
『ジャージー・ボーイズ』(2014)は、ブロードウェイミュージカルを元にクリント・イーストウッド監督が映画化した作品です。
60年代の音楽ファンを夢中にさせた「ザ・フォー・シーズンズ」結成までのいきさつ、彼らの成功や挫折を丁寧に描いています。
『許されざる者』(1992)や『グラン・トリノ』(2008)などの骨太なクリント・イーストウッド作品とは一味も二味も違った作品に仕上がっています。
往年の音楽ファンだけでなく、「ザ・フォー・シーズンズ」を知らない世代まで映画館に足を運ばせた本作の魅力とはなんでしょうか。
『ジャージー・ボーイズ』(2014)の名曲を生み出した登場人物や実話と映画との違いを解説していきます!
【『ジャージー・ボーイズ』(2014)の評価】
項目 | 評価 | 点数 |
知名度 | ★★★★☆ | 80点 |
配役/キャスト | ★★★★☆ | 75点 |
ストーリー | ★★★★☆ | 75点 |
物語の抑揚 | ★★★☆☆ | 65点 |
音楽性 | ★★★★☆ | 80点 |
キャラクターの魅力 | ★★★★☆ | 80点 |
目次
- 1 『ジャージー・ボーイズ』(2014)の作品情報
- 2 『ジャージー・ボーイズ』(2014)の概要
- 3 『ジャージー・ボーイズ』(2014)の感想と考察
- 4 『ジャージー・ボーイズ』(2014)の登場人物・キャスト、ザ・フォーシーズンズのメンバーを解説
- 5 『ジャージー・ボーイズ』(2014)のフランキー・ヴァリの娘の死因とは?
- 6 『ジャージー・ボーイズ』(2014)の舞台やロケ地・時代背景を解説
- 7 『ジャージー・ボーイズ』(2014)の原題・タイトルの意味とは?
- 8 実話?『ジャージー・ボーイズ』(2014)の舞台や元ネタとは?映画版との比較
- 9 『ジャージー・ボーイズ』(2014)の最後は?ラストシーンや結末を解説
- 10 【レビュー】『ジャージー・ボーイズ』(2014)の評価・評判
- 11 『ジャージー・ボーイズ』(2014)の総合評価:クリント・イーストウッドの視点
『ジャージー・ボーイズ』(2014)の作品情報
製作年 | 2014年 |
原題 | Jersey Boys |
製作国 | アメリカ |
上映時間 | 136分 |
ジャンル | 音楽、伝記 |
監督 | クリント・イーストウッド |
脚本 | マーシャル・ブリックマン |
主要キャスト | フランキー・ヴァリ ( ジョン・ロイド・ヤング )/日本語吹替:川島得愛
ボブ・ゴーディオ ( エリック・バーゲン)/日本語吹替:前田一世 ニック・マッシ ( マイケル・ロメンダ )/日本語吹替:松田健一郎 トミー・デヴィート ( ビンセント・ピアッツァ)/日本語吹替:高橋広樹 ジップ・デカルロ (クリストファー・ウォーケン)/日本語吹替:立川三貴 |
『ジャージー・ボーイズ』(2014)の概要

© 2013 Warner Bros. Entertainment Inc. and RatPac Entertainment.
『ジャージー・ボーイズ』(2014)は60年代を席巻したグループ「ザ・フォー・シーズンズ」結成までの道のりと、彼らの成功や挫折を丁寧に描いた作品。
1950年代、ニュージャージー州で貧しい暮らしをしていた4人の青年が、成功を夢見て音楽グループ「ザ・フォー・シーズンズ」を結成する。
天性の歌の才能を持つフランキーと、彼を見出したチンピラまがいの生活をするトミー、彼の兄で低音ボイスが魅力のニックのトリオに、作詞作曲の才能があるボブが加わった。
彼らの行く先は順風満帆かに見えたが、現実は他の人の歌にコーラスを合わせるだけの日々。
起死回生を図るため、トミーが金貸しから大金を借り、追い詰められたボブが名曲「シェリー」を完成させる。
一気にスターダムを駆け上がった「ザ・フォー・シーズンズ」だが、成功するにつれて嫉妬や価値観の違いからメンバーの軋轢が生まれる。
『ジャージー・ボーイズ』(2014)の感想と考察

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『ジャージー・ボーイズ』(2014)の感想
『ジャージー・ボーイズ』(2014)の感想を書いていきます。
初めてフランキーの歌声を聴いたときは、その独特な高音とファルセットを効かせた歌い方に衝撃を受けました。
実話を元にした作品なので、実際のフランキーに似せた歌い方なのですね。
鑑賞後「ザ・フォー・シーズンズ」のオリジナルを聴いて、フランキー役のジョン・ロイド・ヤングの役者としての凄さを思い知りました。
1960年代にヒットを飛ばしたグループだからか、筆者には劇中で流れる曲は馴染みのない曲ばかりでした。
そんな中、誰もが耳にしたことがある「君の瞳に恋してる」を歌うシーンでは、悲劇を乗り越えたフランキーの姿に胸を打たれます。
クリント・イーストウッド監督は、『グラン・トリノ』(2008)という作品では、男らしさを近所の青年に伝える姿が印象的でした。
本作では、素行の悪いトミーをジャージー流に助けるフランキーの姿はとても男らしく、このシーンを観たときに、クリント・イーストウッド監督作品なんだと実感しました。
冒頭からトミーがカメラ目線で語りかける演出は楽しく、彼らの待ち受ける未来は明るいに違いないと思わせます。
ラストの演出は見事で、紆余曲折あった人生を振り返ったとき、夢を見ていたころの4人がハーモニーを奏でる瞬間が大切なものであったことが観客にダイレクトに伝わります。
『ジャージー・ボーイズ』(2014)の考察
『ジャージー・ボーイズ』(2014)の考察をしていきます。
なぜ『ジャージー・ボーイズ』(2014)は高く評価されるのでしょうか。
それは2つの魅力があるからだと思います。
1つ目の魅力はもちろんフランキー・ヴァリの歌声と、「ザ・フォー・シーズンズ」の音楽です。
なぜなら、フランキー・ヴァリの歌声は一度聴いたら忘れられないほどのインパクトがあるからです。
そこにボブのソングライターとしての才能が融合し、数々のヒット曲を生み出しました。
特にフランキー・ヴァリのソロ曲「君の瞳に恋してる」は彼らの才能の真骨頂と言えるでしょう。
もう1つの魅力は、本作が彼らの音楽だけではなく、人間性に焦点を当てたことです。
他のミュージカルと違って、本作では音楽は"彼らの作品"としてのみ登場します。
そのため、彼らの心情がダイレクトに観客に伝わってきます。
成功した後に待ち受ける嫉妬や確執は、サクセスストーリーにはつきものです。
しかし本作が伝えたい事は、その間違いを許して再生しよう、ということだと思います。
『ジャージー・ボーイズ』(2014)の登場人物・キャスト、ザ・フォーシーズンズのメンバーを解説

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フランキー・ヴァリ(ジョン・ロイド・ヤング)

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「ザ・フォーシーズンズ」のメインボーカル。
ニュージャージー州の床屋で働いており、地元のマフィアにその歌声を認められる。
町のチンピラで音楽グループをしているトミーに見いだされ「ザ・フォーシーズンズ」を組む。
「シェリー」を皮切りにヒット曲を続々と世に出すが、妻子を顧みずツアーを続けたことで疎遠になってしまう。
ジョン・ロイド・ヤングは、ブロードウェイ版でもフランキー役を演じており、トニー賞、最優秀主演男優賞を受賞している。
ボブ・ゴーディオ(エリック・バーゲン)

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「ザ・フォーシーズンズ」に最後に加入し、作詞作曲を担当し、グループの中心人物となる。
フランキーと共に、トニーの作った借金を返済するため裏方に回り「ザ・フォー・シーズンズ」を支える。
エリック・バーゲンもブロードウェイ版でボブ役を演じている。
トミー・デヴィート(ヴィンセント・ピアッツァ)

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地元ニュージャージーで盗みをしながら音楽活動をする青年。
チンピラのような生活をしているが、地元から離れる為に歌で有名になることを夢見る。
会話がうまく、社交的で人をまとめる力をもっている。
しかし自分の力を過信して他人の意見に耳を貸すことが出来ない。
素行が悪く、お金にだらしないせいで、借金を抱えてメンバーに迷惑をかける。
ヴィンセント・ピアッツァだけはブロードウェイ版に出演していない。
魅力的なトミー役にぴったりだとクリント・イーストウッド監督に見いだされた。
ニック・マッシ(マイケル・ロメンダ)

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トミーの兄ニックもニュージャージー州の貧しい町の出身。
弟と共に窃盗を繰り返し、盗品を売る生活を送っている。
影の薄い存在で、全てにおいて無関心なように見える。
弟トミーの言動を忍耐強く我慢しており、最後には脱退する。
演じるマイケル・ロメンダもブロードウェイ版で出演している。
『ジャージー・ボーイズ』(2014)のフランキー・ヴァリの娘の死因とは?

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フランキーとフランシーンの関係
本作で登場するフランキーの娘、フランシーンとフランキーの関係について解説します。
ツアーに出てばかりのフランキーは、殆ど家で過ごすことがありません。
妻は精神的に不安定になり、娘は父親からの愛情を受けられなかったため、家出をしてわざと両親に心配をかけます。
ようやく見つけた娘に、フランキーは腹を割って話をし、家庭を顧みなかった自らの過ちを認めます。
そして彼女の話をきちんと聞くのです。
彼女の内に秘めた歌手になりたいという夢を知ったフランキーは、彼女の夢を叶えるために協力することを約束しました。
フランシーンの死因
フランシーンは、ようやくクラブで歌うことができるまでになっていました。
夢を叶えるために前進していたはずの彼女は、22歳の若さで亡くなります。
フランキーがボブに「娘はドラッグの餌食になった」という台詞があったことから、死因はドラッグであることが分かります。
『ジャージー・ボーイズ』(2014)の舞台やロケ地・時代背景を解説

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『ジャージー・ボーイズ』(2014)の舞台やロケ地
『ジャージー・ボーイズ』(2014)の舞台は、ニュージャージー州のベルヴィルです。
貧しい地区で、犯罪が起きることが日常茶飯事という治安の悪い土地と言われています。
実際のロケ地はほとんどがロサンゼルスです。
リアリティを出すため、フランキーが住んでいた通りや、暮らしていた家でも撮影されました。
『ジャージー・ボーイズ』(2014)の時代背景・年代を解説
『ジャージー・ボーイズ』(2014)の時代背景・年代を解説します。
1960年代のアメリカは、ベトナム戦争がおきたり、ケネディ大統領や、マルコムXの暗殺などが起きた激動の時代です。
アメリカではヒッピー文化が流行となり、アフリカ系アメリカ人の公民権運動、女性の解放運動が活発になり、平和や平等に対して声を上げる人が出てきました。
また、「ボブ・ディラン」の社会的メッセージが溢れる曲が世にでるようになり、ウッドストック・フェスティバルが行われたのは1969年です。
「ビートルズ」がヒットチャートを独占する中、「ザ・フォー・シーズンズ」はヒットチャート1位を奪うことが出来る唯一のグループであったそうです。
『ジャージー・ボーイズ』(2014)の原題・タイトルの意味とは?

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『ジャージー・ボーイズ』(2014)は、ニュージャージー州出身の4人が、貧しい地区から抜け出すため、音楽で成功するというサクセスストーリーです。
あれだけ嫌いで抜け出したかったニュージャージーなのに、彼らは事あるごとに「ジャージー流だ」といって契約書を交わさずに握手で終わらせたり、グループに迷惑をかけて脱退したトミーとの再会の時にも握手をします。
ニュージャージーから出たくて必死だったフランキーが最も大切にしていたのは、地元ニュージャージーと、仲間でした。
本作のタイトルの意味は、ここからきているのだと思います。
実話?『ジャージー・ボーイズ』(2014)の舞台や元ネタとは?映画版との比較

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『ジャージー・ボーイズ』(2014)の舞台版
『ジャージー・ボーイズ』(2014)は、ブロードウェイミュージカルを元に作られた作品です。
舞台版では、彼らのグループ名「ザ・フォー・シーズンズ」という名にちなんで、春・夏・秋・冬の4部構成となっており、それぞれの人物がナレーションを担当しています。
春はトミー、夏はボブ、秋はニック、冬はフランキーが担当し、観客に語りかけていくという演出。
本作で出演者がカメラに語りかけるという演出はここから来たのですね!
ブロードウェイ版では、彼らの楽曲33曲が歌い上げられ、フランキーの歌唱力と、ボブとトミーとニッキーのハーモニー、そして彼らの音楽に合わせた振り付けを楽しむことができるようです。
【比較】『ジャージー・ボーイズ』(2014)の現実と映画版の違いは?
『ジャージー・ボーイズ』(2014)の現実と映画版の違いを考察していきます。
結論から言うと、映画と現実は違いはほとんどないようです。
しかし時系列が違っているシーンが2つあります。
1つ目は、フランシーンが亡くなって、「君の瞳に恋してる」が生まれたという点です。
現実では「君の瞳に恋してる」が発表されたのは1967年で、フランシーンが亡くなったのは1980年ということです。
この時系列の違いは衝撃を受けました。
何といっても本作の一番の見せ場ですから。
しかし、飽きることなく観客を舞台にくぎ付けにする演出は見事だと思います。
2つ目は、劇中でトミーとニックは同時に脱退していたのに対し、現実では兄ニックが先に脱退していました。
『ジャージー・ボーイズ』(2014)の最後は?ラストシーンや結末を解説

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『ジャージー・ボーイズ』(2014)の結末・ラストシーン
『ジャージー・ボーイズ』(2014)の結末・ラストシーンを書いていきます。
フランシーンの死後、自分を責め続けるフランキーを心配したボブは、前を向けるように新曲を渡します。
「娘の死後にラブソングを歌う気にはなれない」と言うフランキーですが、ボブの熱意に押されて譜面を見ました。
譜面を見たフランキーは、再び音楽への情熱を取り戻し、そうして生まれた曲が「君の瞳に恋してる」です。
娘を失った悲しみを乗り越えさせるために、盟友ボブが作った曲。
キャッチーなメロディーと愛にあふれる歌詞が魅力の「君の瞳に恋してる」は、今でも人々に愛される名曲となりました。
ラストでは1990年に「ロックの殿堂」でメンバーと再会します。
25年ぶりに全員が揃って歌った曲は「Rag doll」です。
あの頃の4人で、ただ純粋にハーモニーを奏でた瞬間を思い出して歌うのです。
『ジャージー・ボーイズ』(2014)のその後、現在は?
『ジャージー・ボーイズ』(2014)でメインボーカルを務めたフランキーは、現在でも活動を続けています。
ボブは表舞台には立たず、プロデューサーとしてグループを支えるようになりました。
トミーは借金を作ったために脱退し、ニックも脱退を決めてメンバーは入れ替わっています。
「ザ・フォー・シーズンズ」は、現在も世界的なツアーを行っており、2014年には日本ツアーも行われました。
【レビュー】『ジャージー・ボーイズ』(2014)の評価・評判

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【つまらない?】低評価のレビュー
低評価のレビューで多かったのは主に2つです。
1つ目はフランキーの声が苦手だったという意見。
高音のファルセットを効かせたフランキーの声は独特で、その歌い方を苦手と感じる人は多かったようです。
2つ目はストーリーが薄いという意見。
本作では「ザ・フォー・シーズンズ」が結成される前から、彼らが成功し、メンバーがバラバラになってしまうまでを描いています。
4人のメンバーそれぞれに焦点を当てており、その為内容が中途半端になってしまったことは否めません。
しかし本作の核となるフランキーとトミーの間柄は丁寧に描かれています。
【面白い?】高評価のレビュー
本作の高評価のレビューの殆どに書かれていたことが「エンディング、グランドフィナーレが素晴らしい」ということでした。
4人が再会し、「Rag doll」を歌う中、トミー、ニッキー、フランキー、ボブがそれぞれカメラに向かって、自分の人生を語り掛けるシーンがあります。
その後、彼らが体を反転させて客席を向いたとき、夢を追いかけた若いころの4人に戻るシーンは鳥肌物です。
彼らが今まで過ごした時間を観客の私たちは知っているのですから。
ラストで彼らがアカペラで歌う「シェリー」、出演者全員が歌って踊る「Oh! What a Night」で、音楽を追求したあの頃の4人に再び会えたとき、その喜びに胸に熱いものがこみ上げてきました。
『ジャージー・ボーイズ』(2014)の総合評価:クリント・イーストウッドの視点

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『ジャージー・ボーイズ』(2014)は、ブロードウェイミュージカルを元にした作品です。
『許されざる者』(1992)や『グラン・トリノ』(2008)という作品で、男の中の男を描くことで有名なクリント・イーストウッドが監督を務めました。
最初は、ミュージカルとクリント・イーストウッドがどうしても結びつきませんでした。
しかしフランキー・ヴァリの「ジャージー流」という仲間に対する誠実さ、許す心がクリント・イーストウッドを惹きつけたのかもしれません。
「貧しい地区から抜け出したい」と、もがいた彼らの行く末と、たどってきた道のりをじっくりと味わうことができる作品です。