
世界中から愛されるクマ、パディントンが、さらにパワーアップして帰ってきました!
『パディントン2』(2017)では、ロンドンのウィンザー・ガーデンでブラウン家と幸せに暮らすクマのパディントンに新たな出会いと危機が訪れます。
本作は、パディントンが無実の罪で刑務所に入れられてしまったことで「ブラウン家や町の人のパディントンを信じる心が試される」というストーリーです。
前作からCGやアクション、ユーモア、そして優しさや愛もパワーアップした本作は、今回も観る人の心を温めてくれます。
本記事では『パディントン2』(2017)が続編として大成功した理由をネタバレを交えながら解説していきます!
目次
『パディントン2』(2017)作品情報とキャスト
作品情報
原題:Paddington2
製作年:2017年
製作国:イギリス、フランス
上映時間:104分
ジャンル:ドラマ、コメディ
『パディントン』(2014)の監督とキャスト
監督:ポール・キング
代表作:『パディントン』(2014)
出演者:ベン・ウィショー
代表作:『メリー・ポピンズ リターンズ』(2018)『007 スペクター』(2015)
出演者:ヒュー・ボネヴィル
代表作:『ダウントン・アビー』(2019)『英国総督 最後の家』(2017)
出演者:サリー・ホーキンス
代表作:『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)『ブルージャスミン』(2013)
出演者:ジュリー・ウォルターズ
代表作:『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』(2018)『リトル・ダンサー』(2000)
出演者:ジム・ブロードベント
代表作:『ムーラン・ルージュ』(2001)『ウィークエンドはパリで』(2013)
出演者:ヒュー・グラント
代表作:『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』(2016)『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月』(2004)
『パディントン』(2017)の概要

©2017 STUDIOCANAL S.A.S All Rights Reserved.
ブラウン家の一員となったパディントンは、実直な人柄で町の人気者となり、ウィンザー・ガーデンで楽しく暮らしていた。
ある日パディントンは、友人で骨董品屋のグルーバーさんから、古いロンドンの飛び出す絵本を見せてもらう。
大好きな叔母のルーシーに素晴らしいプレゼントを贈りたいと考えていたパディントンは、絵本は完璧なプレゼントになると思い、高価な絵本をアルバイトをして購入することを決心する。
ある日パディントンがグルーバーさんのお店を覗くと、店に忍び込もうとする怪しい人影を見つける。
パディントンはその人物を追いかけるが、警察が駆け付けたときには、その人物は消えていた。
店内の絵本がなくなっており、現場状況からパディントンが犯人として捕まってしまう。
ブラウン家やグルーバーさん、町の人たちはパディントンが無実だと信じているが、犯人の手掛かりが見つからない。
ブラウン家は犯人を見つけ出し、パディントンの無実の罪を晴らすことができるのか?
そしてパディントンは叔母さんに完璧なプレゼントを渡すことができるのか?
『パディントン2』(2017)の感想と考察

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『パディントン2』(2017)の感想
『パディントン2』(2017)は、前作をしのぐ面白さに仕上がっています!
本作は"続編はつまらない"と言われる映画のジンクスを見事に覆してくれました。
今回のパディントンはブラウン家との関係だけではなく、町の人たちや囚人たちとの友情もあり、彼の成長と優しさを感じることができる作品になっています。
大好きな叔母さんの100歳の誕生日に"特別なプレゼント"を贈るため、懸命にアルバイトをするパディントンですが、ここはやはりパディントンなので大騒動が止まりません。
そして、本作ではサイコパスな落ち目の俳優を、ヒュー・グラントが、前作のニコール・キッドマンに負けじと全力で演じています。
ジュディやジョナサンも成長し、メアリーも新しい趣味を見つけるのですが、彼らの趣味がパディントンを救うという展開も楽しいです。
前作の雰囲気をそのままにしながら、前作を超える面白さに仕上がっている理由は、彼らの成長があったからこそだと思いました。
『パディントン2』(2017)の考察
本項では『パディントン2』(2017)の考察をしていきます。
本作は内容もパワーアップしていますが、筆者は特に映像が前作を大きく上回ったと感じました。
パディントンが、グルーバーさんから古い飛び出す絵本を見せてもらうシーンはとても美しく楽しい映像になっています。
飛び出す絵本の中にパディントンとルーシーが入って、ビッグベンや、ピカデリーサーカスなどロンドンの名所を巡る映像は、本当に絵本の中に入ったような感覚になりました。
前作ではパディントンを通して、本作では絵本を通してロンドン観光を楽しめる仕組みになっています。
赤い靴下1つで囚人服がピンクに染まり、それに合わせるかのように暗い刑務所がカラフルになっていく様子は人の心が変化していく様をポップに表しています。
ブラウン家が面会に来なくて、落ち込んで流した涙がこぼれたところから、たくさん草が生え、ルーシー叔母さんがいるペルーを想像する場面も、パディントンの心情を丁寧に描けていると感じました。
更にラストでブキャナンが新天地で第二の人生を花咲かせるという刑務所内でのミュージカルのシーンは、落ち目の俳優が張り切っている感が楽しく、チープな中にも華やかで明るい映像で盛り上げます。
ヒュー・グラントの新たな魅力

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『パディントン2』(2017)では、ヒュー・グラントが悪役を演じています。
ヒュー・グラント演じるフェニックス・ブキャナンは、かつての有名俳優で、今や仕事はドッグフードのCMだけという落ち目の俳優です。
過去の栄光にすがり、若かりし頃の写真に囲まれて過ごす姿は『サンセット大通り』を彷彿とさせます。
たくさんのマネキンと会話する姿は身震いしてしまうほど怖いですが、マネキンにはブキャナンが変装に使う泥棒やシスター、王様に加え、マクベスやハムレット、名探偵ポワロもいるというイギリス人の遊び心も満載です。
本作の素晴らしいところは、最終的にパディントンやブラウン家、町のみんなも幸せになるのですが、悪役であるブキャナンも新天地で幸せになるところです。
ヒュー・グラントはインタビューで「前作がヒットしたから今回コケたら自分のせいになる」と、プレッシャーを感じていたことを話していましたが、それを微塵も感じさせない軽快な演技でストーリーを最後の最後まで盛り上げました。
パロディーシーン満載?!
『パディントン2』(2017)では、パロディシーンも増え、遊び心を失うことなく感動作品に仕上がりました。
本項ではパロディシーンを以下にまとめてみました!
・メアリーがパディントンを助けるために海に飛び込むシーンは、サリー・ホーキンス主演の『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)を彷彿とさせます。
・ブキャナンがエージェントと待ち合わせをする場所は「リッツホテル」です。『ノッティングヒルの恋人』(1999)でも使われており、同作にはヒュー・グラントとヒュー・ボネヴィルが出演していました。
『パディントン2』(2017)は松坂桃李と斎藤工の吹き替えにも注目?

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『パディントン2』(2017)では、人気俳優の松坂桃李と斎藤工が吹き替えをしています。
前作に引き続き、パディントンの声を松坂桃李が吹き替えており、実直で紳士的、好奇心旺盛のパディントンを演じるのに最適な人物だと思います。
本作の悪役であるブキャナンを斎藤工が吹き替えていますが、ヒュー・グラントとの年齢差がある為、最初は少し声が若すぎるように感じました。
しかし斎藤工の演技力なのでしょうか、観ているうちにブキャナンとの年齢差のギャップを感じさせず、観終わるころには絶妙にマッチしている!と思わされました。
【ネタバレあり】『パディントン2』(2017)の最後は? ラストシーンや結末を解説
『パディントン2』(2017)のラスト①:パディントンの脱獄
『パディントン2』(2017)は前作を超える感動作に仕上がりました。
本項ではパディントンが犯人を見つけるために脱獄する過程を解説していきます。
刑務所に入ったパディントンは、ルーシー叔母さん直伝のマーマレードサンドを作って囚人たちと友情を育み、刑務所生活を楽しく過ごします。
すぐに刑務所から出られると思っているパディントンに、「いつか家族はお前を忘れる」と囚人仲間は言うのです。
面会に来なかったブラウン家は自分を忘れてしまったのだと思い込んだパディントンに、囚人仲間は「刑務所を出て自分たちで犯人を見つけよう」と提案します。
一時は「脱獄なんかしたらルーシー叔母さんに怒られる」と断っていたパディントンですが、犯人を探すために脱獄を決意するのです。
しかし、外国に逃亡するために脱獄した囚人たちは犯人探しには行かず、パディントンに「一緒に外国に逃げよう」と言います。
囚人たちと別れたパディントンは、自分が逃亡犯になってしまったことに気づくのです。
『パディントン2』(2017)のラスト②:犯人を追い詰める!
本項ではブラウン家が、犯人を見つけ出し、追い詰めていくところを解説していきます。
犯人のモンタージュを見たブキャナンが「青い目をしている」と言ったことから、犯人はブキャナンだと推定したメアリーは家宅捜索し、泥棒や尼僧、王様のコスチュームを着たマネキンを見つけます。
家宅捜索のシーンはブラウン夫妻の掛け合いが楽しいシーンです。
不法侵入したメアリーに「何をやってる!ばれる前に家に帰るぞ」と怒るヘンリーが、瓶を割ってしまって不法侵入の痕跡を残してしまうのですが、それについて誰も何も言わないというイギリス人独特のユーモア感覚がじわじわきます。
ブラウン家は犯人はブキャナンであることを警察に伝えますが、証拠がないため取り合ってもらえません。
その上、面会の時間が過ぎてしまい、パディントンに犯人を伝えることもできませんでした。
その頃、逃亡犯となってしまったパディントンは、ブラウン家に「さようなら」と言いたくて、持っていた一枚の小銭で電話をかけます。
しかし電話は留守番電話になっていて、直接言葉を交わすことはできませんでした。
電話を切ってトボトボ歩いていると、電話ボックスの電話が鳴っているのが聞こえてきました。
慌てて電話を取ったパディントンの耳には、ブラウン家の優しい声が聞こえてきます。
「あなたを忘れるわけないでしょう、家族なのよ」と。
このさりげない言葉は本当にパディントンの胸にしみたと思います。
犯人はブキャナンで、彼が狙っている財宝が入ったオルガンが間もなくパディントン駅を発つという情報を聞いたパディントンは、出発直前に列車に乗り込み、ブキャナンを見つけます。
パディントンはブキャナンの指紋が付いた絵本を奪取すべくブキャナンに立ち向かいますが、ブラウン家は列車に間に合いませんでした。
ここでジョナサンが、ひた隠しに隠していた"SLおたく"ぶりを発揮し、列車を動かしてパディトンとブキャナンを追いかけます。
『パディントン2』(2017)のラスト③:パディントンの危機
本項ではパディントンに訪れる危機と、絵本を取り返すまでを解説していきます。
絵本を奪おうと立ち向かうパディントンでしたが、ブキャナンの手によって列車ごと海に放り出されます。
海に沈んだ列車に残された空気は殆どありません。
一方絵本を手にしたブキャナンに対してヘンリーとジュディ、バード夫人が立ち向かいます。
ジュディのカメラのフラッシュで目をくらませ、ヘンリーが若かりし頃に腕を鳴らしたココナッツ投げで見事ブキャナンにボールが命中!
絵本を取り返すことに成功しました。
海に沈んだパディントンを救うため、メアリーは迷わず橋から海へ飛び込みます。
『パディントン』シリーズでは、伏線の回収が毎回見事ですが、ここでもフランスに泳いで行くために練習していたメアリーの特技が生かされています。
パディントンが閉じ込められた列車にはチェーンがかけられており、メアリーの力ではどうすることもできません。
パディントンはメアリーの手に自分の手を重ね、目で「ありがとう、もう充分です」と、諦めたことを伝えるのですが、そこに逃亡したはずの囚人仲間が来て、チェーンを力いっぱい外してパディントンの救出に成功します。
自分たちのことだけを考える人間ならパディントンを救うことはしませんが、彼らはパディントンとの友情である、正しい道を選んだのです。
パディントンの「人に親切を惜しまない心」が、彼らを変えました。
『パディントン2』(2017)のその後:ルーシー叔母さんの誕生日
本項ではルーシー叔母さんの誕生日当日を解説していきます。
ブキャナンとの対決の後、熱を出したパディントンは、そのまま3日間眠りました。
目覚めたパディントンは、今日が叔母のルーシーの誕生日だということに気が付いて、何もプレゼントを用意できなかったことに落ち込みます。
パディントンが階段を下りていくと、町の人たちがパディントンを温かく迎えてくれました。
パディントンのおかげでカップルになれた人たち、試験に合格できた人、鍵を忘れずに済む人たちから、パディントンへの感謝の言葉が次々と聞こえてきます。
そして「感謝の気持ちとして、プレゼントを用意した」と言うのです。
玄関の呼び鈴が鳴り、ドアを開けると、そこにはルーシー叔母さんがいました。
町の人たちからのプレゼントは、ルーシー叔母さんをロンドンに呼ぶことだったのです!
刑務所では想像でしか会うことができなかったルーシー叔母さんが、ロンドンのブラウン家のパディントンの目の前にいるのです。
パディントンは叔母さんをぎゅっと抱きしめて「お誕生日おめでとう」と言います。
いつかロンドンを訪れたいと願っていたルーシー叔母さんにとって、そしてパディントンにとっても最高の誕生日プレゼントになりました。
パディントンは、これから手紙だけでは伝えきれなかったことを、たくさん話して、見せてあげるんだろうなと思います。
一人の優しさがたくさんの優しさになって、パディントンに戻ってきたのです。
『パディントン3』の予定は? 続編はある?

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本作は『パディントン』(2014)の続編です。
このままシリーズ化になるのでしょうか?
前作ではブラウン家の一員になるまでを描き、本作ではブラウン家の一員として暮らすパディントンと家族を描いており、二作観ることで家族の絆が深まっていく様子が分かります。
本作で「パディントン」が完結になるのかが気になるところですが、続編のジンクスを打ち破った本作は、2018年11月に『パディントン3』の製作が決定しました!
執筆当時は2020年4月ですが、残念ながらそれ以降の情報は入っていません。
続報が入ることを祈るばかりです。
【レビュー】『パディントン2』(2017)の評判・評価

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【つまらない?】低評価のレビュー
本項では『パディントン2』(2017)の低評価のレビューをまとめていきます。
・内容は子ども向けなので、子どもの頃に観たかった
・脚本はご都合主義で意外性が無さすぎて退屈
殆どのレビューが高評価で、低評価のレビューを探すのに苦労しました。
それだけ本作の完成度が高かったことが分かります。
つまらないというレビューは、「先が読める」や「子どもむけ」というものでした。
確かに、本作の犯人は観客に分かるように作られていますが、本作はミステリーではありません。
ブラウン家はいかにして家族の一員のパディントンを救うのか?という話なので、そこに注目して鑑賞すると本作の良さが伝わると思います。
【面白い?】高評価のレビュー
『パディントン2』(2017)の高評価のレビューをまとめていきます。
・パディントン一家に1人?1匹?いたら全国の幸福度が上がる気がした
・お母さんが水に潜るシーンは思わず『シェイプ・オブ・ウォーター』を連想しました
・人にやさしくなれない時、心が疲れてる時にもう一回見返そう
・「映画は2のほうが面白くない」なんて言葉が何かの映画のセリフになっていたけど、パディントンは違った!
・続編の方がパディントンの表情が豊かで面白い!周りのみんなもあったかくて微笑ましいし、イギリスに行きたくなる
・ピンチの時、辛い時はみんな余裕がなくなって心が狭くなってしまうけど、そんな時こそパディントンみたいに常に人のいい所を見つけて親切にするのが大事
上記を見て分かるように、レビューの大半が高評価でした。
パディントンは現代の人が忘れてしまいがちな「人を見た目で判断しない」ことや「人を信じる心」を思い出させてくれる作品です。
人は余裕がなくなってしまうと他の人に優しくできなくなってしまいます。
本作は、一度立ち止まって、人間の大切にしたい本質を見直す機会になる作品です。
『パディントン2』(2017)のまとめ

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『パディントン2』(2017)は、人を信じる心が試される作品になっています。
前作は、世界で起きている「移民・難民」に対する問題提起という内容でしたが、本作ではさらに掘り下げているように感じました。
パディントンが凶悪だと信じるカリーさんに対して、ヘンリーが言うセリフが本作の最も伝えたいことだと思います。
・人を見た目で判断するな
・パディントンは人の良いところを見ようとするから、みんなと友達になれる
思いやりや信じる心、他の人のいいところを素直に受け止めることができるパディントンのようなクマ......いえ、パディントンのような人になりたいと思いました。
そんな人が増えたら、世界が少し平和になるのではないでしょうか。
前作の『パディントン』(2014)の感想と考察はこちら。
https://minority-hero.com/cinema-review/Paddington/11398/