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後世に残すべきレガシー『ジュディ 虹の彼方に』(2019)の楽曲の解説と作品の考察【あらすじ、ネタバレ、感想あり】

『ジュディ 虹の彼方に』(2019)は、MGMミュージカル映画で伝説を作った大スター、歌手で女優のジュディ・ガーランドが亡くなる前の半年間に焦点を当てた作品です。

ジュディを演じたレネー・ゼルウィガーが、第92回アカデミー賞で主演女優賞を受賞したことで話題になりました。

『オズの魔法使い』(1939)のドロシー役で有名なジュディ・ガーランドは、どのような人物だったのでしょうか。

なぜ47歳の若さで亡くなってしまったのでしょう。

本記事では、ジュディ・ガーランドの生涯を掘り下げ、ジュディを演じたレネー・ゼルウィガーの熱演をネタバレを含めて解説していきます。

『ジュディ 虹の彼方に』(2019)作品情報とキャスト

(C) Pathe Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019

作品情報

原題:Judy
製作年:2019
製作国:イギリス
上映時間:118
ジャンル:ドラマ、伝記

監督とキャスト

監督:ルパート・グールド
代表作:『劇場版 嘆きの王冠~ホロウ・クラウン~/リチャード二世』(2015

出演者:レネー・ゼルウィガー
代表作:『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』(2016)『シカゴ』(2002)

出演者:ルーファス・シーウェル
代表作:『ツーリスト』(2010)『ホリデイ』(2006

出演者:アンディ・ナイマン
代表作:『ゴースト・ストーリーズ 英国幽霊奇談』(2017)『キック・アス ジャスティス・フォーエバー』(2013)

出演者:マイケル・ガンボン
代表作:『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』(2018)『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(2004

出演者:ジェシー・バックリー
代表作:『ワイルド・ローズ』(2018)

『ジュディ 虹の彼方に』(2019)のあらすじ

(C) Pathe Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019

『ジュディ 虹の彼方に』(2019)は、MGMミュージカル映画で伝説を作ったジュディ・ガーランドが亡くなる前の半年間に焦点を当てた作品。

幼いころからエンタテインメント界にいたジュディ・ガーランドは、17歳で『オズの魔法使い』(1939)のドロシー役に大抜擢された。

1日18時間働かされる程のハードワークだが、どれだけ疲れていても休まず働けるよう、当時合法であった覚せい剤を与えられて仕事をしていた。

薬物依存症となった結果、撮影現場で遅刻や欠席が続き、業界に愛想をつかされてしまい、ついには解雇されてしまう

仕事もお金も家もなく、子どもたちと小さなクラブを巡業して僅かなお金を稼ぐという生活で、安定した暮らしを送ることができない。

この状況では育児放棄とみなされて、愛する子どもたちを手放さなければならなくなる。

そんな中、子どもたちとの生活を取り戻すため、再起を図ろうとロンドンでの公演を引き受ける。

ロンドンでミッキー・ディーンズと結婚し、ショーも順調で幸せな時間を過ごすジュディー。

しかし子どもと会えない孤独から、アルコールや薬物の摂取がやめられず、彼女はさらに追い詰められていく

【ネタバレあり】『ジュディ 虹の彼方に』(2019)の見どころを解説

(C) Pathe Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019

『ジュディ 虹の彼方に』(2019)の見どころ①:受賞歴

『ジュディ 虹の彼方に』(2019)の見どころを3つに分けて紹介していきます。

1つ目の見どころは、各賞での受賞です。

本作でレネー・ゼルウィガーは、アカデミー主演女優賞を始め、数々の映画賞を受賞しました。

メイクアップ&ヘアスタイリング部門はノミネートにとどまりましたが、レネー・ゼルウィガーが"ジュディに変身するために必要だった"と話すほど、本作で重要な役割を担っています。

当時のジュディのヘアスタイルを元にして、試行錯誤を重ねてレネーに合う髪型が決まったそうです。

ステージで着ている50年代のゴージャスな衣装は、実際にュディが着ていたものからインスパイアされて作られました。

筆者が本作を鑑賞した時、ジュディ・ガーランドの事は殆ど知りませんでしたが、レネーがスクリーンに映し出された瞬間”ジュディ・ガーランドはこの人だ"と錯覚する程ジュディになりきっていました。

口をすぼめて話し、マイクのコードを肩にかけ、全力で歌い上げる。

そこにいるのはジュディ・ガーランドで、レネー・ゼルウィガーの姿はありませんでした。

出せる力をすべて出し切ったと思われる、レネー・ゼルウィガーの凄まじい演技に目が離せなくなります。

レネーの子ども時代のアイドルはジュディ・ガーランドだったそうです。

彼女の経歴、歌い方やクセ、インタビューなどを調べつくしたのでしょう。

そしてきっとジュディ・ガーランドを"子役時代の不遇があった不幸な人"としてではなく、エンターテインメント界のレガシーとして彼女を理解し、愛したんだと思います。

だから繊細で大胆で、不器用に愛を求め、どこまでもショーを愛したジュディに迫ることが出来たんだと思います。

アカデミー賞受賞も納得の素晴らしい演技でした。

『ジュディ 虹の彼方に』(2019)の見どころ②:圧巻の歌唱力

『ジュディ 虹の彼方に』(2019)の2つ目の見どころは、レネー・ゼルウィガーの圧巻の歌唱力です。

レネー・ゼルウィガーは『シカゴ』(2002)で主役のロキシーを演じ、見事な歌唱力と演技力でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。

撮影の1年前からトレーニングをして、劇中での歌は全て彼女自身が歌っています。

ロンドン公演でステージに立って最初に歌った時、ジュディは不安で自信なさげに歌っています。

しかしステージが、観客が彼女に自信を与えてくれるのです。

ラストで歌う「虹の彼方に」は、観客がジュディに寄り添い、劇場が一体となった奇跡的な瞬間でした。

『ジュディ 虹の彼方に』(2019)の見どころ③:LGBTQのアイコンとして

『ジュディ 虹の彼方に』(2019)の3つ目の見どころは、LGBTQのアイコンとしてのジュディです。

ジュディ・ガーランドは、彼女が活躍していた当時からゲイ・コミュニティのアイコンでした。

本作では、舞台を連日見に来るゲイカップルとジュディ・ガーランドの交流が描かれています。

ゲイカップルのうちの一人は、同性愛の罪で過去に投獄され、その時行われていたジュディのライブを観に行くことが出来ませんでした。

「その時の埋め合わせとして、今回のロンドン公演をすべて見ることにした」と語るシーンは、この時代の罪であった同性愛者としての生きづらさと悲しみがにじみ出ています。

ゲイカップルは実在の人物ではありませんが、この交流のシーンはジュディの孤独と二人の孤独な心が結びつく重要なシーンです。

父親がゲイで、周りやファンにもゲイの人が多かったと言われており、ジュディがゲイに寛容だった理由はここからきているのかもしれません。

彼女が出演したオズの魔法使いのテーマ曲"虹の彼方に"から、LGBTQのシンボルが虹(レインボー)になったといわれています。

『ジュディ 虹の彼方に』(2019)の感想と考察

(C) Pathe Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019

『ジュディ 虹の彼方に』(2019)の感想

『ジュディ 虹の彼方に』(2019)の鑑賞前は"アカデミー主演女優賞取ってるから一応見ておくか"という軽い気持ちでした。

しかし、ジュディその人になりきったレネー・ゼルウィガーの圧倒的な演技によって、鑑賞中に食べようと購入したポップコーンを口に入れるタイミングを逃すほど見入ってしまいました。

そして何より波乱万丈の生涯であり、何度もどん底から這い上がりながら、それでもステージで生きたいという彼女のスターとしての驚異的な生き様が心に刺さりました。

『ジュディ 虹の彼方に』(2019)の考察

『ジュディ 虹の彼方に』(2019)は、ジュディの短い人生の半年間に焦点を当てて描かれています。

最初に登場したシーンではジュディは47歳で、金銭感覚がずれており、子どもへの愛情はあるが、薬とお酒に頼らなければならない不安定な人物であることが分かるシーンとなっています。

なぜジュディは精神的に不安定な人物になってしまったのでしょうか。

幼少期のジュディに関する情報は、断片的に出てくる映像やセリフのみですが、原因となったであろういくつかのシーンを挙げます。

・MGMの重鎮ルイス・B・メイヤーや会社によって、自分は醜く太っていると洗脳され、食べ物を制限されていた。

・何時間でも働けるよう、当時合法だった覚せい剤を与えられていた。

その為興奮状態になり眠れなくなったら、次は睡眠薬を与えられ、完全に薬漬けとなった。

彼女が幼いころに受けた洗脳や薬の呪縛は彼女が亡くなるまで消えることはありませんでした。

不安やコンプレックスを抱えて生きていたのです。

マネージャのロザリンがロンドンでジュディにささやかなお祝いをしたとき、初めてケーキをほんの少し口にして、その美味しさに驚き、喜びました。

子どもの頃の影響が47歳になっても続いているという恐怖。

このときのレネーの演技は素晴らしく、本作で最も痛ましいシーンでもありました。

「もう誰からもコントロールされないから安心していいんだよ」と、ジュディを抱きしめたくなりました。

母親の呪縛

ジュディはMGMの厳しい管理下に置かれ、薬漬けにされ、食事制限され、恋を実らせることもできませんでした。

マネージャーである母親はすべて承知で会社の言いなりになっていたのです。

無知ゆえの行動なのかもしれませんが、ジュディという一人の人間を商品としか見ない会社から、本来守るべき娘を守らなかった母親の罪は重く、守ってもらえなかったというジュディの心の傷は消えることはないでしょう。

ジュディは母親を嫌っており、自分の子どもには愛情をもって接していたようです。

マネージャーであるロザリンの視点

ロンドン公演では、マネージャーのロザリンが、ジュディのショーの管理を担当します。

ジュディは歌うことを避けているかのように、リハーサルもはぐらかして行わず、間もなく出番だというのにステージに来ません。

立つ直前まで"この人は本当に歌えるのか?"と、ロザリンをハラハラさせます。

そんな"気まぐれな元スター"だと思っていたジュディが、ステージに立って歌う姿を見て、その才能は本物だと肌で感じたロザリンは、ジュディを支えて応援するようになります。

最後まで距離を保ちつつジュディを優しく見守り、支える姿を見て、ロザリンの視点は私たち観客と同じなんだと気づきました。

ロザリンを演じた「ジェシー・バックリー」の演技は新鮮で、ジュディに寄り添いすぎることなく、ただ見守っているだけなのに、ジュディの味方なんだと伝わる安心感がありました。

なぜジュディ・ガーランドはこの世を去ったのか

(C) Pathe Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019

ジュディ・ガーランドは47歳という若さでこの世を去っています。

なぜ才能あふれるジュディ・ガーランドは、愛する子どもたちを残してこの世を去ったのでしょうか。

本作では、かつてスターだったジュディが落ちぶれ、愛する子どもたちとも暮らせなくなるという晩年を過ごしていたことを映し出しています。

長年の薬物の摂取により、精神的に不安定であっただけではなく、身体も蝕まれていました

愛を知らずに育ち、愛を求め、その度に傷つきながらもステージで生きていく姿は痛々しくも美しいです。

彼女が本当に愛したものは子どもたちですが、どれだけ頑張っても共に暮らすことができないとわかり、孤独に襲われ、薬物依存から抜け出すことができなかったのではないでしょうか。

事故なのか故意なのかはわかりませんが、命を削るように生きてきた彼女の最後が穏やかなものであったと願わずにいられません。

【ネタバレあり】『ジュディ 虹の彼方に』(2019)の最後は? ラストシーンや結末を解説

(C) Pathe Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019

『ジュディ 虹の彼方に』(2019)の結末はどのようなものだったのでしょうか。

ネタバレをしつつ結末を解説していきます。

ロンドンでミッキー・ディーンズと再婚し、幸せに過ごしていたジュディですが、夫がジュディを売り出そうと企画した案はとん挫し、子どもからは「父親と暮らしたい」と言われてしまいます。

孤独と失意の中、ジュディはアルコールに溺れるようになります。

ショーの時間に遅れ、酩酊状態で登場したジュディは観客から罵声を飛ばされ、そっぽを向かれてしまい、ロンドンでの公演をクビになりました。

最後にもう一度だけ舞台を見たいと劇場に行ったジュディは、観客いっぱいの舞台を袖から見て、自分の代理で出演する演奏者に「もう一度だけ歌わせてほしい」と頼みます。

ジュディは再び舞台に立ち、代表曲「虹の彼方に」を歌いますが、様々な思いが湧き出て途中で声を詰まらせて歌うことが出来なくなります。

"もう歌えない"と言ったジュディを励ますように、ゲイカップルが続きを歌い出し、他の観客も後に続き、観客の歌声が劇場いっぱいに広がり、ジュディを包み込むのでした。

観客を愛し、観客に愛されたジュディ・ガーランドの人生で最高の瞬間です。

"私を忘れないでね"と言ったジュディの姿が、劇場を出ても目に焼き付いて離れませんでした。

【レビュー】『ジュディ 虹の彼方に』(2019)の評価・評判

(C) Pathe Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019

レネー・ゼルウィガーの熱演が好評な『ジュディ 虹の彼方に』(2019)ですが、評価はどのようになものでしょうか。

各レビューサイトの評価とコメントをまとめました。

レビューサイト評価 2020年4月2日時点

・Filmarks 3.8点

・Yahoo!映画 3.86点

・映画.com 3.8点

海外の映画批評サイト"ロッテントマト"では批評家から82%、観客からは85%と高評価。

レビューサイトでの意見

"「ブリジット・ジョーンズの日記」のレネー・ゼルウィガーがジュディを演じてたとは気づかなかった"

"圧巻の歌唱力と演技力、映画館で観るべき作品"

"ジュディが降臨していた!"

"子役時代の辛さを知ってしまったので「虹の彼方に」を聴くたびに切ない気持ちになりそう"

"圧巻という言葉はレネーの為にあるような言葉"

『ジュディ 虹の彼方に』(2019)を観て、ジュディ・ガーランドの『スタア誕生』や『オズの魔法使い』を鑑賞した人も多いようです。

本作はジュディ・ガーランドには類まれな才能と、スター性があったということを知るきっかけになりました。

『ジュディ 虹の彼方に』(2019)のまとめ

(C) Pathe Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019

『ジュディ 虹の彼方に』(2019)では、公私ともに波乱万丈な生活を送り、最高峰のエンターテイナーとして生き続けたジュディ・ガーランドの、人生最高の瞬間を描くために作られた作品だと思いました。

ラストで描かれるステージは、ジュディファンでなくとも必見です。

ステージに立ち、観客を愛し、その才能で観客を魅了し続けた一人の才能ある人物をレネー・ゼルウィガーの熱演で世界中に届けることができました。

後世にもジュディ・ガーランドのレガシーは伝わり続けるでしょう。

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