ハンニバル・レクター博士が魅せる狂気とは? 映画『羊たちの沈黙』(1990)の原作や登場人物の解説と内容の考察【あらすじ、感想、ネタバレあり】

トマス・ハリスのベストセラー小説を原作とし、ジョナサン・デミ監督で映画化された『羊たちの沈黙』(1990)。

映画史に残る名キャラクターを生み出し、第64回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞、そして主演男優賞と主演女優賞といった主要5部門すべてを受賞するという快挙を成し遂げました。

原作の紹介を交えながら、『羊たちの沈黙』(1990)のあらすじや魅力を語っていきます。

『羊たちの沈黙』(1990)の作品情報とキャスト

作品情報

原題:The Silence of the Lambs
製作年:1990年
年製作国:アメリカ
上映時間:118分
ジャンル:ミステリー

監督とキャスト

監督:ジョナサン・デミ
代表作:『フィラデルフィア 』(1993) 『レイチェルの結婚』(2008)

出演者:ジョディ・フォスター/吹替:佐々木優子(クラリス・スターリング)
代表作:『タクシードライバー』(1976)『告発の行方』(1988)

出演者:アンソニー・ホプキンス/吹替:堀勝之祐(ハンニバル・レクター)
代表作:『マジック』(1978) 『日の名残り』(1993)

『羊たちの沈黙』(1990)のあらすじ

FBI訓練生クラリス:©1990 Twentieth Century Fox

ミズーリ州カンザスシティを中心に、若い女性ばかりが殺され、皮を剥がれるという猟奇的な連続殺人事件が発生した。

FBIは犯人を「バッファロゥ・ビル」と名付け、事件の捜査を続けるが一向に手がかりは得られない。

FBI行動心理学課の主任クロフォードは、一縷の望みを若き女性訓練生クラリス・スターリングに託す。

クラリスは、バッファロゥ・ビルを心理的な面から捜査(プロファイリング)すべく、ボルティモア精神病院に収監されていた元精神科医の凶悪殺人犯、ハンニバル・レクター博士のもとを訪れるが……。

【ネタバレあり】『羊たちの沈黙』(1990)の原作は?

原作者トマス・ハリス:©Getty Images

『羊たちの沈黙』(1990)には原作があるのかということを解説していきます。

結論から言うと、『羊たちの沈黙』(1990)の原作は同名の小説です。

ここから原作者のトマス・ハリスを紹介します。

ハンニバル・レクターの生みの親! 原作者トマス・ハリスとは?

トマス・ハリスはアメリカの小説家です。

40年以上の作家生活の中で、上梓した作品は2019年の『カリ・モーラ』を含めて6作品しかありませんが、そのほとんどが映画化されたベストセラーという、驚異の作家。

デビュー作の『ブラック・サンデー』は、国際的な配慮から日本では映画が公開されなかったため知名度は高くありません。

しかし、続く『レッド・ドラゴン』と『羊たちの沈黙』で、ハンニバル・レクター博士を生み出し、サイコスリラー作家の第一人者としての不動の地位を手に入れました。

その後はレクター博士を主人公とした『ハンニバル』、『ハンニバル・ライジング』を出版し、映画史にも大きな足跡を残しています

2019年、13年の沈黙を破り、レクター博士とは関係のない完全新作『カリ・モーラ』を出版し、話題となりました。

【ネタバレあり】『羊たちの沈黙』(1990)の登場人物を解説

猟奇殺人犯バッファロゥ・ビル:©1990 - MGM

『羊たちの沈黙』(1990)の登場人物を紹介していきます。

ハンニバル・レクター博士

本作のスタート時点では、9人を殺した罪で起訴されるも精神障害と診断され、ボルティモアにある精神病院に厳重に収容されています。

元精神科医ということもあり、他人を支配下に置くことを得意とする高い知性と、恐るべき凶暴性を有したまさに怪物のような男

また、幼少時の経験から食人の習慣を持っており、ハンニバル・ザ・カニバル(人食いハンニバル)のあだ名を持っています。

本作の終盤、自由になったレクター博士が恨み重なるチルトン院長を狙い、電話でクラリスにこう告げます。

「I'm having an old friend for dinner」

普通に考えれば「古い友人と夕食を食べようと思ってね」となるのですが、レクター博士の場合は「古い友人を夕食にしようと思ってね」となってしまうのです。

「収容中の身でありながらFBIの捜査に協力する」というレクター博士のモデルは、アメリカで300人以上を殺害したとされるシリアル・キラー、ヘンリー・リー・ルーカスです。

トマス・ハリスは作家になる前には記者として働いており、この頃の経験が、のちにハンニバル・レクターやバッファロゥ・ビルを生み出す土壌となりました。

クラリス・スターリング

FBIの訓練生で、レクター博士と運命的とも言える出会いを果たすことに。

はじめはレクター博士には軽くあしらわれてしまいますが、徐々に博士の興味の対象となり、秘めていたトラウマを吐露することになります。

クラリスのトラウマは、幼い頃に屠殺された羊たちを助けられなかったこと。

クラリスは羊たちの悲鳴を忘れることができず、殺人事件を自らの手で解決し、被害者の命を救うことで、羊たちの悲鳴を止めようとしているのです。

バッファロゥ・ビル

犠牲者の皮を剥ぐという残虐な行為から、「バッファロゥ・ビル」と名付けられた殺人鬼。

バッファロゥ・ビルもまた、クラリス同様にトラウマが行動の原動力となっています。

「女性になりたいのになれない」というトラウマを抱えているバッファロゥ・ビルは、女性の皮をまとうことで、女性になろうとしている哀しい異常者です。

「犠牲者の皮を使用して戦利品を作る」という信じがたい行為は、実際の猟奇殺人者エド・ゲインをモデルとしており、原作者トマス・ハリスは記者時代に、彼の事件を扱っていた経験があります。

【ネタバレあり】『羊たちの沈黙』(1990)を感想と考察

ハンニバル・レクター博士© 1990 Twentieth Century Fox

早速『羊たちの沈黙』(1990)の感想と考察を書いていきます。

映画史に残るキャラクター! ハンニバル・レクターの魅力

『羊たちの沈黙』の本筋は、連続殺人犯バッファロゥ・ビルと、クラリスたちFBIの息詰まる戦いを描いたサスペンス。

本作の最大の見どころはハンニバル・レクター博士とクラリスの関係性にこあると言えるでしょう。

訪れたクラリスを気に入り、様々な助言を与えていくレクター博士。

もともと精神科医であり、人の心に入り込むことに長けているレクター博士。

クラリスに連続殺人犯の犯人像に関する助言を与えつつも、彼女の心に潜むトラウマを明らかにしていきます(タイトルはクラリスのトラウマに由来しています)。

クラリスとレクター博士のやりとりは、計算されたカメラワークも手伝って、まるで視聴者が心を丸裸にされていくような錯覚すら覚えてしまうほどに圧巻。

たった20分間程度という登場時間の短さにも関わらず、まるで主役のような存在感を視聴者に与えるのは、レクター博士を演じるアンソニー・ホプキンスの怪演の為せる技でしょう。

アンソニー・ホプキンスはハンニバル・レクターを演じたことで、史上2番目に短い出演時間でのアカデミー賞主演男優賞を受賞しました。

また、レクター博士はAFI(アメリカン・フィルム・インスティチュート)によって選出された「アメリカ映画100年のヒーローと悪役ベスト100」において、堂々の1位となっています。

【ネタバレあり】『羊たちの沈黙』(1990)のシリーズや続編は?

クラリスとレクター:©1990 Twentieth Century Fox

ハンニバル・レクターが登場する作品は、原作・映画とも『羊たちの沈黙』を含めて4作品(テレビドラマを含めれば5作品)。

レクター・サーガと呼ばれる一連の作品を紹介していきます。

『ハンニバル』(2001)

『羊たちの沈黙』(1990)の10年後を描いた作品で、フィレンツェを舞台にクラリスとレクターの関係がさらに発展していきます。

日本ではR15指定で劇場公開されており、より凄惨な展開が観客にショックを与えました。

映画版と原作では、ラストの展開に決定的な違いがあります

『レッド・ドラゴン』(2002)

時系列的には『羊たちの沈黙』(1990)の直前までを描く前日譚であり、クラリスは登場せず、FBI捜査官ウィル・グレアムとレクター博士の因縁を、猟奇殺人事件を通して描いた作品です。

グレアムはクラリスと異なり、「猟奇殺人犯の思考に同調して手がかりを得る」という特殊な技能を持つ捜査官として描かれており、『羊たちの沈黙』(1990)とは違った雰囲気のサスペンスを楽しむことができます。

自らの歪な身体にトラウマを持ち、完璧な赤い竜になろうとするフランシス・ダラハイドとグレアムの心理戦、そこにレクター博士の邪悪な思惑が加わった複雑な展開が魅力です。

あまり知られていませんが、実は1986年に『刑事グラハム / 凍りついた欲望』(のちに『レッド・ドラゴン / レクター博士の沈黙』に改題)として、1度目の映画化がされました。

初めてレクター博士を演じたのはイギリスの名優、ブライアン・コックスです。

テレビドラマ『ハンニバル』(2013)でも原作として使用されており、映像化は合計3回

原作本についても、日本では初回の刊行以来「決定版」、「新訳版」と3度刊行されており、人気の高さを伺うことができます。

『ハンニバル・ライジング』(2007)

レクター・サーガの時系列としてはもっとも古く、ハンニバル・レクターがなぜカニバリズム(食人)に目覚め、殺人鬼となったかというトラウマを描いています。

青年レクターを演じたのは、フランスの俳優ギャスパー・ウリエル。

類まれな美貌で、少しずつ人間性を失っていくレクターを見事に演じました

『羊たちの沈黙』(1990)のまとめ

オスカー受賞:©Academy of Motion Picture Arts and Sciences

 トマス・ハリスは長い作家活動において、トラウマに直面した人々の運命を描いてきました。

怪物とされるハンニバル・レクターも、実のところトマス・ハリス作品の他の登場人物同様に、自らのトラウマに囚われている哀れな人間と見ることもできます。

連続殺人事件を解決して、心の中で繰り返される羊たちの悲鳴を止めようとするクラリスと、次々に女性を殺害して、理想の自分=女性になろうとするバッファロゥ・ビル。

そして他人のトラウマを巧みに利用し、精神を支配してゆくハンニバル・レクター。

『羊たちの沈黙』(1990)は、トラウマに人生を支配された人間たちのドラマであると言えます。

もっとも恐ろしいのは、自らが立ち向かうべきトラウマから逃げ、他人を攻撃することでトラウマを解消させようとする人間なのだということが、本作に秘められたテーマです。

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