ジェンダーを主題とした映画『リリーのすべて』(2015)の考察と評価【あらすじ、感想、ネタバレあり】

『リリーのすべて』(2015)はイギリス、アメリカ、ドイツで合作された伝記映画。

世界初の性別適合手術を受けた人物・リリー・エルベを題材とした、デヴィッド・エバーショフによる小説『The Danish Girl』をもとにした映画になっています。

本作で主人公、アイナー・ヴェイナーの妻を演じたアリシア・ヴィキャンデルはその高い演技力でアカデミー賞助演女優賞をはじめ、数々の映画賞を受賞しました。

同性愛に苦悩する夫とそれを受け入れようとした妻の葛藤を描いた『リリーのすべて』(2015)について、あらすじと感想、作品の魅力をネタバレを交えて紹介していきます!

『リリーのすべて』(2015)の作品情報

作品情報

原題:The Danish Girl
公開年:2015年
製作国:イギリス、アメリカ、ドイツ
上映時間:119分
ジャンル:ドラマ

監督とキャスト

監督:トム・フーパー
代表作:『英国王のスピーチ』(2010)『レ・ミゼラブル』(2012)

出演者:エディ・レッドメイン/吹替:福田賢二(アイナー・ヴェイナー)
代表作:『ファンタスティック・ビースト』シリーズ『レ・ミゼラブル』(2012)

出演者: アリシア・ヴィキャンデル/吹替:うえだ星子(ゲルダ・ヴェイナー)
代表作:『エクス・マキナ』(2015)『コードネーム U.N.C.L.E.』(2015)

『リリーのすべて』(2015)のあらすじ

アイナー・ヴェイナー:©︎Focus Features/Universal Studios

肖像画家のゲルダ・ヴェイナーは、風景画家の夫であるアイナーと仲良く暮らしていた。

ある日、ゲルダの制作中のモデルが来られなくなり、アイナーに脚のモデルを頼む。

その時、アイナーの中で性の違和感のようなものが目覚めた。

それからゲルダは、アイナーを女装させ、リリーという名の女性として知人のパーティーに連れて行った。

次第にアイナーは自分の中に潜んでいた性の違いを感じ始め、リリーという女として生きていくようになる。

『リリーのすべて』(2015)の原作・元ネタは?

アイナー・ヴェイナー:©︎Focus Features/Universal Studios

『リリーのすべて』(2015)の原作は本

『リリーのすべて』(2015)の原作は世界初の性別適合手術を受けた人物・リリー・エルベを題材とした、デヴィッド・エバーショフによる小説『The Danish Girl』。

邦題は『世界で初めて女性に変身した男と、その妻の愛の物語』であり、本作の公開に合わせて『リリーのすべて』と改題し、再出版されました。

『リリーのすべて』(2015)の題材となった人物リリー・エルベとは?

リリー・エルベはデンマークの画家であり、世界初の性別適合手術を受けた人物です。

本名はアイナー・モーウンス・ヴィーグナーといい、同じ画家であったゲルダ・ゴトリプと結婚。

性別適合手術後にリリー・エルベと名前を変え、新しいパスポートも入手しました。

リリーは女性の身体になるため、睾丸摘出や子宮移植など約1年間で5回の手術を受けましたが、手術の拒絶反応が重く、48歳で死去。

そんなリリーを妻であるゲルダは最期まで支援したそうです。

【ネタバレあり】『リリーのすべて』(2015)の感想

アイナーとゲルダ:©︎Focus Features/Universal Studios

リリーを支えたゲルダに涙

『リリーのすべて』(2015)は女になっていく夫を支援する妻の物語でもあります。

今まで夫であり、男であると信じていた人がある日を境に、女になっていくなんて妻としては当惑するはず。

実際、映画でもアリシア・ヴィキャンデル演じる妻、ゲルダは女に目覚めていく夫に当惑し葛藤していました。

この状況であれば、すぐに離婚、もしくは別居していたとしてもおかしくはないと言えます。

しかし、ゲルダはそうはしませんでした。

女に変わっていく夫に葛藤しながらもそれを受け入れたのです。

性別適合手術をし、亡くなるまで彼女は夫を支え続けました。

それは夫を心から愛していたからに他ならないでしょう。

愛していなければ、夫を拒絶し別れていたに違いありません。

その人の全てを受け入れることこそ“愛”であると強く感じました。

ラストで夫であるアイナー(リリー)が手術の拒絶反応で亡くなってしまったあと、ゲルダが涙するシーンには胸がせまります。

夫を受け入れ、最期まで支え続けてきたゲルダの愛に涙。

主演エディ・レッドメインの名演技

アカデミー賞で助演女優賞を受賞したアリシア・ヴィキャンデルの演技も素晴らしかったですが、主演のエディ・レッドメインの演技も見事でした。

ちなみにエディ・レッドメインはアカデミー賞主演男優賞にノミネートされています。

男から女に変わっていくという難しい役柄であったと思いますが、見事に演じきっていました。

俳優とキスしたり、悩んでやつれていく感じや手術で弱りかけている姿のエディ・レッドメインの役作りは素晴らしかったです。

また、リリー・エルベという女性になったエディ・レッドメインは本当に女性と見間違えるほど完成されたものでした。

これはエディ・レッドメインの役作りの賜物といえるでしょう。

『リリーのすべて』(2015)のメッセージ・主題を考察

アイナーとゲルダ:©︎Focus Features/Universal Studios

『リリーのすべて』(2015)の主題は性(ジェンダー)。

昨今では同性愛を告白することもそれほど珍しいことでもなく、テレビなどでよく見かけることもあり、性別適合手術を受ける芸能人も増えてきています。

しかし、性別適合手術を経た人のうち、世間の認識との誤解に苦しんで自殺した人の割合は全体の4割もあり、全体の7割は自殺を考えたとのこと。

性同一性障害が世間に認知されてきたとはいえ、まだ理解されるまでには至っていないと言えます。

また、理解だけでなく、法の整備も同様。

ちなみにリリーが性別適合手術を受けた1930年のデンマークでは刑法により同性愛を犯罪と規定していました。

性に悩む人たちが自分らしく生きられるように、性への理解を深め、そして法の整備を進めていく必要があるのではないでしょうか。

本作を観ると性同一性障害の人がどれだけ苦しみ、どれだけ葛藤しているかが分かります。

本作でリリーは死の間際「ようやく本当の自分になれた」と言いました。

性に悩む人たちが本当の自分で生きられるように願うばかりです。

『リリーのすべて』(2015)の評価

アイナーとゲルダ:©︎Focus Features/Universal Studios

『リリーのすべて』(2015)はどのような評価がなされているのでしょうか。

映画レビューサイトでのレビューをいくつかまとめると、

・「愛するアイナーの為に尽くそうとする女心が垣間見え、悲しい思いで観ていた」
・「ゲルダの夫に対する愛こそ、見返りを求めない本物だと感じられた」
・「どこまでも見捨てない本当の愛を見た」

など、「本物の愛を見た」「本当の愛を感じた」という評価が多いです。

日本のレビューサイトの点数は5点満点中3.8と高評価。

『リリーのすべて』(2015)は伝記ドラマではありますが、ラブストーリーであるともいえるでしょう。

実際、主演のエディ・レッドメインも「20世紀の最も素晴らしいラブストーリーの1つ」と語っています。

『リリーのすべて』(2015)で究極の愛を感じてみてください。

『リリーのすべて』(2015)のまとめ

ゲルダ:©︎Focus Features/Universal Studios

自分の性に悩む夫とそれを支えた妻の究極のラブストーリー『リリーのすべて』(2015)。

ラストで「本当の自分になれた」と話すアイナーと亡くなった夫のそばで泣くゲルダには本当に胸が苦しくなりました。

また、エディ・レッドメインとアリシア・ヴィキャンデルの演技はとても素晴らしかったです。

『リリーのすべて』(2015)を観て少しでも性同一性障害の理解が深まり、自分らしく生きられる世の中が来て欲しいと願います。

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