特集一覧
グレイヴ・エンカウンターズ 感想・考察

『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)は、ホラー番組製作チームの不幸を描いた作品です。

ホラー番組の製作チームと言いましたが、実際にホラーがある必要はありません。

彼らは”演出”し、ただの映像をホラー番組らしく作り上げていきます。

そんな彼らが作る新作の舞台は、とある精神病院の跡地でした。

ホラージャンルにおける手法、”POV(Point of View Shot)”を用いた意欲作です。

本記事では、本作の評価を感想や考察などとともに解説していきます。
[toc]

『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)の作品情報とキャスト


グレイヴ・エンカウンターズ【DVD】

作品情報

原題:Grave Encounters
製作年:2011年
製作国:カナダ
上映時間:94分
ジャンル:ホラー

監督とキャスト

監督:ザ・ヴィシャス・ブラザーズ
代表作:『エクストラ テレストリアル』(2014)

出演者:ショーン・ロジャーソン/吹替:土田大(ランス)
代表作:『ベイビー・キャッチャー』(2017)『グレイブ・エンカウンターズ』(2011)

出演者:アシュリー・グリスコ/吹替:棟方真梨子(サシャ)
代表作:『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)

出演者:フアン・リーディンガー/吹替:赤城進(マット)
代表作:『サンズ・オブ・ザ・デッド』(2016)『グレイブ・エンカウンターズ』(2011)

『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)のあらすじ

ランス・プレストン:© 2011 - Tribeca Film

テレビ局に、あるビデオテープが届けられる。

中身を観ると、それは「グレイヴ・エンカウンターズ」の撮影映像だった。

「グレイヴ・エンカウンターズ」とは、怪奇現象や恐怖体験を扱う番組のこと。

この番組はこれまでエピソード5まで作られており、人気もなかなか。

今回、製作総指揮者の元に届いたのは、エピソード6のパイロット版映像。

エピソード6で検証される怪奇スポットは、コリンウッド精神科病院の跡地だった。

撮影された時間はなんと76時間。

テープの中身を観た製作総指揮者は、その内容に絶句してしまう。

そしてとりあえず、映っていた出来事を時系列順に並べることにした。

物語は、作業を終えた製作指揮者が、映像を観る者に事前に説明と注意を促すところから始まる。

いったい、どんなものが映っていたのだろうか。

【ネタバレあり】『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)の感想と考察

まだまだ調子のいいマット:© 2011 - Tribeca Film

『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)の感想

『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)は、正直に言えば賛否両論ある作品だと感じました。

本作のジャンルはホラーという位置づけです。

にもかかわらず、寒気がしたり追い詰められたりするようなシーンがいまひとつ足りません。

そのため、作品全体の緊張感が足りなかったように感じました。

一方で、コメディ要素を含んだ作品とすれば、魅力は増すものと考えています。

ランス率いる「グレイブ・エンカウンターズ」は、ホラー番組作りに真剣ではありません。

怪奇現象などなくとも、無理やりホラー番組としてでっち上げています。

そんな彼らが、本物の恐怖現象に触れてしまったというのが、本作のストーリーです。

この点からコメディ要素を押し出しても、作品自体は破たんしなかったことでしょう。

ただ、実際はそういうわけでもありません。

様々な側面があるものの、全体的に薄味、という印象でした。

『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)の考察

ここで、『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)が、ぶれてしまった原因を2つの理由から考えてみようと思います。

まず1点目はやはり、ホラー作品として弱い部分でしょう。

病院に閉じ込められ、追い詰められていく描写が足りていません。

肝心の”恐怖の対象”も思ったほど登場せずじまい。

ランスとネズミのシーンなどは、もはや恐怖の焦点がぶれています。

彼らが何に追い詰められているのかが、とにかく不鮮明。

映像の演出などは非常によく出来ていたため、内容の薄さがなおさら悔やまれます。

もう1点は、先にも述べた”ヤラセ部分”の扱いについてです。

ランスは、それっぽくなっていれば嘘番組でもよいという考えの持ち主。

であれば、彼らの汚い面をもっと描写すべきです。

怪奇現象を舐めた結果、バチが当たったとなれば、カタルシスも生まれます。

ヤラセをしている事実の垂れ流しだけでは、メリハリがつきません。

以上の2点があって、本作はどっちつかずに終わってしまったと考えられます。

『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)を製作手法面から解説

『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)は、いわゆるモキュメンタリー映画です。

モキュメンタリーとは、架空の出来事を、あたかもドキュメンタリーであるかのように作られる作品のこと。

本作は、その中でも特にファウンド・フッテージと呼ばれる作り方がされています。

撮影した人間が行方不明になるなどして、埋もれていた映像が偶然発見された、という具合です。

そのため、本編の映像はあえて見づらくなっています。

映像は暗視モニター越しのようになっており、視界は不良。

従って、見えないということに対する恐怖心がかき立てられるようになっています。

また、観る者の客観性を損なわせないための演出は秀逸です。

例えば、冒頭から「グレイブ・エンカウンターズ」の映像だということを製作総指揮に語らせている点など。

他にも、手振れの激しい映像や、設置した固定カメラのカットを入れているのもそのためでしょう。

テクニカルな面はとても優秀な作品であるといえるのです。

【ネタバレあり】『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)は実話? 原作や元ネタを解説!

コリンウッド精神科病院をバックに撮影するランス:© 2011 - Tribeca Film

『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)は嘘のドキュメンタリー!実話ではない

先の項目で少し触れましたが、『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)は実話ではありません。

「グレイヴ・エンカウンターズ」という番組も架空の番組。

コリンウッド精神科病院も、実在した病院ではありません。

フィクションをドキュメンタリー風に仕立て、作り上げられた作品なのです。

基となった話もなく、内容は完全なオリジナルのものとなっています。

ただ、とあるシーンだけは、半分事実で半分うわさのようなものと一致していました。

物語中盤、カメラマン担当のT.C.が階段で突き落とされるシーンがあります。

この現象が、後述するロケ地の廃病院であったとされる出来事と同じなのです。

超常現象の類いは、どこまでいっても立証は不可能なもの。

たまたま一致しただけと考えるべきでしょうが、なんとも不思議な巡り合わせです。

撮影で使用された病院は実在する

対して、『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)の舞台となった精神病院の建物は、実在しています。

カナダのブリティッシュコロンビア州にある、リバービュー病院の跡地です。

リバービュー病院は、ドラマや映画のロケ地として有名な場所。

本作もまた、この実際の廃病院の建物を使って撮影を行っていました。

ただ、この病院跡に関しては、少し興味深い話があります。

2012年、本作が公開された翌年に、1枚の写真が発見されました。

写真は、リバービュー病院の敷地内にある墓地で撮られたもの。

その写真は”心霊写真”で、白い影が写りこんでいるというのです。

はたして写真は本物なのかどうか、これについては確かめようがありません。

本作の監督であるザ・ヴィシャス・ブラザーズは、この話を受けて次のように語っています。

「あの病院は幽霊の目撃証言があるし体験談も聞いた」

「ある映画スタッフは何者かに階段から突き落とされて重傷を負ったらしい」

「もし幽霊が存在するなら、あそこには間違いなくいるね!」

と、怪奇現象の存在を認めるような発言。

他にも似たような証言がいくつかあるようですが、その真偽は定かではありません。

本作が公開されたことで、わいたように出てきた数々の情報。

決して信ぴょう性のあるものではありませんが、面白いエピソードとなっています。

【ネタバレあり】『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)の最後は? ラストシーンや結末を解説

病院で死んだと思われる者の幽霊らしき存在:© 2011 - Tribeca Film

『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)のラストシーン

度重なる怪現象と、音声担当のマットの失踪に、ランスたちはパニック状態でした。

とにかくここから出ようと、鍵がかけられた出入口の扉を打ち破った一行。

しかし、扉の向こうに続いていたのは、なぜか病院の廊下でした。

いよいよ危ないと感じた連中は、他の出口を探しに病院内を探索し始めます。

するとそのとき、目と口が真っ黒く塗りつぶされたような顔の女性が目の前に。

ランスたちは難を逃れましたが、霊能力者(役)のヒューストンがはぐれてしまいます。

その後、謎の爆発に吹き飛ばされ、そのまま一切出てこなくなりました。

消えてしまったヒューストンと入れ替わるように、マットを見つけたランスたち。

だが、彼は患者服を着た状態で、頭がおかしくなってしまっていたようでした。

彼を見つけたものの、次はカメラマンのT.Cがバスタブに引きずり込まれ、消えてしまいます。

化け物たちを振り切ろうとする最中に、マットも自殺。

残ったのはランスと紅一点のサシャのみ。

吐血するほどに弱っていたサシャは、謎の霧に覆われ、いなくなってしまいました。

ネズミを生で食べながら、必死に生き延びようとするランス。

閉じ込められてからいったいどれだけの時間が経ったのか、分かりません。

手術室らしき部屋に来た彼は、かつて病院で行われていたロボトミー手術の形跡を目撃します。

そして、手術を行う医師らしき者たちに襲われました。

ややあって、カメラの前に出てきたのは、うつろな目をしたランス。

マットと同じ言葉をつぶやく姿とともに、本編は終わります。

「よくなったらおうちに帰れるんだよ」

『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)の結末を解説

この作品は、ニセホラー番組を撮っていた連中が怖い目に遭うというもの。

信じてもいないものが現実で起こり、撮影チームは混乱してしまいます。

そして、仲間たちが次々と消え去り、最終的に残ったランスも自我を崩壊させてしまいました。

このように、かなり絶望的な結末を迎えています。

全滅エンドは、作品の意図としてあったのでしょう。

ただ、序盤の撮影チームの悪ノリと比べると、やりすぎな感じが否めません。

そこまでするかと言いたくなるほどの、理不尽な仕打ちにも見えます。

ですが、ホラー作品というものは、得てして理不尽なもの。

彼らが撮った映像が明るみに出てこられただけでも、救いなのかもしれません。

【ネタバレレビュー】『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)の評価・評判

雑魚寝する撮影チーム一同:© 2011 - Tribeca Film

『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)の評価を、私見を交えて述べていきます。

本作は「怖すぎる予告編」として、前もって注目された作品でした。

予告映像の評価は高く、予告を観て本作を観た人も多いことでしょう。

こうして本作の本編を観た人の感想の多くは、”期待ほどではなかった”というものでした。

ふたを開けてみたら、思った以上にB級ホラー映画だったのです。

むしろ、予告編の方が怖かったという意見もあるほど。

また、恐怖シーンが少ないことや、前半から中盤にかけてが冗長という指摘も散見されます。

ホラー作品において、恐怖シーンが少ないというのは致命的。

かつ、それにもましてだらだらとニセ番組作りと悪ノリ、仲違いを見せられるわけです。

多くのレビューサイトでの評価は、星5つのうち、星2つ以上3つ未満。

一方、好意的な意見ももちろんあります。

うがった見方ですが、B級作品と考えれば十分に楽しめるというものがありました。

番組撮影チームを主人公として、カメラマン視点を入れているカットも評価されています。

これまでのモキュメンタリー作品は、第三者視点から眺めるという視点が主流。

『パラノーマル・アクティビティ』(2007)などが最たる例です。

本作は、新しい手法に挑戦している意欲作、とも評価されています。

と、多くの人の評価・評判をみていきました。

さて、私見としては、狙いのいまいちよく分からない作品だったという評価です。

冗長な序盤のように、ストーリーにあまり起伏がないため、早々に飽きる人もいるでしょう。

何より、ランスたちと”恐怖”の接点が見えません。

ゆえに、出てくる”恐怖”も取って付けた感がすごいです。

散々申し上げてきましたが、もしかしたら、本作に多くを求めすぎているのかもしれません。

従って、私見の部分に関しては、あくまで参考程度に留めていただければと思います。

『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)のまとめ

コリンウッド精神科病院:© 2011 - Tribeca Film

『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011)には、新しい何かを期待していたのでしょう。

結果としては、期待通りに新しいホラー映画の形を観た気がします。

実際、実験的な演出手法については、目を見張るものがありました。

そこにストーリーの良さが乗れば、良作以上の作品となっていたと思います。

ホラー映画は、演出メソッドの固定化から、ハードルが上がりつつあるジャンルです。

この点にチャレンジを仕掛けたことは、本作において何よりも評価すべき点でしょう。

今後続いていく作品が、フォロワーとして本作を頼りに作られていくことを、期待しています。

おすすめの記事