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リチャード・ジュエル_感想・考察

『リチャード・ジュエル』(2019)は、メディアとFBIにより1996年のアトランタ爆破テロ事件の容疑者にされてしまったリチャード・ジュエルを描いたドラマ映画です。

監督は巨匠クリント・イーストウッド。

本作はナショナル・ボード・オブ・レビュー賞、AFIアワードでトップ10映画を受賞しました。

英雄から一転、容疑者になってしまったリチャード・ジュエルと彼を取り巻く人々のドラマを描いた『リチャード・ジュエル』(2019)について、感想・考察、真犯人の正体を解説していきます!

【『リチャード・ジュエル』(2019)の評価】

項目 評価 点数
知名度 ★★★★☆ 80点
配役/キャスト ★★★★☆ 75点
ストーリー ★★★★☆ 85点
物語の抑揚 ★★★★☆ 85点
ドラマ ★★★★☆ 85点
サスペンス ★★★★☆ 85点

目次

『リチャード・ジュエル』(2019)の作品情報


リチャード・ジュエル(吹替版)

製作年 2019年
原題 Richard Jewell
製作国 アメリカ
上映時間 131分
ジャンル ドラマ
監督 クリント・イーストウッド
脚本 ビリー・レイ
原作 American Nightmare: The Ballad of Richard Jewell(アメリカの悪夢:リチャード・ジュエルのバラード)
主要キャスト ポール・ウォルター・ハウザー(リチャード・ジュエル)/ 日本語吹替:かぬか光明

サム・ロックウェル(ワトソン・ブライアント)/ 日本語吹替:家中宏

キャシー・ベイツ(バーバラ・"ボビ"・ジュエル)/ 日本語吹替:小宮和枝

オリヴィア・ワイルド(キャシー・スクラッグス)/日本語吹替:庄司宇芽香

『リチャード・ジュエル』(2019)の概要

取材を受けるリチャード・ジュエル:ⓒWarner Bros. Entertainment Inc.

警備員としてアトランタオリンピック会場付近の警備をしていたリチャード・ジュエルは、ベンチの下に置いてある不審なバッグを発見する。

リチャードは不審物として通報し、警察が確かめると爆弾であることが判明。

リチャードをはじめ、警備員や警察は観客を避難させたが、爆弾が爆発してしまい、2人の死者と100人以上の負傷者を出す爆破事件になってしまう。

第一発見者であり、避難をさせて命を救ったリチャードは、取材を受ける中で英雄とされたが、数日後、地元新聞社が「FBIはリチャードを容疑者として疑っている」と報じた。

FBIとメディアにより、英雄から一転、爆破事件の容疑者になってしまったリチャードは、弁護士ワトソン・ブライアントに助けを求め、無実を証明していく。

『リチャード・ジュエル』(2019)の感想と考察

リチャード、ワトソン、ボビ:ⓒWarner Bros. Entertainment Inc.

『リチャード・ジュエル』(2019)の感想

『リチャード・ジュエル』(2019)は、爆発物を発見し、多くの命を救った英雄なのに、一転、爆破事件の容疑者になってしまったリチャード・ジュエルの運命と彼を取り巻く人々のドラマが面白い映画でした。

一体、リチャードの運命はどうなるのか、冤罪を晴らすことができるのか、というストーリーに惹きつけられて、最後まで飽きることなく観ることができます。

また、本作はクリント・イーストウッド監督らしい重厚な人間ドラマも見どころ。

爆破事件の容疑者にされてしまったリチャード、彼の無実を信じて協力する弁護士のワトソンと母のボビ、犯人に仕立て上げようとするメディアとFBI。

彼らの織り成す人間ドラマに魅了されます。

国家を相手に立ち向かおうとするワトソン弁護士の無謀さも良かったですが、息子を信じ、涙を流しながら会見する母の愛も良かったです。

メディアの報道が100%真実だとは限りません。

メディアの報道について疑う目を持つ必要があるのではないかと本作を観て思いました。

『リチャード・ジュエル』(2019)の考察

『リチャード・ジュエル』(2019)はなぜ面白い映画なのでしょうか。

本作では一般市民vsFBI、メディアという対立があったからだと考えられます。

リチャード・ジュエルは一般人、ただの弱者であるのに対し、FBIとメディアは強者であり、彼らが敵となってしまいました。

弱い立場の者がどのようにして強い立場の者、つまり強敵を倒していくのかが気になりますし、強敵を倒すことでカタルシスを得ることができます。

これは、漫画や小説の手法ではよくありますし、最近では日本の企業モノのドラマではよく見られます(弱小中小企業が大企業相手に闘う)。

もちろん面白い理由は一つだけとは言えませんが、巨大な力に立ち向かっていくリチャードの姿が共感を呼んだのは、面白かった大きな要因であると言えるでしょう。

『リチャード・ジュエル』(2019)の主題(メッセージ)を解説

警備するリチャード・ジュエル:ⓒWarner Bros. Entertainment Inc.

リチャード・ジュエルが伝えたいこととは?

『リチャード・ジュエル』(2019)の大きな主題(メッセージ)は、メディアや権力の暴走です。

本作はFBIや新聞社はよく調査もせずにリチャードを容疑者にしました。

いわば冤罪です。

警察のずさんな捜査や数字を取りたいがために、事実を捏造して報道するメディアの犠牲になっている悲劇が起こっているのです。

冤罪のために人生がめちゃくちゃになってしまった人もいるでしょう。

日々、報道されているニュースや記事は、果たして真実なのでしょうか。

最近ではSNSで情報を得ている人も多いでしょう。

もしかしたら本作のように誤報を流しているかもしれません。

私たちは情報を鵜呑みにせず、自分で考える力や真実を見極める眼を養っていく必要があるようです。

【なぜ?】『リチャード・ジュエル』(2019)の疑問を解説

ワトソン:ⓒWarner Bros. Entertainment Inc.

リチャード・ジュエルはどのようにして爆弾を発見したのかを解説

リチャード・ジュエルは、1996年アトランタオリンピックが開催されている間、ライブを行っていたセンテニアル・オリンピック公園で警備の仕事をしていました。

その警備中にベンチの下に不審なバッグが置かれているのを発見。

警察を呼んで、中身を確かめてみると、爆弾が入っていたのです。

リチャード・ジュエルが犯人だと疑われるのはなぜなのかを解説

リチャード・ジュエルが犯人だと疑われるのは、何か証拠が出てきたわけではなく、彼の印象や生活状況が原因でした。

「犯人像と一致している」「母親と2人暮らしの醜いデブ」といった印象だけ、簡単に言えば「犯人っぽい」というだけで疑われてしまいます。

また、正義に執着しているなど、彼の虚栄心が強い性格(態度)も疑いの度合いを強めてしまいました。

かなりいい加減であったことが分かります。

マスコミ・メディアがリチャード・ジュエルの味方をしないのはなぜなのかを解説

マスコミ・メディアがリチャード・ジュエルの味方をしないのは、初めからリチャードを犯人だと決めつけていたからではないでしょうか。

犯人だと思い込んでいたから、味方をする気にならなかったと考えられます。

また、リチャードの印象が良くなかったというのも、一つの理由ではないかと思います。

もし、リチャードが結婚して家庭を持って、真面目に働き、見た目も良ければ、マスコミ・メディアは彼の味方をしたかもしれません。

34歳で結婚もしておらず、母親と2人暮らしの醜いデブでは味方しようと思わず、むしろ犯人と疑っていたのではないでしょうか。

人は見た目ではないと言いますが、人の印象(見た目)は思っている以上に大事です。

ずさん過ぎる? FBIの捜査を解説

FBIの捜査はずさんでした。

犯人の証拠を見つけるわけではなく、以前、起きた爆弾事件の犯人像に似ているというだけで捜査を進め、誘導尋問や証拠の捏造もやりました。

これは、捜査ではなく、リチャードを犯人に仕立て上げようとしているだけです。

犯人逮捕の手柄を世間にアピールするため、世間の非難を浴びないためにしたと思われるあくどい所業です。

『リチャード・ジュエル』(2019)はハッピーエンドなのかを解説

『リチャード・ジュエル』(2019)はハッピーエンドであったと思います。

なぜなら、無実が証明されたから。

中には冤罪で長い間、刑務所で過ごすことになった人もいますし、もっと酷ければ、死刑になってしまった人もいます。

そう考えると、リチャードは名誉を傷つけられ、苦痛を味わいましたが、無実が証明されたわけなので、良かったのではないかと思います。

『リチャード・ジュエル』(2019)の原作や元ネタとは? 映画と現実の違いを比較

ボビ:ⓒWarner Bros. Entertainment Inc.

『リチャード・ジュエル』(2019)の原作と元ネタ

『リチャード・ジュエル』(2019)の原作・元ネタは、マリー・ブレナーという女性の作家・ジャーナリストが、1997年に雑誌『ヴァニティ・フェア』に寄稿した記事『American Nightmare: The Ballad of Richard Jewell(アメリカの悪夢:リチャード・ジュエルのバラード)』が元になっています。

ちなみに『ヴァニティ・フェア』という雑誌は、ファッションや時事問題を扱うアメリカの雑誌です。

【比較】『リチャード・ジュエル』(2019)の原作(真実)と映画版の違いは?

『リチャード・ジュエル』(2019)の原作(真実)と映画版では違いがあるようです。

ここではその違いについて紹介していきます。

原作と映画の違い
・アトランタジャーナルの女性記者は、映画のようにFBI捜査官と体の関係を持って情報を聞きだしたという事実はない
・アトランタジャーナルはFBIがリチャードを疑っている事実を載せようとしたが、事実かFBIに聞いたため、掲載を遅らせた
・弁護士はアトランタジャーナルを名誉毀損で訴えたが敗訴する
・リチャードは名誉を傷つけられたとして、訴訟を起こしている

・女性記者が公衆電話と現場を歩いてリチャードが犯人でないことを確証、記事にしたが、映画では描かれていない

・訴えられたあと、女性記者は精神的に病んで薬物中毒で自殺する

現実は、訴訟や自殺が絡んでいるため、映画よりドロドロした感じになっています。

『リチャード・ジュエル』(2019)の最後は? ラストシーンや結末を解説

リチャードとワトソン:ⓒWarner Bros. Entertainment Inc.

『リチャード・ジュエル』(2019)の結末・ラストシーン

『リチャード・ジュエル』(2019)の結末は、リチャード・ジュエルの操作が始まって88日後が経過したある日、リチャードとワトソンがレストランで食事していたところにFBI捜査官がやって来ます。

FBI捜査官はリチャードとワトソンに書類を渡して去りました。

その紙は、リチャードの無実を告げるものだったのです。

それから6年が経過し、リチャードは警察官になり、真犯人の逮捕をワトソンから知らされるというラストになりました。

証拠が出なかったいう紙を読んだ時、涙を流したリチャードの表情がこれまでの忍耐と苦労を感じさせましたし、その後、ワトソンがリチャードの隣に座り、リチャードにハグをするシーンは感動的であり、印象に残ります。

本作のラストは真犯人の逮捕を告げるという割と淡々としたものになっていました。

しかし、変に盛り上げたりしないこのラストのほうが作品の温度として良かったと思います。

『リチャード・ジュエル』(2019)の真犯人の正体を解説

『リチャード・ジュエル』(2019)の真犯人は元陸軍のエリック・ルドルフという男です。

彼は、本作のアトランタオリンピック公園爆破事件だけでなく、中絶手術を行う産婦人科医院爆破事件、レズビアン・クラブ爆破事件を起こし、FBIから重要指名手配犯トップ10に指名されます。

逃亡者となっていたルドルフは、2003年5月31日、ゴミ箱漁りをしていたところを新人警官に逮捕されました。

『リチャード・ジュエル』(2019)のその後、現在は?

リチャード・ジュエルは保安官を務めるなどしていましたが、2007年に44歳という若さで心臓疾患により死んでしまいます。

犯人であるエリック・ルドルフは、2005年に終身刑を言い渡されます。

【レビュー】『リチャード・ジュエル』(2019)の評価・評判

リチャードとワトソン:ⓒWarner Bros. Entertainment Inc.

【つまらない?】低評価のレビュー

『リチャード・ジュエル』(2019)はどのような低評価レビューがあるのでしょうか。

映画レビューサイトをまとめてみると、

『リチャード・ジュエル』(2019)の低評価レビュー
Filmarks:★★☆☆☆ 2.5
「本作は実際の爆破事件を扱っていますが、当然のことながら演出上の脚色がなされています」
映画.com:★★☆☆☆ 2.5
「予想していたよりもあまり展開に起伏が無く、淡々と進んでいった感じに映った」
Rotten Tomatoes(海外の評価):★★☆☆☆ 2.5
「評価が良いのは、イーストウッド監督の名前のおかげで、はっきりって過大評価ではなかろうか」

という低評価レビューがありました。

「事実を隠蔽している」「展開に起伏がない」という低評価が見受けられました。

映画なので面白くするために、脚色するのは仕方のないことではないでしょうか(事実とあまりにもかけ離れていたら問題ですが)。

淡々と描くのはクリント・イーストウッド監督の作風なのではないかと思います。

【面白い?】高評価のレビュー

『リチャード・ジュエル』(2019)はどのような高評価レビューがあるのでしょうか。

映画レビューサイトをまとめてみると、

『リチャード・ジュエル』(2019)の高評価レビュー
Filmarks:★★★★☆ 4.5
「母の愛と情熱的で正義感溢れる弁護士の姿に心打たれ、ラストは涙」
映画.com:★★★★☆ 4.5
「映画の中に引き込まれる、目が離せなくなる映画」
Rotten Tomatoes(海外の評価):★★★★★ 5.0
「この物語、このテーマ、このスタイル、ってことで、もう最高の映画体験」

という高評価レビューがありました。

「メディアの怖さを知った」「クライマックスでは涙がでる」といったレビューが多いです。

また、クリント・イーストウッド監督を評価するレビューやキャストの演技(特にポール・ウォルター・ハウザー、サム・ロックウェル、キャシー・ベイツ)を高く評価するレビューも多くありました。

90歳になる高齢なのに精力的に映画を作るクリント・イーストウッド監督は、もはや伝説と言ってもいいのではないでしょうか。

日本の映画レビューサイト映画.comの点数は5点満点中3.9という高評価に。

全体的に高評価な結果となりました。

『リチャード・ジュエル』(2019)の総合評価:メディアの怖さを描いた傑作!

リチャードとワトソン:ⓒWarner Bros. Entertainment Inc.

非情な運命を背負ったリチャードと彼を助けるワトソンらの闘いが涙を誘う『リチャード・ジュエル』(2019)。

キャストの演技は素晴らしかったですし、高齢なのに魅力的な映画を撮り続けるクリント・イーストウッド監督に脱帽です。

本作ではメディアの怖さも知りました。

クリント・イーストウッドファンでなくても、ぜひ観ていただきたい作品です。

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