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『アメリカン・アニマルズ』(2018)のラストシーンと元ネタの解説、作品の考察【あらすじ、感想、ネタバレあり】
タイトル© American Animals

『アメリカン・アニマルズ』(2018)は、大学生が起こした実際の強盗事件を取り扱ったドキュメンタリー映画です。

監督は『ペテン師』(2012)を手掛けドキュメンタリーのドラマなどを得意とするバート・レイトン監督。

予告からかなりの期待度が高かった本作品ですが、実際にRotten Tomatoesでは満足率98%を叩き出していました。

大学生が強盗をしてみるという一見ありそうなタイトルですが、どうしてこれほどまでに絶賛されているのでしょうか。

本記事では、『アメリカン・アニマルズ』(2018)の考察や、あらすじ、結末、モデルとなった人物や元ネタなどネタバレを交えながら解説していきます。

『アメリカン・アニマルズ』(2018)の作品情報とキャスト


アメリカン・アニマルズ(吹替版)

作品情報

原題:American Animals
製作年:2018年
製作国:アメリカ
上映時間:116分
ジャンル:ドラマ、ドキュメンタリー

監督とキャスト

監督:バート・レイトン
代表作:『アメリカン・アニマルズ』(2018)『ペテン師』(2012)

出演者:バリー・コーガン/吹替:白石兼斗(スペンサー・ラインハード)
代表作:『ダンケルク』(2017)『アウトサイダーズ』(2016)

出演者:エヴァン・ピーターズ/吹替:水中雅章(ウォーレン・リプカ)
代表作:『キック・アス』(2010)『ダーク・フェニックス』(2019)

出演者:ジャレッド・アブラハムソン/吹替:左座翔丸(エリック・ボーサク)
代表作:『スウィート・ヘル』(2017)『アメリカン・アニマルズ』(2018)

『アメリカン・アニマルズ』(2018)のあらすじ

タイトル2© American Animals

ケンタッキー州の大学に入学するスペンサーという青年がいた。

スペンサーの人生は絵の才能もあり、家庭も円満ではあるもののスペンサーが思い描くような理想のものではない。

モネ、ゴッホなど有名な画家は悲劇的な経験をしている。

スペンサーも自分を変えてくれる刺激的な経験をする日を待っていた。

スペンサーの友人ウォーレンは自分の周りの全てに嫌になっていて、盗みを働き刺激を求める日々を過ごしていた。

そんなとき二人は大学の図書館に1200万ドルする本「アメリカの鳥類」が置いてあることを知る。

彼らは刺激を求めその本を盗む計画を立てるのであった。

この映画は実際の犯行を行った本人が登場し、当時の様子を語りながらストーリーが進んでいくドキュメンタリーである。

【ネタバレあり】『アメリカン・アニマルズ』(2018)の感想と考察

変装し強盗する© American Animals

『アメリカン・アニマルズ』(2018)の感想

本作のおもしろいところはドキュメンタリーの要素が強いにも関わらず、映画としての抑揚がありそのバランスが絶妙な点。

通常ドキュメンタリーの要素つまり現実にあった出来事のみを描いてしまうと、物語が単調になってしまい映画としておもしろみがなくなってしまいます。

しかし本作品は映画の本編のストーリーの途中に本人のインタビューや、本人達の妄想の演出を加えることによってエンターテイメント性を高めてるのです。

音楽もまたその演出の一つでしょう。

本作品が始まって前半は「I'm alive」「A Little Less Conversation」といった明るめのポップ音楽が流れます。

しかし、映画後半実際に犯行を行ってからは、ほぼ無音で物音のみもしくは音楽があってもドンドンという単調なリズムを刻むのみです。

この表現のおかげで、やってはいけない一線を越えてしまった現実という生々しさはよりリアルに際立ってきます。

このような抑揚のおかげで本作品はグッと鑑賞者を飲み込み、自分も一緒に犯罪に加担しているかのような感覚に陥るのです。

本作品を初めて見たときにノンフィクションだと思わなかったという人は多いでしょう。

『アメリカン・アニマルズ』(2018)の考察

今回の事件の動機はなんだったのでしょうか

まずスペンサーです。

スペンサーは成長するにつれて人生を変えるような経験をしたいと思っていました。

芸術家についての本を読んだスペンサーはゴッホ自殺、モネは失明と彼らは悲劇的な影響を受けて苦しんでいることに気づきます。

スペンサーは絵がうまいですがゴッホ達の経験を見ると、人生が最高で絵も上手いがそれだけではダメなのだと感じるのです。

スペンサーはこのように自分の人生を変えるきっかけが欲しいと考え犯行を行いました。

ウォーレンに関しては家庭が離婚をしているなど荒れていたことが原因と考えられるでしょう。

スポーツ推薦で大学に入ったウォーレンでいたが、大学や街の人々全てに失望します

また犯行に及ぶ前から盗みを行ったり悪さを行っていました。

スペンサーから1200万ドルの本の話をされたことによって、興味が湧きなんとなく犯行する流れになったのです。

頭脳派であるエリックに関してはウォーレンに誘われた当時ウォーレンと喧嘩していて、校内では一匹狼だと語られています。

犯行の動機はウォーレンと仲直りをしたいという気持ちからでした。

彼の驚くべき点はFBIを目指していた点です。

最後にチャズですが彼の動機は少しあやふやです。

父親は起業家でチャズ自身も起業をしていたりお金に不自由はないようでした。

計画も話を持ちかけられたときは馬鹿にしていましたが、1200万ドルの美術品だと言われたことによって揺れ動いていたようにも思います。

本作品の犯行で一番興味深い点は、チャズはともかくお金を稼ぎたいという犯行ではなく、なにかを達成したいもしくは刺激が欲しい、友達と仲直りしたいというような軽い気持ちがきっかけだということです。

これが本作品を我々鑑賞者にとって身近に感じさせる要因でもあったのではないでしょうか。

【ネタバレあり】『アメリカン・アニマルズ』(2018)は実話? 元ネタやモデルとなった人物を解説

スペンサーと監督© American Animals

本作品は実際の犯罪を取り上げいて、その犯人から話を聞いた実話です。

そしてこの映画の驚く点は、犯行の様子を振り返るインタビューでそのモデルとなった本人が写されている点でしょう。

なので実際に犯行を行った犯罪者が映画の一部としてインタビューで話をしながら映画が進んでいきます。

また、その被害者や犯人の親や学校の先生までもその対象です。

この映画は監督が事件に興味を持ち、刑務所の中にいた犯人に手紙を送るなどして実現たした作品で、この登場人物の多さから監督の熱意が伝わります。

【ネタバレあり】『アメリカン・アニマルズ』(2018)のラストシーンと結末を解説

ウォーレン© American Animals

スペンサー達は大学の図書館で犯行後、盗んだ本の証書が手に入らずそれぞれが後悔と逮捕されないかと怯える日々が続きます。

ウォーレンは万引きを、スペンサー運転中に目をつぶって車の事故、エリックは酒屋で喧嘩とそれぞれが自暴自棄になってしまいました。

そうしてついに4人は捕まり実刑7が告げられます。

インタビューの映像でスペンサーが

誰の視点から思い出すのかがともに経験したことは片方の視点から思い返すのが簡単だ

と言いました。

セントラルパークで本当に故買屋の男を見たのか覚えてないし、ウォーレンを空港に送ったがウォーレンがアムステルダムに行った証拠はないのです。

しまいにチャズも今全て思い返すと故買屋もウォーレンの作り話だと思うとも言ってました。

スペンサーは信じたいと思って信じると決めたバージョンの物語は、ほとんどウォーレンが話した物語だよと行って物語は終わります。

出所後エリックは何度か引っ越して物書きを、チャズはインストラクター運動管理の本を執筆、ウォーレンは大学で映画製作を学び、スペンサーは芸術家で鳥の絵を専門に描いています。

そもそも、誰もがやるべきではないと失敗するし実際に起きる前に誰かが止めると思っていました。

しかしその誰かを待っていたせいで一線を超えてしまい後悔が爆発するのです。

今まで理想ばかり追いかけていたが気づいたときには現実は散々な状態になっていた。

その彼らが起こしていた行動として罪に逃れるようにあえて万引きをしたり、捕まるように目立つような行動をしていたのも印象的でした。

なぜ理想と現実を交互に映し出すのか、事件の計画性、理想と現実を解説

ウォーレンと会うバイヤー© American Animals

本作品では犯行の理想の姿と実際に起こった現実の生々しいシーンと二つが描かれます。

これは犯罪というそのものをかっこよく表現しないための配慮でしょう。

スペンサー達はモネ、ゴッホのように悲劇的な経験をしたい、特別な経験をしたいと考えていました。

またそのためには一線を越えなければいけないと考えます。

その理想の姿として、犯行におよぶために映画の『オーシャンズ11』(2001)『レザボア・ドッグス』(1992)などをイメージしていました。

彼らは一線を超えるために犯罪を手段として選んでしまったのです。

本作品はそういった誰しもが落ちいる可能性がある危うさを演出として際立たせています。

よく親は子供に対して、現実との区別がつかなくなるから暴力的なゲームをさせないという話をきたことがあります。

また、映画などで暴力シーンがある映画を観られないのはそういった配慮もあるのです。

やってはいけないこと、理想と現実がありそれを区別しなくてはいけない、彼らは至って夢を見続ける普通の人と同じでしょう。

しかし、今回たまたま誰も止める役目がいなかったがためにその一線を越えてしまった。

実際スペンサー達は、あの事件は計画の時点で成功はしないと思っていたそうです。

失敗するに決まっていると思っていたからこそ、その歯止めが効かなくなって事件になってしまったのでしょう。

『アメリカン・アニマルズ』(2018)の評価

キャストと監督 © 2018 Michael Kovac - Image courtesy gettyimages.com

『アメリカン・アニマルズ』(2018)の興行収入は約350万ドルです。

本作品は二つの視点をもとに評価されています。

一つは映画の内容自体に対する評価です。

本作品のそのリアルさ、また危うさ、自分もそこにいるかのような体験にドキッとした方は多かったでしょう。

スペンサーは何不自由していない、家族にも恵まれ絵が少しうまいだけのごく普通の一般人です。

しかし普通であるがために刺激を求めて、自分を変えてくれる特別ななにかが起こるはずだとずっと考えていました。

これは誰もが抱く感情ではないでしょうか。

自分が自分以外の目線を持たない限り、人生を自分中心に考えてしまうことは普通のことです。

そしてはそのような感情は自分が特別な存在だと感じさせます。

最近ではSNSでなどの普及があり特別な存在というのはより身近なものに、誰もが特別じゃない存在になれると考えるときはあるでしょう。

しかしこの物語でスペンサーは最後に

みんな誰もが特別な存在だと言われる。現実はそうじゃない

と言うのです。

そうした誰もが起こりうる感情だったからこそ本作品は人を魅了するのでしょう。

ドキュメンタリーなので誰視点でこの映画を作っても良いでしょうが、スペンサー目線中心で物語を描いたのはスペンサーの感情が一番一般に近しかっただと思います。

もう一つは監督の演出に対してです。

監督は本作品を通じ世の中にあるドキュメンタリーは本当にノンフィクションなのかと訴えています。

通常ドキュメンタリーは当事者から聞いた話を一つの内容にまとめ上げて作品が作られます。

そうした作品はもちろんノンフィクションとなるでしょう。

THIS IS NOT BASED ON A TRUE STORY

真実に基づく物語ではない

THIS IS A TRUE STORY

真実の物語である

本作品は最初でこのようなテーマが出てくるように真実の物語として作られてます。

演出としてスペンサーとウォーレンの2人の言っていることが違うといったシーンが描かれますが、本作品では2人の言っているその違う内容も丸ごと描かれているのです。

真実を描いているノンフィクションの話ですが、その真実はあくまで当事者が真実を言っている前提で作られます。

本作品はその話は本当に真実なのかという危うさまでも描いているのがおもしろいところです。

まさに真実の物語として作り上げています。

またこの演出を高く評価している人が多くいました。

批判的な意見としては、予告が非常にアーティスティックに描かれているので、それに期待したら生々しい映画でキツかったという人は評価が低くなっている印象です。

『アメリカン・アニマルズ』(2018)のまとめ

ウォーレンとスペンサー© American Animals

実際にあった犯罪が、本人のインタビューを再現しながら映像化された『アメリカン・アニマルズ』(2018)。

本作品は初見の人にとってはインタビュー、過去シーン、妄想シーンとシーンの移り変わりが激しく、演出の仕方を理解するのに時間がかかるため非常に視聴に苦労するでしょう。

私としては2回視聴する、もしくは事前情報をいれた上で見ることをおすすめします。

作品自体はハッピーエンドで爽やかな終わり方というわけではありません。

なにかを始めたい人や自分の価値を見出したいと考えている人が見ると、登場人物と感情が重なっておもしろく観られるでしょう。

気になった方は是非ご覧になってみてください。

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