
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)は、イギリスのミステリー作家「アガサ・クリスティ」への愛がたっぷり詰まったミステリー映画です。
オマージュ満載の楽しい映像と、一癖も二癖もある容疑者たち、頼りなさげな探偵が織りなすユーモアたっぷりのノンストップミステリー!
本記事では"犯人がどのようなトリックを使ったのか"を、容疑者の人間関係を中心に、ネタバレを含めて執筆していきます!
目次
- 1 『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)作品情報とキャスト
- 2 『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)のあらすじ
- 3 【ネタバレあり】『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)の感想
- 4 【ネタバレあり】『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)の考察
- 5 『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)の原作・元ネタとは?
- 6 『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)の意味は?
- 7 【レビュー】『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)の評価・評判は?
- 8 『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)のラストシーン、結末を解説
- 9 『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)のまとめ
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)作品情報とキャスト
作品情報
原題:Knives Out
製作年:2019年
製作国:アメリカ
上映時間:130分
ジャンル:クライム
監督とキャスト
監督:ライアン・ジョンソン
代表作:『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)『LOOPER/ルーパー』(2012)
出演者:ダニエル・クレイグ
代表作:『007 スペクター』(2015)『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)
出演者:アナ・デ・アルマス
代表作:『ブレードランナー 2049』(2017)『ノック・ノック』(2015)
出演者:ジェイミー・リー・カーティス
代表作:『ハロウィン』(2018)『トゥルー・ライズ』(1994)
出演者:マイケル・シャノン
代表作:『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)『ノクターナル・アニマルズ』(2016)
出演者:クリス・エヴァンス
代表作:『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)『gifted/ギフテッド』(2017)
出演者:トニ・コレット
代表作:『ヘレディタリー/継承』(2018)『マダムのおかしな晩餐会』(2016)
出演者:クリストファー・プラマー
代表作:『ゲティ家の身代金』(2017)『手紙は憶えている』(2015)
出演者:キャサリン・ラングフォード
代表作:『Love,サイモン 17歳の告白』(2018)
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)のあらすじ

© 2018 MRC II Distribution Company L.P. All rights reserved.
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)のあらすじ①:自殺か他殺か
ニューヨークの大富豪作家ハーラン・スロンビーが、85歳の誕生日パーティーの翌朝、遺体で発見された。
喉をナイフで切っていたため自殺と思われたが、探偵のブノワ・ブランは匿名の依頼を受けて、警察と協力して事件の調査を開始する。
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)のあらすじ②:『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)の容疑者一覧
下記が第一容疑者一覧です。
・長女リンダ・ドライズデール
・長女の夫リチャード・ドライズデール
・一家の問題児である長女夫婦の息子ランサム
・長男の妻ジョニ・スロンビー
・ジョニの大学生の娘メグ
・次男のウォルト・スロンビー
・次男の妻のドナ・スロンビー
・次男夫婦の息子ジェイコブ
・ハーラン専属の看護師マルタ・カブレラ
・屋敷で働く家政婦たち
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)のあらすじ③:探偵ブノワの事情聴取
ブノワは全員に事情聴取を行うが、誰もかれもが嘘をついている。
そんな中、嘘をつくと吐いてしまうという特異体質を持ったハーラン専属の看護師マルタを助手にして事件を解明しようとするが、マルタにも秘密があり......。
犯人の目的とは?! そして大富豪の遺産は誰の手に?!
【ネタバレあり】『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)の感想

© 2018 MRC II Distribution Company L.P. All rights reserved.
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)の感想
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)は、密室での殺人が話の起点となるので、シリアスな内容になるかと思いきや、ワクワク感満載の作品でした。
そのワクワクとは「謎解き」としてのワクワクと「豪華俳優たちの共演」によるワクワクの二つです。
それぞれ説明していきます。
謎解きミステリーのワクワク
本作の一つ目のワクワクは「謎解き」としてのワクワクです。
屋敷にいた全員が容疑者で、一族全員に動機がある。
このありがちな設定からどのように展開するのでしょうか?!
・長女の夫リチャードは、ハーランから「浮気していることを娘に伝える」と言われていた。
・息子のランサムはハーランに「遺産相続人から外す」と言われていた。
・長男の妻ジョニは、娘メグの学費を二重にもらっているが、ハーランにバレて学費の支援をストップされることに。
・次男はハーランの作品を取り扱った出版社を経営しているが、ハーランからクビを宣告される。
めくるめく展開に、「誰が」「なぜ」と頭をフル回転させながら作品を楽しむことができます。
豪華俳優たちの共演
本作は主演級の豪華俳優が集結して、本作を華やかに盛り上げています。
ジョニ役のトニ・コレットは、『ヘレディタリー/継承』(2018)でも怪演が話題になりましたが、本作でも巧みな演技力でどこまでも怪しい雰囲気がつきまとう役を、嬉々として演じています。
『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)のマイケル・シャノンが演じるのは、小物感たっぷりだけど粘着質でどこか狂気を感じるウォルト役。
アベンジャーズシリーズの頼れるみんなのリーダー"キャプテン・アメリカ"役で有名なクリス・ヴァンスは、一族の問題児ランサム役を、チャーミングに演じています。
そしてコメディセンス抜群のダニエル・クレイグが、イケメンを封じて水を得た魚のように、自由に探偵役を楽しんでいます。
個性派俳優たちが嬉々として演じている姿を、画面いっぱいに見ることができる本作は、本当にワクワクします!
【ネタバレあり】『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)の考察

Knives out集合© 2018 MRC II Distribution Company L.P. All rights reserved.
助手が犯人?!
この作品が他のミステリー作品と違うところは、探偵の助手が大富豪ハーレイが喉を切って死ぬきっかけを作った張本人であるという点です。
どこか頼りない探偵のブノワは「名探偵ポワロ」でいうところの「ヘイスティングズ大尉」の役割を果たす、かなりクセのある特異体質を持つマルタを助手とし、犯人探しを進めていきます。
普通に考えれば探偵と助手が協力して犯人を捜します。
しかし彼女は協力するふりをして、自分の証拠を隠ぺいするのです。
なぜなら殺人の原因を作ったのは他ならぬマルタだからです。
もし自分が犯人だとバレてしまうと、ハーランがマルタを助けるために考えたトリックが無駄になってしまう。
協力や裏切りが曲者俳優たちによって繰り広げられるのですが、観客は犯人が分かった状態で観ているので、少し気を緩めて観てしまうんですが、話は後半急展開になります。
観客がだれたタイミングで目を覚まさせるかのようにカーチェイスも繰り広げられます。
監督が見事に観客をミスリードしていることに気づいたとき、「騙された!」という喜びが広がるのです。
ハーランの全財産は誰の手に?!
大富豪ハーランが亡くなり、一族の最も気になることは勿論「遺産」です。
亡くなったことに対する悲しみや、犯人が誰かなんていうのは二の次です。
一族の期待と不安が膨らむ中、遺言書の開封が行われます。
遺言書の内容は一族の想像を超えるものでした。
全財産をマルタに遺す。
一族に責められ、屋敷から逃げ出すときにランサムに助けられたマルタは、遺産の一部をランサムに譲る事を条件に、ランサムに全てを打ち明け、自分の罪がバレないよう協力を求めるのです。
クリス・エヴァンスは、にやけ顔をしたお金持ちのおぼっちゃんランサム役をセーターを着こなしつつ見事に演じています!
名探偵シリーズになり得るか?!
本作の探偵「ブノワ・ブラン」は観客から愛される名探偵になることが出来るでしょうか?
テレビシリーズでの名探偵といえば「名探偵ポワロ」「名探偵コロンボ」「名探偵モンク」ですね。
上記の名前を見て分かる通り、どの探偵も個性が強烈!
名前を聞いただけで"灰色の脳細胞"や「うちのカミさんが」という台詞、"潔癖症で強迫神経症"といった彼らのキャラクターが頭に浮かびます。
本作の探偵ブノワはアメリカ南部訛りがあり無神経で、どこか頼りないというキャラクターですが、少し個性が弱いように感じました。
しかし後半、音楽を聴きながら大声で歌うシーンは今まで硬派なイケメンのイメージを完全に消していました。
ダニエル・クレイグがもう少し殻を破ることが出来たら必ず人気のシリーズになりますよ!
現代のアメリカにおける移民問題
本作は気軽に観ることができるエンターテインメント作品でありながら、アメリカで起きている移民問題を提起した作品です。
特に印象的だったシーンは、マルタが全ての遺産を相続すると分かったとき、ハーランの次男のウォルトが「遺産を放棄しないと移民だという事をばらす」と脅したシーンです。
なぜなら移民であるマルタの母親は、もし過失とはいえ娘のマルタが人を殺したということが分かったら、強制送還されてしまうからです。
ハーランやその家族はマルタに対して「あなたは家族同然よ」と言うのですが、本当にそう思っているのはハーランだけです。
一族の中で彼女がどこの国の出身か知っている人は殆どいません。
ラストでマルタがバルコニーから一族を見下ろすシーンは痛烈な皮肉となっており、今まで見下していた側の人たちが今では見下ろされ、立場が逆転したということを分かりやすく画面で説明しています。
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)の原作・元ネタとは?

© 2018 MRC II Distribution Company L.P. All rights reserved.
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)は、完全オリジナル作品です。
ライアン・ジョンソン監督が敬愛するアガサ・クリスティ作品のオマージュが、そこかしこに溢れています。
例えば大富豪が殺され、一族に犯人がいるという設定は『ねじれた家』などに使われている設定です。
そしてモルヒネを使って殺されるのはアガサ後期の作品『杉の棺』などが有名で、観客や読者が先に犯人を知るという設定は『ABC殺人事件』があります。
名探偵ポワロ演じるデヴィッド・スーシェはイギリス人ですが、ベルギー人役を、本作でイギリス人俳優のダニエル・クレイグがアメリカ人役をすることは監督のシャレでしょう。
ライアン・ジョンソン監督が、作品の邪魔にならない程度に自分の好きなものを散りばめたおもちゃ箱のような映画に仕上がりました!
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)の意味は?

© 2018 MRC II Distribution Company L.P. All rights reserved.
ナイブズ・アウトの言葉の意味は?
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)というタイトルですが、「ナイブズ・アウト/Knives out」とはどういった意味でしょうか?
日本語に直訳すると"刃が出ている複数のナイフ"という意味になります。
これは「悪意、敵意が向く」という意味で使われるようです。
マルタへの目撃者の悪意、全財産を手にすることになったマルタへの一族の敵意、家族間の確執などが「ナイブズ・アウト」を表しています。
作品内にナイフは出てくる?
本作ではナイフが重要なシーンに登場します。
ハーランはナイフで喉を切って死に、ラストでマルタが真犯人のランコムに殺されそうになるシーンでもナイフが使われています。
【レビュー】『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)の評価・評判は?

© 2018 MRC II Distribution Company L.P. All rights reserved.
軽快な娯楽作品でありながらアカデミー脚本賞、ゴールデングローブ賞作品賞、主演男優賞、主演女優賞にそれぞれノミネートされている『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)は、どのような評価だったのでしょうか?
日本での興行成績は2.6億円。
・Filmarks 3.9点
・Yahoo!映画 3.97点
・映画.com 3.8点
海外の映画批評サイト"ロッテントマト"では批評家から97%、観客からは92%とかなりの高評価。
"前半は退屈だったが、途中から目が離せない展開になった"
"犯人が早い段階で分かった"
"伏線の回収できないと思ったけど、見事に回収されたのが嬉しかった"
"是非シリーズ化を!"
"クリス・エヴァンスのセーター姿は必見! それだけで価値あり!"
犯人が早い段階で分かるなんて羨ましい!
でも全然分からずに観る楽しみも、もちろんありますよね!
鑑賞後に友達と伏線回収の話や、クリス・エヴァンスのセーターの話をしたくなる作品でした。
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)のラストシーン、結末を解説

© 2018 MRC II Distribution Company L.P. All rights reserved.
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)のラストについてネタバレを踏まえて解説していきます。
マルタが薬と間違えてモルヒネを多量投与したことにより、死ぬまでにわずかな時間しか残されていないと知ったハーランは、移民の子であるマルタを救うべくアリバイ工作を計画し、マルタに実行させて自分で喉を切って自殺した。
というのはマルタの知っている限りの話で、実際はランサムが薬とモルヒネのラベルをすり替えていたのでした。
ランサムはハーランから"全ての遺産はマルタに相続させる"と聞いていたので、マルタを殺人犯とすることで遺産を放棄させる方法を計画し、実行したのです。
しかし、それを知った家政婦のフランからランサムは脅されます。
ランサムはフランからの脅しをリメイクして、匿名でマルタに脅迫文を送りつけます。
順調にマルタが犯人になるよう仕向けるのですが、"ある落とし穴"にランサムは気づかないのです。
マルタは脅迫メールを送った人物に会いに行くのですが、そこにいたのはランサムによってモルヒネを多量摂取させられた家政婦のフランでした。
まだ息があることに気づいたマルタは、自分を脅したと思われる相手なのにフランを助けるのです。
そこからランサムの状況が一変します。
今まで殆ど役に立っていなかった探偵の推理がさく裂し、さらにマルタは吐くのをめっちゃ我慢することで特異体質を一時的に封印するのです。
みんなに知られているマルタの特異体質を利用したナイス機転でランサムに自供させることに成功!
家政婦のフランを殺害した容疑でランサムは逮捕され、マルタはハーランの全財産を受け取ります。
バルコニーからハーラン一家を見下ろして立場が逆転したマルタとハーラン一家。
遺産をどうするかはマルタ次第です。
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)のまとめ

© 2018 MRC II Distribution Company L.P. All rights reserved.
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)は、アガサ・クリスティへの愛が溢れていました。
アガサ・クリスティ作品は、人間関係に重きを置いて、優雅な豪邸の中に隠された人間の心の歪みをとても丁寧に描くことで知られています。
上品で優雅、風景を眺めるだけで楽しめるという画面の楽しさもあります。
そして事件の原因は大抵「お金=遺産相続」。
本作は、アガサ・クリスティ作品を派手にして明るくしてテンポを飛ばした仕上がりです。
全然別物のように思えますが、ミスリードの方法がアガサを彷彿させます
監督のアガサ・クリスティへの愛は世界中に届きましたよ!
2020年2月に本作の続編が製作されることが決定したことが何よりの証拠です!
リリースは2022年を予定しているとのこと。
さらにパワーアップするであろう続編が待ちきれません!