サントラを紹介

© 2018 TULLY PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

『タリーと私の秘密の時間』(2018)の楽曲や挿入歌について解説していきます。

まずはサントラ収録曲をご確認ください。

『タリーと私の秘密の時間』(2018)サントラ収録曲
01. You Only Live Twice (Living Room Version) - Beulahbelle
02. Ride Into the Sun (Demo Version) - The Velvet Underground
03. Tiergarten (Supermayer Remix) [Edit] - Rufus Wainwright
04. Let You Go - BeulahBelle
05. Blue - The Jayhawks
06. In a Black Out (Instrumental) - Hamilton Leithauser + Rostam
07. You Only Live Twice - BeulahBelle
08. Abstract - Rob Simonsen
09. Choices and Judgments - Rob Simonsen
10. Jogging in the Park - Rob Simonsen
11. Bike Ride - Rob Simonsen
12. Time to Say Goodbye (Mermaid Scene) - Rob Simonsen
13. Tully - Rob Simonsen
14. Driving Back Home - Rob Simonsen

本作では音楽が登場人物の心情や、過去を表すアイテムになっています。

印象的に使われているのが「ジェイ・ホークス」の"Blue"です。

この曲は本作で2度流れています。

1度目は、過去に一緒に暮らしていた女性ヴァイと再会したとき。

2度目は、ブルックリンのバーでタリーとお酒を飲んでいたとき。

どちらのシーンでも過去に恋愛関係にあったと思われるヴァイという女性が関係しています。

"友人たちはみんなどこかへ行ってしまった ある日振り返るとそこにいたのはあなただけだった"

という歌詞です。

また、ブルックリンに向かう車中では、マーロの青春時代に聴いた「シンディ・ローパー」が、これでもかというほど流れます。

シンディ・ローパーはLGBTQに寛容な人物であり、40代で出産したシンガーでもあります。

かつて女性と一緒に暮らしていたタリーと、40歳を過ぎて出産するマーロを表しているのかもしれません。

マーロがブルックリンに行った理由は、過去に逃げたかったことだけではなく、過去との別れのためなのではないでしょうか。


『タリーと私の秘密の時間』(2018)の伏線を解説

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『タリーと私の秘密の時間』(2018)の伏線:タリーとは誰なのか?正体を解説

『タリーと私の秘密の時間』(2018)の伏線を解説していきます。

以下ネタバレがありますのでご注意ください。

結論から言うと、タリーは過去のマーロです。

厳密にいえば、極限まで疲労したマーロが作り出した想像上の人物なのです。

明らかになるのが、自動車で川に落ちた後に、ドリューが病院の受付でマーロの旧姓を聞かれて「タリー」と答えたことで全てが発覚します。

タリーの存在は、「若くて悩みなんてなかったあの頃の自分」であり、「こういう風に話を聞いてもらいたい」、「こんな風に笑いかけてもらいたい」というマーロの願いの表れです。

『タリーと私の秘密の時間』(2018)の見どころ

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『タリーと私の秘密の時間』(2018)の見どころ①:夫婦で観るべき映画

『タリーと私の秘密の時間』(2018)の1つ目の見どころ「夫婦で観るべき映画」を解説していきます。

本作は、究極の育児疲れが及ぼす恐ろしい精神的・肉体的影響をまざまざと私たちに突きつけてきます。

育児や家事は、女性だけのものではなく、当然夫婦で行うものです。

本作では、育児と家庭を母親だけが行うことで、計り知れない負担がかかっていることを伝えるという意図があります。

日本でも、家事の担当を書き出して「可視化」することで男性にもわかりやすくして、どちらか一方に負担がかからないように努力されている女性もいるようです。

気づいてくれない男性には、本作をバシッと観せることで、かなりの効果が期待できます。

そして育児、家事に追われる女性に対して本作は「無理はしないで」「育児や家事は協力してやっていけばいいんだよ」と、周りの人に頼ることに背中を押してくれます。

『タリーと私の秘密の時間』(2018)の見どころ②:【激太りとダイエット】過酷な役作りをしたシャーリーズ・セロン

『タリーと私の秘密の時間』(2018)では、シャーリーズ・セロンの作品にかける思いから、壮絶な役作りをしたことが分かります。

かつては美しかったであろうマーロは、育児や家事に追われて自分のケアを全くせず、体型や服装を気にすることがなくなり、だらしない体型になっています。

"シャーリーズ・セロンが演じる"ということに説得力を出すために、体重を18Kg増やしたそうです。

18Kgって、5歳ぐらいの子ども一人分の体重ですよ!

夜中に目覚ましをセットして、糖質たっぷりの食事をとり、糖分いっぱいの飲み物を飲むという生活でその体型を手に入れたとのこと!

そして撮影終了後のダイエットが壮絶です。

年齢を重ねて代謝が落ちてくる40代では、ちょっとやそっとじゃ痩せることができずに、元の体型に戻るのに1年半かかったらしいです。

健康的なダイエットと毎日のエクササイズによる地道な減量

自分に厳しすぎるストイックな女優シャーリーズ・セロンは健在です。

『タリーと私の秘密の時間』(2018)の最後は?ラストシーンや結末を解説

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『タリーと私の秘密の時間』(2018)の結末・ラストシーン

『タリーと私の秘密の時間』(2018)の結末・ラストシーンを解説していきます。

ブルックリンのバーで飲んだマーロとタリーは、車で家族の元へ帰ります。

居眠り運転をして車ごと川へおちてしまったマーロ。

病院のベッドであざだらけの姿で眠るマーロを見てドリューは驚きます。

ドリューは、ベビーシッターについて医者から聞かれても何も答えられず、マーロが極度の疲労になる理由も分かりません。

少しずつ事態を把握したドリューは、マーロの状態に気が付いてあげられなかったことを謝罪し「健康な君が必要なんだ。愛している」と伝えます。

ここでドリューとマーロは「I Love You」ではなく「I Love Us」と言うのです。

「Us」には、自分を犠牲にしてきたマーロに対して、自分を大切にして欲しいと願うドリューの気持ちがこもった素敵なセリフです。

『タリーと私の秘密の時間』(2018)のその後は?

『タリーと私の秘密の時間』(2018)のその後はどうなるのでしょうか?

マーロが極限まで追い詰められたことを知ったドリューは、今後は家事や育児を他人事にすることはないでしょう。

言われなければわからない人もいるし、助けを求められない人もいる。

「言ってくれたらやるのに」「言わなくても気づいてよ」というセリフは、よく耳にします。

マーロとドリューは、お互いの性格をより深く知ったことで、家事や育児という一つの目的に向かって協力できる夫婦になっていると思います。

【レビュー】『タリーと私の秘密の時間』(2018)の評価・評判

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【つまらない?】低評価のレビュー

『タリーと私の秘密の時間』(2018)の低評価レビュー
Filmarks:★★☆☆☆ 2.5
「ラストの展開はイマイチ乗れなかった。急に冷めちゃったし、夫が改心するって安易すぎる気がした」
映画.com:★★☆☆☆ 2.0
「予告編を見て分かる範囲から1mmもはみだしてない」
Rotten Tomatoes(海外の評価):★☆☆☆☆ 1.0
「トレーラーを見るだけで、すべての興味深いシーンがわかります」

本作の低評価のレビューは少なかったです。

低評価のレビューで共通しているのは「予告を観たら全部分かった」というものでした。

筆者は恥ずかしながら、まったく気づくことができなかったため、ラストの展開に新鮮に驚き、気分はどん底まで落ちました。

公式ホームページで「ミステリアスなヒューマンドラマ」と謳われていただけあって、謎を解くつもりで鑑賞した方がいたのかもしれません。

【面白い?】高評価のレビュー

『タリーと私の秘密の時間』(2018)の高評価レビュー
Filmarks:★★★★☆ 3.9
「シャーリーズセロンの役作りが凄い。気合の入り方と女優魂に加えて彼女自身の母としてのプライドとメッセージも乗っかっていた」
映画.com:★★★★★ 5.0
「マーロの苦しみに気付いたとき観客は2倍の苦しみを知ることになる、という仕組みは秀逸」
Rotten Tomatoes(海外の評価):★★★★★ 5.0
「脚本は驚異的で、演技は信じられないほど卓越している」

本作の高評価レビューで目立ったものは、展開のユニークさと、役者の演技力の高さです。

筆者が本作を観ようと思ったきっかけは、シャーリーズ・セロンの執念の役作りが話題になっていたからです。

実際に鑑賞して、彼女のレベルの高い演技力と説得力のある役作り、さらには若手のマッケンジー・デイヴィスのみずみずしい演技に惹きつけられました。

本作の展開は、ストレートに問題を訴えるよりもはるかに観客に問題を突きつけることができる仕組みになっています。

この工夫が逸品で、監督が意図した通りの作品になったのではないかと思います。

『タリーと私の秘密の時間』(2018)の総合評価:

© 2018 TULLY PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

本記事では『タリーと私の秘密の時間』(2018)の、役作りや伏線について解説していきました。

タリーという存在を通して、マーロが過去と向き合い決別するラストは、観ていて納得できるものでした。

一方、育児や家事に対して悪気なく無関心なドリューに対して寛容でいるのは難しかったです。

ラストで二人が同じ曲をイヤホンで聞きながらお弁当を作るシーンには、これから協力し合う未来が見えて希望がもてました。

しかし本作が問題提起している内容はかなりヘビーです。

シャーリーズ・セロンの気合の入った役作りは、本作を「ただのお話」にするつもりはないという表れだと思います。

鑑賞する前と鑑賞した後で、自分がいかに変わることができるか、関わることができるかが問われています。

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