
『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)は、不屈の精神と妻への一途な愛でインドで生理用ナプキンを開発した男の物語です。
インドでタブーとされる「生理」に真っ向から向き合い、愛する妻に安全で安心なナプキンを使ってもらうために全人生をかけた一人の男の感動の実話。
インド映画特有のミュージカルシーンもありつつも、内容に焦点を当てたことで、上映時間はインド映画にしては珍しく2時間17分に収まりました。
感動必至と言われた本作の魅力と、本人の現在や時代背景・いつの話なのかを解説していきます。
【『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の評価】
項目 | 評価 | 点数 |
知名度 | ★★★☆☆ | 70点 |
配役/キャスト | ★★★★☆ | 80点 |
ストーリー | ★★★★★ | 90点 |
物語の抑揚 | ★★★★★ | 90点 |
ドラマ性 | ★★★★★ | 100点 |
音楽と踊り | ★★★★☆ | 80点 |
目次
- 1 『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)作品情報
- 2 『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の概要
- 3 『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の感想と考察
- 4 『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の登場人物・主要キャラクターを解説
- 5 【なぜ?】『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の疑問を解説
- 6 『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の原作やモデルとは? 現実と映画版との比較
- 7 『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の最後は? ラストシーンや結末を解説
- 8 【レビュー】『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の評価・評判
- 9 『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の総合評価:問題は生きるチャンス
『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)作品情報
製作年 | 2018年 |
原題 | Pad Man |
製作国 | インド |
上映時間 | 137分 |
ジャンル | ドラマ、コメディ |
監督 | R・バルキ |
脚本 | R・バルキ |
主要キャスト | アクシャイ・クマール(ラクシュミカント・チャウハン)/ 日本語吹替:志村知幸
ソーナム・カプール(パリー・ワリア)/日本語吹替:下田屋有依 ラディカ・アプテ(ガヤトリ・チャウハン)/日本語吹替:濱口綾乃 |
『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の概要

(c) 2018 CAPE OF GOOD FILMS LLP. All Rights Reserved.
インドの小さな村で新婚生活を送るラクシュミは、溶接工として働いている。
ある日、妻が生理の処置に「スクーターを拭く布より汚れた布」を使っていることを知り、高額な海外製のナプキンを購入して妻にプレゼントする。
しかし金額を知った妻から「明日食べるバターやミルクが買えなくなる」と言われて突き返されてしまう。
ラクシュミは、妻の健康のために自分の手で安価で安心なナプキンを作ることを決意。
そんなラクシュミを村の人たちは忌まわしく思い、遂にラクシュミは村を離れることになった。
お金もなく知識もない、ナプキン開発への険しい道のりの中で、新たな出会いが訪れて彼の運命は大きく変わり始める。
『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の感想と考察

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『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の感想
『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の感想を書いていきます。
ラクシュミは生まれながらの天才ではありません。
大学で勉強をして、ナプキン製造機を作ったわけではないのです。
手先が器用な平凡な中年男性です。
しかし彼には「妻への愛」という突出したパワーを持っています。
ラクシュミの心は真っ白の紙のようで、インドの古いしきたりにも疑問を持ちます。
そんなラクシュミだから、5千万円する機械を自分で作ろうと思えたのです。
人生には病気やけがは付きものですが、古い習慣で病気を招くことなんてラクシュミには考えられなかったのだと思います。
どうやって生きてきたらこんな純粋で、愛や工夫に満ちた人間になれるのだろうと、画面に目が釘付けになりました。
『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の考察
ラクシュミが女性用ナプキンの開発に成功したきっかけとはなんでしょうか。
本項では女性用ナプキン製造機の開発に至ったラクシュミの3つの行動を考察していきます。
1つ目の行動:村を出たラクシュミは、綿研究所に赴き、生理用品の素材はセルロース繊維ということを知ります。
2つ目の行動:大学教授の息子にインターネットでセルロース繊維を販売している会社を調べてもらい、その会社からサンプルを手に入れました。
3つ目の行動:ラクシュミの目論見を知った教授から嫌味を込めて、5千万円以上する「ナプキン製造機」の画像を見せられます。
このハイテクマシンの構造を見たラクシュミは、持ち前の手先の器用さでマシンを簡易化して作ろうと考えます。
ラクシュミは能動的な人間なので、何かを待つということはしません。
綿研究所へ行き、知識を得るために教授の家で住み込みで働き、開発するお金がなければ金貸しにマッサージをしてお金を貸してもらいます。
開発が成功したきっかけは運命ではありません。
彼は考えて行動し、失敗を繰り返してもまた考えて行動したことで、自ら成功を掴んだのです。
『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の登場人物・主要キャラクターを解説
ラクシュミカント・チャウハン(演: アクシャイ・クマール)

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妻のガヤトリを心から大切に思う溶接工。
古い習慣に疑問を抱き、女性が生理中に使用している布は、体に悪く病気を招くことを医者から聞かされる。
妻の体の為に、高額な輸入品に頼らず、自分の手で安価で安全な生理用品を作ることを決意する。
演じるアクシャイ・クマールは、ボリウッドきっての演技派と言われている。
パリー・ワリア (演:ソーナム・カプール)

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ラクシュミの女性用ナプキンの最初の客。
経営学を学ぶ現代的な女性。
ラクシュミの熱意と信念に突き動かされて、ラクシュミとインドを周り、女性が自立しするために働く場を作る。
演じるのは女優でモデルのソーナム・カプール。
ガヤトリ・チャウハン(演:ラーディカー・アープテー)

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ラクシュミの妻。
ラクシュミを心から愛しているが、タブーである「生理」を目的としたラクシュミの商品開発を喜ぶことができない。
村の人たちからラクシュミを一家の恥と言われ、最終的には実家に連れ戻されてしまう。
演じるのはラーディカー・アープテー。
多くの舞台に立ち、インド映画界における#Metoo運動を支持している。
【なぜ?】『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の疑問を解説

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ラクシュミが女性用ナプキンを開発するのはなぜかを解説
ラクシュミが女性用ナプキンを開発するのはなぜでしょう。
愛する妻が汚れた布で生理の処置をしていることを知ったラクシュミは、自動玉ねぎ切り機を作ったように、自分の手で女性用ナプキンを作ることを決意します。
インドでは海外製品は高額であることと、「生理」そのものがタブーで話題にすることもないため、インド人女性の12%しかナプキンを利用していないというの実情がありました。
ラクシュミはそんなインドを変えようとしたのではなく、一人の愛する女性の健康だけを思って開発するのです。
ラクシュミはなぜ変人扱いされるのかを解説
本作でラクシュミがなぜ変人扱いされるのかを解説していきます。
インドでは「生理は不浄」とされておりタブー視されているのです。
本作に描かれている、インドの生理事情が分かるエピソードをご紹介しましょう。
生理になったガヤトリは、部屋を出て、廊下で過ごすようになります。
生理になったら5日間は、みんなと同じ室内にいることができず、男性との接触もできないのです。
女性でも口にすることがない「生理」を、堂々と口に出し、商品を作ろうとする姿はインドの人から見たら変人そのものです。
ラクシュミがどんな人間か知っている親や兄妹でさえも、一家の恥だと言い出します。
パッドマンはいつの話なのか? 時代背景や歴史を解説
『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の時代背景を解説していきます。
本作がいつの話なのかというと舞台となっているのは2001年のインドです。
冒頭のエピソードから、インド女性の12%しかナプキンを使っていないという情報が飛び込んできます。
経済成長が著しい国、インドの実態を知って驚きました。
その理由は、インドは経済成長が著しい国であると同時に、信仰に熱心な国であるということです。
本作でも何度かラクシュミとガヤトリがデートで「神様礼拝所」で礼拝をするシーンがあります。
インドにおける「伝統的な習慣」は人々の生活に根付いて切り離すことができないものになってることの表れだと感じました。
55ルピーは高い?インドの値段の相場を解説
本作では「55ルピー」という金額を聞いてみんなものすごく驚いていましたね。
一体どれぐらいの金額なのでしょうか。
答えは『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の公式ホームページに載っていました!
2001年ソフトドリンクやコーヒーが1杯5ルピーとなっている。
「ナプキン55ルピー」はドリンク代の11倍の値段なので、今の日本に当てはめてみると、マックのドリンク類が1杯100円としてその11倍で「ナプキン1,100円」ということになる。
日本ではだいたい400円ぐらいですから、約3倍です。
布なら無料なのに、1,100円も自分のために使うということは考えられないでしょう。
そんなインドで、高価な海外品の1/3の金額で購入できるようにしたラクシュミは、本当に多くの女性を救ったヒーローです。
ラクシュミとパリーに恋愛感情はあった? なぜ付き合わなかったのかを解説
本作でラクシュミとパリーには恋愛感情はあったでしょうか?
筆者は恋愛感情はあったと思います。
少なくともパリーはかなり最初の方からラクシュミを意識していたのではないでしょうか。
ラクシュミは事業に夢中で、国連の演説の前でキスされるまで、パリーの気持ちも自分の気持ちも気づいていなかったと思います。
「このまま付き合うのか?奥さんはどうなる?」と、観客がやきもきする絶妙なタイミングでガヤトリからの電話が鳴るのです。
パリーはラクシュミが奥さんの元へ帰れるように、あえて彼を突っぱねます。
パリーは綺麗で聡明で精神的にも大人!
元はといえば奥さんのための商品開発だったので、パリーと付き合う展開は不自然ですからね。
アルナーチャラム・ムルガナンダムが受賞したパドマ・シュリー勲章とはなにかを解説
アルナーチャラム・ムルガナンダムがインド政府から授与されたパドマ・シュリー勲章は、どのような勲章なのかを解説していきます。
パドマ・シュリー勲章とは、インドで1954年に制定された、民間人を顕彰する勲章のことです。
芸術や教育、社会福祉などの分野で多大な貢献を果たした人物を受賞対象としています。
毎年授賞式が行われており、アルナーチャラム・ムルガナンダムは、2016年に受賞しました。
『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の原作やモデルとは? 現実と映画版との比較

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『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の原作と元ネタ
本作はアルナーチャラム・ムルガナンダムという男性の実話を元にした作品です。
一途で情熱と行動力溢れるこの男性が、本当に存在していることに驚きました。
ゴムボールに動物の血を入れ、チューブでズボンに通し、女性用の下着に試作品のナプキンを着けて自転車に乗ったというエピソードは事実だそうです。
その経験から女性の大変さを理解することができ、女性たちの役に立ちたいと強く思ったことが、開発のモチベーションとなったようです。
【比較】『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の現実と映画版の違いは?
パッドマンのモデルになったアルナーチャラム・ムルガナンダムは「映画は80パーセント事実」と言っています。
では映画と事実に違いはあるのでしょうか?
1つ大きな違いがあります。
すべてのきっかけを作ってくれた協力者、パリーは架空の人物なのです。
確かにパリーとの恋愛にも似たエピソードは、本作の道筋から外れているように思いました。
パリーと活動しているときのラクシュミは、ガヤトリのことを忘れているような気さえしましたから。
『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の最後は? ラストシーンや結末を解説

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『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の結末・ラストシーン
会社を興し、生理用品製造機を作って女性たちを雇用し、自立を促す活動をしているラクシュミは、国連で演説を依頼され、パリーとアメリカに向かいます。
率直に自分の言葉でインドでの問題や、問題に向き合うことの大切さを訴えたラクシュミに、聴衆から温かい拍手が送られ、演説は大成功。
ラクシュミは本当に歪みのない目と心で世界を見ています。
演説でいくつか印象的なセリフがありました。
問題がない人生なんてない。
問題は生きるチャンスだ。
女性は生理になったら行動が制限される。
男性は1年が12か月なのに、女性は2か月も少ない。
男はずるい。
ナプキンを使うことができたら学校を休んで勉学をおろそかにしないで済む。
インドでも古い習慣をおかしいと思う人はいたでしょう。
でもここまでまっすぐに人や世界を平等にみることができる人間はそうそういないと思います。
ラストではラクシュミは村の人たちに盛大に迎えられ、愛する妻との生活を取り戻しました。
『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の最後の解釈と考察
『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の最後の解釈と考察をします。
ラストでは国連での演説が大成功し、村の人たちもラクシュミの開発した生理用品が素晴らしいものだと理解し、大喜びでラクシュミを迎えます。
タブーゆえに言葉にすることがない「生理」に関して、少しはインドでも認知されたということでしょう。
愛するガヤトリと再会し、インドの女性のために変わることなく働くラクシュミがそこにいます。
彼の活動は世界的に評価され、あの「TIME」の表紙を飾るまでになりました。
『パッドマン 5憶人の女性を救った男』(2018)のその後、現在は?
アルナーチャラム・ムルガナンダムは、本作のラストの後、どのような生活を送ったのでしょうか。
国連での素晴らしいスピーチで喝さいを浴び、インドのヒーローとなったアルナーチャラム・ムルガナンダムは、その後も生理用品の製造機を作り、女性たちに雇用の機会を与え続けています。
2014年には「世界で最も影響力のある100人」にも選ばれ、インド政府から「パドマ・シュリー勲章」を受賞しています。
【レビュー】『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の評価・評判

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【つまらない?】低評価のレビュー
本作は全体的に評価が高く、低評価レビューはほとんどありませんでした。
インド映画好きの方には、上映時間を長くしてでも、インド映画特有の歌と踊りを増やして欲しかったようです。
しかし本作は実話を元にした物語なので、本作から道筋を逸れないようストーリーに焦点を当てて作られています。
そのため、インド映画を観たことがない人でもとっつきやすく、この感動的な実話を多くの人に観てもらうことができたのだと思います。
【面白い?】高評価のレビュー
批評サイトで本作の評価は、ほとんど高評価レビューでした。
ラクシュミのシンプルな考えと圧倒的な行動力は、観るものの心を動かします。
タイトルに言及しているレビューも多かったです。
『パッドマン』というタイトルを目にしたときに、「どう見ても普通のおじさんが主演なのにヒーローもの?」と不思議に思いました。
ラクシュミにはスパイダーマンやスーパーマンのような超人的な力はありません。
しかし愛と信念を貫き通す彼こそが本当のヒーローだと実感しました。
『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)の総合評価:問題は生きるチャンス
『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)は、「生理」というタブーに真っ向から向き合った男性の話です。
生理によって女性がどれだけ大変な思いをし、どれだけの時間を無駄に過ごしているか考えることができる人間の話です。
人は習慣になっていることに疑問はもつことがないから、改善することもありません。
しかしラクシュミのように考えることができる人は違います。
彼のように真っすぐな目と心で日常を見渡せば、私たちの日常も変えるべきところがあるかもしれません。
ラクシュミが演説で話したように、問題は生きるチャンスなのです!
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